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tenth  作者: 大友 鎬
第9章(後) 渇き餓える世界
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勢揃

8


「どぅーやら、ショウジョが死んだよーうですねえー」

 悪の秘密組織ジョーカー、その本拠地でドゥドドゥは笑った。

 彼の目の前には十一人の改造者がいる。姿をじらすように全員がフード付きローブで姿を隠していた。

「うちらのなかでショウジュは最弱。でもでも倒したやつは要チュー意でチュね」

「きさんは何を言ってやガル。最弱を倒したところで粋がるのなら、わいが倒せばいいガル」

「あたしもそう思うな。ね、モーいい加減、倒しに出ようよ。なんでショウジュだけ先に出れたの? モーわけ分かんない」

「おメェーには主の崇高なごメェ令が分かるわけあるメェ。オレたちは主のごメェ令があるまで待っていればいい。駄メェなやつメ」

「あだしはだったらこんのまま待機がええピョン。ショウジュのように死んだら意味ないピョン」

「ニョロロロロ、それはヘビーにネガティブ~。ミ~的にはユーは腰抜けだ~」

「オイラ的にはそんなこと言ってるチミが一番最初に去ると思ってるウッキー」

「おっと喧嘩はよくないワン。ぼくたちは仲間、そうしてナンバーワンを目指すワン」

「おでにはどうでもいいブヒ。早く戦わせろブヒ」

「猪突猛進もいいですケンど、ワタクシ思うにそなたはもうちょっと考えたほうがいい気がするケン」

「ソレらはまとまりがないれヒン。よし決めた、自分がウマい具合に取りまとめてやるれヒン」

 口々に発言する彼らは全員が十二支悪星であった。

「でも良いんでチュか? 全員が揃う前に一人かけてしまったでチュよ」

「おメェーは主がそこらへんを考えていないとでも思ってんのか、たわけメ。そうでしょう、主?」

「そーの通りでーす!」

 ごまかすようにドゥドドゥは言った。ドゥドドゥにとってこんなに早く欠けてしまうのは誤算だった。

 けれど誤算はつきもの。改造は失敗を繰り返して極めていくものだから用意も周到だった。

「そーれについては問題あーりません。来なさい。ウルウ」

 ドゥドドゥがそう呼ぶと、暗闇のなかで瞳が光る。猫目だった。

「ニャーんですかニャ? もうミャーの出番ですかニャ?」

 てくてくてくと猫耳に三本の猫髭をはやした少女が歩いていくる。

 ウルウと呼ばれたその少女は、少しばかり猫背で十一人の十二支悪星とドゥドドゥの前へと姿を現した。

「ええ、あなたが十二支悪星の新しいひとりでーす!」

 ドゥドドゥは告げる。とはいえウルウという少女もすでにそうなるという説明を聞かされていた。

「分かってるニャー」

 当然のようにウルウは答えた。

 十一人の十二支悪星は知らないことだが、ウルウの元となった素材はディエンナだった。

 頭から生える猫耳と頬に生える猫髭のせいで、面影は少ないが、それこそがドゥドドゥの改造した結果だった。

 ディエンナだった頃の記憶はもはやない。ディエンナという人格はウルウという人格の誕生に基づいて、消失してしまった。

 それは十一人の十二支悪星にも当てはまる。

 十二支悪星になった瞬間、改造されていた冒険者は元の人格を失っていた。そうなるように改造されていた。

「そーれでは、みーなさん。軽くお披露目と行きましょうかぁ!」

 ドゥドドゥの言葉にウルウを加えた新生十二支星が世界各地へと散らばっていく。

 レシュリー・ライヴに対する悪意をばらまくために。

「さーてさて、シュウジョが襲った村にいーるらしーい〈上限突破〉のしょーねんが復讐のたーめに、我が組織に来ーてくれるといーいのですが」

 十二支悪星が去った部屋でドゥドドゥはひとりごちた。

 それこそがシュウジュがディレイソルの住む村を襲った目的だった。


***


「そういうことかよォ!」

 エンドコンテンツに潜ったディエゴもまた、情報を手に入れ、推測でありながらそのジョーカーの目論見に気づく。

 トワイライトが傍にいればそういう組織に向かうこともないだろうが、面倒臭ぇ事態には代わりなくディエゴは舌を打った。

 とはいえ自分にできることは今は少ない。

 いまだエンドコンテンツでノアの羽根を手に入れてないのだ。

「どこにありやがる?」

 超速で階層を降っていく。魔物の殲滅が下降条件になっている階層は数分も経たずに突破するためその勢いはすさまじい。

 現在は階層99999階。入ってから半日も経たずにディエゴはそこにいた。

 目の前には100000階に続く階段がある。

 今まで走り続けていた体を休ませるように、ディエゴは一息をつく。

 エンドコンテンツでは階層100000ごとにPCとの戦いが始まる。

 見下すように下り階段を見据えて、一歩、一歩ゆっくりと階段を下りていく。

 すると見えてきた。馴染みの、ここで幾回繰り返された戦いの舞台が。

 ディエゴにとっては少しだけ懐かしかった。

 ふっ、と思わず笑う。

「とっとと来いよ、PCどもぉ! まとめてぶっ潰してやンぞ!」

 100000階に到達した頃にはリハビリももう終わっている。

 万全の状態のディエゴはちょうどいい腕試しのようにPCを待ち構える。

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