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tenth  作者: 大友 鎬
第9章(後) 渇き餓える世界
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照明


46


「来るっ!」

 ダイエタリーが鏡盾〔反射世界のディグリズニ〕を構えてダンデライオンと対峙。

 ダンデライオンは走りながらその顔を光らせ、放つ。それは【太陽光線】にも似た光線。

 【太陽光線・(ミニ)】。

 ググルマワリの【太陽光線】が巨大な光線を撃ち下ろすだけだとしたらダンデライオンの【太陽光線・小】は自身が自在に動き回ることから撃ち下ろし、撃ち上げ、真横など自由に撃ち方を選択できた。

 鏡盾にぶつけてダイエタリーはその小さな光線の方向をずらす。

 足を怪我して移動できにくくなっても、狩士のダイエタリーには対応できる万能さがあった。

 鏡盾で無事弾き飛ばしたダイエタリーは短銃弓〔幽閉のユルラリア〕と一緒に鏡盾を【収納】。そもそもアリーのように両利きを練習したわけでも僕のように〈双腕〉というわけでもない。左手で鏡盾を持っていたというよりは右手に短銃弓を持ったまま両手で鏡盾を前に構え、懸命に弾いたという感じだ。

 その辺の盾使いはアロンドさんが巧かったのだと痛感させられる。

 盾と弓機銃を【収納】したダイエタリーが取り出したのは機関短銃〔十六連射のメージン〕。機関短銃(サブマシンガン)は近接戦闘用の速射に優れた銃だ。砲術技能の【機関銃】や【速射銃】と違い、精神摩耗による【弾丸装填】ができないのがデメリットではあるけれど、その威力はすさまじかった。

 一度引き金を引くと十六発を一気に連射するのではなく、一度引き金を引くと十六発連射を十六連射するという性能をダイエタリーの機関短銃は持っていた。

 もちろん一気に二百五十六発もの弾丸を失うけれど、一度引き金を引けばあとは標準を合わせることに集中すればいい。

 ダイエタリーは足をひきずりながらも自分に襲い掛かってくる第一次生長ナッツマンを確実に倒していく。

 その間にコジロウが駆け回り、遠距離から攻撃する第二次ナッツマンを、アリーがダンデライオンを着実に減らしていく。

 対して僕は迷っていた。ダイエタリーがさっきよりも早いと言ったのは僕が原因だ。

 水晶の光、そしてインスタフライの光。それ以外に僕が第三の光を作り出していた。【火炎球】の炎によって発生した光だ。

 効率良く倒すために僕は【火炎球】を使っていたけれど、それが【太陽光線】の充填時間を早めていた。

 ググルマワリ自身へに燃え広がった炎は充填時間に影響しないから大丈夫だと思っていたけれどどうやら違うらしい。

 自身を対象としない光は充填時間の短縮に繋がるのかもしれなかった。

 インスタフライといううざったい蠅の影響で【太陽光線】の充填時間が早まっているっていうのにこれ以上時間を早めても対処しきれない。

 どうインスタフライを倒すべきか、とりあえず【火炎球】の使用をやめ、【速球】を繰り出してインスタフライを叩き潰しながら考える。

 魔物ごとの特徴として昆虫に似た魔物はその構造も酷似している。もっとも大型の昆虫系魔物だと巨体を支えるために一部構造が違うところもあるらしいけれど、インスタフライは魔物ではなく虫としての蠅と大きさも同じなので構造はきっと変わらないだろう。

 それを踏まえたうえでさらに熟考。ぐずぐずしている暇はないから、頭を高速回転させて結論を出す。

 確証はないけれどやってみようと体が動く。

【合成】。窮地にはいつもこの技能が助けてくれる。

 右手には何かの役に立つかもと購入していた青発色剤(ブルーライトパウダー)、左手には【火炎球】。

 両手を合わせるようにこのふたつを【合成】。

 そうして出来上がる。名付けるなら【照明球(ケミカルライター)(タイプ:ブルー)】。

 青く光を放つ球で、ぶつけると付着し、そこでしばらくの間、光を発する。

 攻撃性はあるのかといえば正直無い。面白球と言ってしまえばそれまで。

 だけど、蠅のある特性からこれは効果が抜群になるはずだった。

 僕はインフタフライのいるあたりに向けて【照明球・青】を投げつける。

 水晶のひとつに貼りついた【照明球・青】は青く光を放つ。

 すると、その光に充てられてインフタフライたちが大量に落下していく。

 狙い通りだ。数万といたインフタフライが一瞬にして全滅した。

 まるで雨のようにボトボトと地面へと落下し、死んでいた。

「アリー。インフタフライが落ちてくるから気を付けて」

 落下地点付近にいるアリーに伝えるとドサッと落ちてくる黒い塊に気づいてアリーが回避。

「何をしたんだよ」

 見上げるダイエタリーが青く光る球を見たけれど何が起こったのか分からないようだった。

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