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tenth  作者: 大友 鎬
第9章(後) 渇き餓える世界
462/874

整理

63


『敵はランク7地獄師。地獄賛歌は周囲を地獄に変え、変えた地獄によって様々な状態異常をもたらすんだよなあ』

『本来、悪魔も召喚されるはずであるが、周囲にその姿はなしである。透明化できる悪魔の可能性もあるではあるが』

『もしかしたら改造によって状態異常の確率をほぼ100%にした結果、悪魔の逆鱗に触れたかなんかで召喚できない可能性もあるっぺ』

『それとヴォンさんは隙を見て逃げる。もしくは逃がすんですねえ。レシュリーさんに伝えないといけないことがありますので』

『レシュリーに、じゃん?』

『そこ反応しない』

『とりあえず暗殺士と地獄師の相性は良くはないんだよなあ』

 コーエンハイムが懸念を話す。

 天魔士に逆転士、そして暗殺士が三人だった編成に双魔士リーネに暗殺士のジネーゼが加わっている。

 暗殺士は潜むことが全複合職のなかで最も得意ではあるが、

 周囲を地獄に変える地獄師はその潜める場所すら地獄に変える。

 潜んでいるうちに状態異常にかかり、そのまま倒されてしまう可能性だってあった。

『そして天使たちの歌声も通用しないんですよねえ』

 アギレラも先ほどの無力化された件をリーネとジネーゼに伝える。

『もしかして打つ手ないじゃん?』

『いやリーネどのがいればできなかったこともできるである』

『めんど』

 言われてリーネは一言。言葉が悪いが拒絶はしてないのが雰囲気で見てとれた。そもそも人助けが面倒なら、ジネーゼと一緒に来てはいない。

 口でなんと言おうがここにいることが証明だった。

『具体的にはどうするじゃんよ』

『と一旦、そこまでなんだよなあ』

『あなた方はイロスエーサから話を聞くんですねえ』

『ここはわいらで一旦、足止めるっぺ』

 身を隠していたコーエンハイムとアギレラ、ウイエアが一斉に飛び出す。

「やっぱりウマいこと姿を隠していただけでしたヒン」

 自分の見立てが当たっていたことを喜ぶようにトンショウは三人を見つける。ブヒヒンと鼻息を荒くして近づいていく。

 コーエンハイムとウイエアが先鋒。目に見えぬ速さでトンショウに近づくが、地獄の影響を受けるため、近づくには限界がある。

 地獄の中に入らないように位置取りながらトンショウの注意を引いて、ジネーゼたちと距離を広げる。

 その間にもイロスエーサによる作戦が説明されていた。

『そんなことが?』

 全容を聞いてリーネが不審がる。

『耐性が改造されてないという前提ではあるである』

『耐性なかったとしても通用するか分からないじゃん』

『改造されていればアウト。通用しなかったらアウト。通用してももたついて耐性を持ってしまったらアウトである』

『バカなの? 賭けすぎるんだけど』

『某は逆転士である』

『どういうことじゃん?』

『無類の賭け好き。ただのバカってこと』

 イロスエーサの提案に呆れリーネの悪口が輝きを放つ。

『けど、現状それしか策はないじゃん?』

『一番危ないのわかってる?』

『リーネの心配もわかるじゃん』

『いやしてないし』

 リーネの反論に、まるで仕返しのようににやついたジネーゼは

『けど、ジブンが近づくにはそれしかないじゃん。それにリーネもジブンの毒がどんなものか知っているじゃん』

『そりゃまあ』

『だとしたら、もうやるしかないじゃん』

 説明になっていないのにも関わらず、無理矢理そんなことを告げたジネーゼにリーネはため息。

 けれどもう反対はしない。いやそもそも反対ではなく、心配をしていただけだ。

『ジネーゼがいいなら、それでいい』

『ありがとじゃん』

 リーネの同意を得てジネーゼが喜ぶ。その姿がたまらなく好きでリーネは視線をそらした。リーネはもしかしたらジネーゼのことが好きかもしれなかった。

『よーし、なら行くじゃんよ』

『リーネどのは準備を頼むである』

『わかってる』

 イロスエーサの言葉に強く答えると、イロスエーサとジネーゼがコーエンハイムたちのもとへと向かう。

 ヴォンはリーネの傍に待機。イロスエーサの作戦でジネーゼがトンショウに近づいたら逃げる算段だった。

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