種々
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僕が【転移球】でコジロウが回転鋸のように迫っていた葉を土台にして頭花を目指していく。
ググルマワリの顔はライオンの鬣のような舌状花と種が詰まった管状花で構成されている。
動き出した今、管状花、閉じていた目と口が現れていた。
にんまりと開いた口の中にはギザギザと表現すべき歯が見え、まるで僕たちが来たことを喜ぶように目を歪ませて笑みを作っていた。
ググルマワリの笑みと僕の視線が交差。すぐにググルマワリは回転して後ろを向く。この魔物は中央から動くことはないが常に回っていた。
茎の刺に着地するとコジロウも到着。
「どうでござるか?」
「どうもこうも本当にあの数を倒すんだとしたら、一苦労どころじゃないよ」
攻略法を知っている僕は苦笑。それに合わせて同じく攻略法を知っているコジロウも苦笑する。
「それでもやるでござるよ」
「じゃあ行こうか」
「回転が止まったら要注意でござる」
「分かってる。それだけは気をつけるよ」
それが一番厄介だぽんとレジーグも言っていた。
茎が止まっていないか注意しながらググルマワリの顔めがけて【剛速球】をぶつける。
「やばっ!」
ぶつかった管状花の種は潰れるがその周囲にあった種が地面に落ちていく。
「加減が難しい……ごめん、アリー! そっちに行ったよ」
僕は下にいるアリー、とついでにダイエタリーに告げる。
レジーグたち曰く、ググルマワリは管状花にある種を全て破壊することで倒せるらしい。
ただ叩き潰すだけなら楽だけれど、地面に種を落としてはいけない。
なぜなら――
僕が地面に落としてしまったググルマワリの種が土の養分を吸って肥大化。一葉を生やした種がピョンピョンと動き出す。
ナッツマンだ。
動き出したナッツマンはダイエタリーが曰く最初は無害。
確かに観察している今も縦横無尽に跳ね回ってはいるが、アリーやダイエタリーを狙っている様子はない。
この隙にダイエタリーもアリーも動き出していた。
が、
「茎の回転が止まったでござるよ」
コジロウの忠告でそれどころではなくなる。
天井の水晶から放たれる光を吸収してググルマワリの顔が光り輝いていた。
ググルマワリの回転は天井中の水晶から光を集めるためだった。
徐々に光を溜めたググルマワリは狙いを定め、
「ダイエタリー!」
「ええい、ちくしょう」
ナッツマンの処理を中断し、ダイエタリーはその場から跳ね飛んだ。
処理に固執しなかったダイエタリーの英断だ。
瞬く間にググルマワリから放たれた【太陽光線】がダイエタリーが元いた場所を焼き焦がしていた。
がその高威力の光線を回避しても終わりではなかった。
光線の反動で落ちてきたググルマワリの種がナッツマンヘと生長する。
最初に落ちたナッツマンの姿が変わる。双葉の両手が生え、地上にいるアリーやダイエタリーを襲っている。
「ぐずぐずするとやばい」
「分かってるわよ」
ダイエタリーの焦りはアリーにも伝わっていた。
ナッツマンは【太陽光線】によって光合成し生長していた。
ダイエタリーが逃げ回りながら短銃弓〔幽閉のユルラリア〕を連射。武器に扱いに長ける狩士ならではの精度でナッツマンを射抜いていく。ナッツマンは種そのものが弱点なので狙いはつけやすいが圧倒的な数と跳躍力でダイエタリーを振り回していた。
アリーはレヴェンティに【光線】を宿して刀身を伸ばし、襲いかかるナッツマンを切断していく。
地上でアリーとダイエタリーが戦っているなか、再び回り出すググルマワリ。
僕はこっちに集中せねば。




