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tenth  作者: 大友 鎬
第8章 やがて伝説へ
278/874

後方

 

 56


「KSK」

 まるでプロポーズのように、アテシアは言う。

「よくそんなことが言えるね」

「アテシアはなんて言ってんです?」

この()()加勢したい()って」

「美しくない……」

 ジョレスの言葉にアンダーソンやインデジルも同意。マムシも無言で頷いていた。

 ミセスはアテシアに全面的に同意で、クレインとデデビビの心境は複雑だ。

 ユテロも似たような気持ちでどこか戦いたい気持ちがある反面、恐怖もある。

 ミセスやアテシアのような好奇心も持ち合わせていれば、アンダーソンたちのように恐れを持っていた。

 どう処理すればいいか決めかねて曖昧に返事をして、それでもレシュリーの言いつけどおりに、アテシアやミセスが勝手にヤマタノオロチに挑まないように注意を払っていた。

「雑魚の数が多いな……」

 そんななか、エル三兄弟の前に立ち、警戒を続けるアロンドが呟く。

 MVP48以外の闘球専士が掃討してはいるものの、ヤマタノオロチに感化されてなのか、魔物の数が通常よりも多く、湧く速度も早い。

 144人にものぼる闘球専士に加え、ガリーやルルルカがとてつもない速度で魔物を屠ってはいるがそれでも間に合っていない。

 ちなみにベベジーとクルパーは逃げ回っているため、戦力にはなっていなかった。

 アロンドの声にアテシアが食いつく。

(なら)WTD(わたくしたちの出番)ですわね」

「ひひっ、賛成……」

「ムィ!」

 逸ってアテシアとミセスが駆け出す。

「倒してくれるなら止めはしないが、団体行動だ。無理は絶対にするな。守ってやりたいが、こいつらが優先だからな」

 そう言ってエル三兄弟やレッドガンたちのほうを見やる。

 レッドガンたちはある程度動けるには動けるが、レシュリーたちが首を切断するのと同時に放たれるエル三兄弟の発動に合わせる必要があり、そちらに集中させるためには魔物たちに対応させないほうがいい。

「アロンドさん……誘導しましたね」

 デデビビが指摘すると、アロンドは苦笑。

「ヤマタノオロチに勝手に突っ込んでいくよりはいいだろう。レシュリーにも魔物退治なら参加させていいって言われてんだよ」

 そんなことをレシュリーがいつアロンドに言ったのかは分からなかった。もしかしたら言ってないかもしれない。嘘かもしれない。

 全てはアロンドの機転なのかもしれない。

 でもなんにしろ、血気盛んなふたりは魔物退治に向かい、ヤマタノオロチへの興味が薄れつつある。

「ありがとうございます」

 デデビビはお礼を言って、クレインとともにアテシアを追いかける。

 あのままアテシアがヤマタノオロチ退治に加勢に行くのを止めれたかといえば自信はなかった。

 だからお礼を言って、アテシアが退治しやすい環境を作りに行く。

 力を誇示できれば、アテシアだって満足だろう。

「行かなくていいんスか」

 行きたくない気配満々で、アンダーソンはジョレスに話しかける。

 アリーの弟子としてミセスを放っておくわけにはいかないという義務感からだった。

「美しくない、美しくないが……万が一ミセスが死んだら、それこそ美しくない」

 自分を納得してジョレスは駆け出す。

「わだしたちも援護するだ」

「やっぱり、そうなるってわけです」

「……やるしかないだろう」

 他の弟子たちが魔物退治をしているのを見学するだけというわけにはいかないだろう。

 ユテロはともかく、マムシやインデジルは諦めたように魔物退治へと向かっていく。

 アロンドはヤマタノオロチに向き直り、また見続ける。

 レシュリーたちが提示した時間は三分半。

 簡易麺が完成してから少し麺が伸びたぐらいの時間。

 そのタイミングでレシュリーたちが同時に首を切断し、後方支援組が一斉に攻撃をするという算段。

 八本の首を同時に倒すことができるのか、とアロンドは疑問に思わなかった。

 あいつらならできる。

 何度も困難を乗り越えてきたレシュリーたちに、そしてそれをともに乗り越えたアロンドは絶対の自信を持っていた。

 そうしてその三分半後がやってきた。


 セレオーナが屠龍爪鎌〔偽帝ギルガメッツ〕で闇の首を

 パレコが武器壊長剣〔返し刃のアンナロッテ〕で土の首を

 モモッカがドッカーの寄生した魔充剣ニッポンイチで雷の首を

 セリージュが【風鎌鼬】の宿った魔充剣ビフォとアフタで炎の首を

 ラインバルトとヒルデが曲剣〔赤黒い二連マッシュド〕と隠技剣〔隠された力オテルガム〕で氷の首を

 ルルルカが【病闇止】と【尖突土】を宿した魔充剣タンタタンで水の首を

 アリーが【風膨】を宿した魔充剣レヴェンティで風の首を

 アルが刀剣〔優雅なるレベリアス〕で光の首を

 同時に切断した。

「今だっ!」

 三分半に向けて詠唱を調節していたエル三兄弟が魔法を展開。

 同時にレッドガンたちが【滅我戯駕砲】を発動。アンナポッカが殲滅技能【爆の一撃(ボムレイド)】を使用。

 全てが交じり合い、ヤマタノオロチへと衝突した。

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