炬燵
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「っていう感じなんだけどどうかな?」
「考えていたっていうから、どんな突拍子もないことかと思ったら……」
「普通も普通でござるな」
「まあ、そのほうが付き合わされるあったしらにとっても楽でいい」
セレオーナがぽつりと感想を漏らす。
「でボクらのチーム分けはどうするわけ?」
シャアナが急かすように言った。
「まあ、待って。それはまだ決めてない」
「決めるも何も、オレらとヒルデ、姐さんたちは一緒だろ」
ラインバルトが突然、糾弾してきた。
「いや、それはそうでしょ」
当たり前に言葉を返す。
僕が提案したのは全員を八分割し、同時に攻撃するというものだ。
何度も再生されることを見越して、八本の首を倒したあと、一気に高火力の魔法で倒し尽くすつもりだった。
その八本の首を倒す際にはもちろん連携が重要になる。
わざわざチームを分断して今まで培ってきた連携を無駄にするつもりなんてなかった。
「……ちっ、ならいいけどよ」
ラインバルトが気に食わなさそうに答えた。
「まあまあ、ラインバルトはわざとバカになってボクのために聞いてくれたんでしょ?」
「姐さん……」
ラインバルトがシャアナの気遣いを嬉しげに見つめる。
「とはいえ、シャアナさんは……」
「シャアナでいいよ。言っとくけどボクはキミが落第者になった年に試練に受かったから同い年なんだよ」
「じゃあシャアナは」
「てめぇ、姐さんを呼び捨てるなよ」
どっちなんだよ……。
「ラインバルト、ボクがいいって言ってるからいいの」
ちっ、とあからさまに舌打ちをしてラインバルトは引き下がる。
「で話を戻すけどシャアナは〈炎質〉の持ち主だから、氷の首に対応してもらうのがいいと思う」
「なら、私は風ね」
「確かにアリーは<極風仕>仕様だけど……風なら、あいつがいる」
「あいつ?」
「ジョーだよ。ジョー」
「いないわよ。あのロック野郎は」
「……ほんとに?」
「……ほんとよ、周り見てみなさい」
「ほんとだ!」
周囲を見て大げさに驚く。まあ知っていたけれど。
修行中、あんなにもうるさかったジョーがいなければさすがに気づく。
アリーとのじゃれ合いはこの辺にしておいて、それにしてもジョーに何かあったのだろうか。
修行中、ことあるごとに「絶対行くZE、ZETTAI行くZE」と連呼していたから、何かあっても来るはずだ。
まあ何かあったとしてもジョーのことだ、すげーくだらないことのような気がしてならない。
「とりあえず来たら来たで考えればいいわ。というかあのロック野郎は雷のほうがいいんじゃないの?」
「まあそうかも。他に要望があるところはある? 得意な属性があればそこを担当してほしい」
「あの……」
「どうしたの、ムジカ」
「私は……その炎の首を担当したいです」
「いいよ。ムジカは【無炎壁】を使えるもんね」
「です!」
気合を入れて返事をする。
「じゃあそれ以外の人で担当を決めていこう」
話は続いていく。
話し合いの結果、
闇の首:セレオーナ、ダモン、ケッセル、クレイドル
土の首:パレコ、ミハエラ、キューテン、センエン
雷の首:モモッカ、バードル、ドッガー、モンキッキ
炎の首:ムジカ、メレイナ、セリージュ
氷の首:シャアナ、ヒルデ、シメウォン、ラインバルト
水の首:アルルカ、モッコス、モココル
風の首:僕、アリー、コジロウ、シュキア、フレアレディ、ジェニファー
光の首:アル、ヴィヴィ、ジネーゼ、リーネ
後方支援:ルルルカ、アロンド、リアン、ガリー、アンナポッカ、レッドガン、ブルーメン、イエロウ、グリングリン、ピンクチェリー、エル三兄弟、僕たちの弟子9人
遊撃:イチジツ、マツリ、キセル
こんな感じに決まった。レッドガンたちは5人の合体技で全体を攻撃してもらおうという考えだ。
モモッカやムジカたちのところが少し不安だけれど、そこに遊撃隊の三人がフォローに入ればなんとか大丈夫のはずだ。
これに今はいないMVP48が加わる。
シッタにフィスレさんが戻り、ジョーがやってくる可能性は高いけれど、ほかに増援は見込めるかは不明。
だけれどなんとかやれるんじゃないだろうか。
「おいおい、盛り上がってるじゃねぇーか」
遅れて登場したのはシッタでもジョーでもなかった。
「……ベベジー、また来たじゃんか」
「おうよ、ヒーローは遅れてやってくるもんだろ? 俺と子分のクルパーが存分に活躍してやる」
「親分ともどもまたマジでお世話になります」
……アクジロウ以上に役に立つ気がしない。
予期せぬ増援だけれど、嬉しくないのはなぜだろう。
***
「YABEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!」
ジョーは一度入り込んだら抜け出せないそれから飛び出て、叫ぶ。
「寝過ごしたZE!」
雅京の各家庭にある炬燵は人々を眠りにつかせる恐怖の魔物だった。
あまりにも気持ちよすぎて、心地が良すぎて、ジョーは出ることが適わずそのまま眠ってしまっていたのだ。




