表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
tenth  作者: 大友 鎬
第8章 やがて伝説へ
294/874

思惑

72


「どういうことやし!」

 ステゴはブラギオを問い詰める。不和になったわけではなかった。

「ですから、ネイレス・ルクドーは死んでませんよ。彼女は永遠の新人時代からずっと【死振】を使い続けてますから」

「はあ? 【死振】も疑って、死体に追撃もしたやし」

「ですから、そんな万が一の追撃さえも交わし、本当に死んだと思わせたのでしょう。熟練度を積んだ技というのはこれだから恐ろしい。ですが、だからこそ計画に取り入れやすいのですよ」

「どういうことやし」

「彼女が【死振】して、ステゴが仕留め損ねれば、あなたの情報はレシュリー・ライヴに伝わります」

「それはまずいんじゃないやし?」

「むしろ逆ですよ。情報を与えて、レシュリー・ライヴをここに誘き寄せる。これはエサなのですよ」

「何のためにそんなことをするやし」

「排除のためですよ。そろそろ目障りになってきました。彼は私の計画を気に食わないでしょうしね」

「理解不能やし。すぐに強くなれて便利やし」

「だからこそでしょう。彼は落第者と呼ばれても挫折することなく、努力でここまで上り詰めてきました。しかも大陸に出てからは最速でランク5に到達しています」

「けど、あいつ才覚持ちやし」

「それも気に食わない。なんだかんだ言いながら、レシュリー・ライヴは才覚が、才能がある側の人間だ。才覚を持たない私たちの苦労を知らない。成長率も技の熟練度も違う才覚持ちが活躍するのは当たり前だ。それを持ち上げるのは甚だ遺憾です」

「でも、お前もそのレシュリーを記事にしたり、十本指に任命したりしたやし」

「ええ、全てはこのときのためです。レシュリー・ライヴを無様に殺し、DLCを使えば彼すらも殺せるということを示すのです」

「そうしてDLCが流行すれば、才覚持ちとの差も埋まるって寸法やし」

 ステゴが感心したように言う。

「ええ、その通りです」

 もっとも、と言いかけてブラギオは言葉を止める。ステゴにこれ以上話すつもりはなかった。

「そういや、全員が適合したってノードン先生が言ってたやし」

「そうですか。アリサージュはどうしてますか?」

「おとなしくしてるやし」

「そうですか。それよりもステゴ、あなたも配置に。私の予測が当たっていれば、ここに侵入したほかの集配社の連中とともにそろそろやってくるはずですよ」

 ブラギオの言うとおりレシュリーはウイエアたちと合流して、“ウィッカ”の本社を目指していた。ブラギオが掲げる平等な世界の阻止とエリマ、ミンシアの救出を目指して。

 ちなみに合流~激突、撃破するまでに弟子たちは試練を終わるため、終了後の弟子たちはミキヨシが引き受けることにしている。

 アエイウたち一派の弟子は先の出来事で戦意を失っており今は療養もかねてミキヨシの酒場を手伝っている。ゆえにミキヨシも戦闘の技場のときのように店を閉める必要はなかった。

「それじゃあ手筈通りに、よろしくである」

 作戦の立案はイロスエーサ。とはいえ、本社ビルの前から正面突破、本社の裏側から侵入という簡単なものだ。正面突破は容易ではないため陽動も兼ねている。裏側からの侵入は不意打ちも兼ねているが、おそらく予測されているので不意は打てない。

 正面突破はレシュリー、アエイウ、アリー、アル、エミリー、リアン、ムジカ、メレイナ、セリージュが担当。

 侵入はイロスエーサ、ウイエア、シッタ、フィスレ、ネイレス、コジロウが担当することになった。

 侵入側のほうがいち早く上の階に到達するため、アエイウは正面突破側であることを渋ったが、それはそれ、案の定、エミリー以外の女性に言われると素直に言うことを聞くのがアエイウだった。

 それにアエイウは侍らす女性の数でレシュリーを勝手にライバル視しているおり、いい所を見せようと画策しているようでもあった。

 アエイウの思惑は当然無駄に終わるにせよ、かくして“ウィッカ”攻略作戦は始まりを告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ