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tenth  作者: 大友 鎬
第8章 やがて伝説へ
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六人

 30


 戸惑いのなか、僕が覚悟を決めるとアリーとコジロウが前に出る。

「アロンドさんはみんなを頼みます」

「あいよ」

 アロンドさんは巨大盾〔でっかいドウ〕、巨大盾〔ちいさいナア〕を構え、デビたちやエル三兄弟を含めた全員の前に出る。

「たった3人で戦うつもりじゃんか」

「それはとってもずるいの!」

「姉さん、興奮しないで」

 アロンドの盾が展開するよりも先にジネーゼにルルルカとアルルカが飛び出す。

「あの、バッカ……」

 咄嗟のことにリーネは飛び出せなかったのかパートナーの行動に呆れていた。

「6対6じゃなくてもいいわよ、どうせ、天才たる私には勝てないんだから!」

「天才たる俺もいるしな」

 ラッテとテッラが同時に駆け出し、アリーとコジロウへと向かう。

「天才、天才うっさいっての!」

「嫉妬はよくないわよ」

「轟け、レヴェンティ!」

 うっさい、と言わんばかりにアリーは宿していた【突雷】を解放。

 雷がラッテを穿たんと襲いかかる。

 僕も【速球】をラッテめがけて投げていた。

「どちらかが囮だとしたら天才たる私に当たるわけないわ!」

「どちらも囮だよ!」

 僕は叫ぶ。

 本命はコジロウだった。

【転移球】によって移動させていたコジロウが真上から強襲!

「……そう来たのね! でもこの危機すら天才たる私は避けてみせる!」

 予想外の展開になったのかラッテは焦りの顔。でもどことなく余裕がある。

「パパン、ポポン、迎撃!」

 ふたりの返事も迎撃もない。

 どちらも囮、という言葉さえも僕も誘導。

 アリーの【突雷】はラッテを通過するようにパロンを狙い、僕の【速球】はラッテを通過するようにポロンを狙い、

 そして見事に命中していたのだ。

「天才たる俺に任せろ!」

 コジロウの奇襲をジネーゼの攻撃を出し抜いたテッラが魔充剣クワトロで防ぎ、ラッテを救出。

 パロン、ポロンはルルルカとアルルカの攻撃によって魔法詠唱を防いでいるため追撃はなかった。

 ラッテには自分の予想の範囲外になったらその場でしのぐ応用力があるが、危機管理能力はないそんな印象を受ける。

 奇襲にはすごく引っかかるけど引っかかったところで対応できる、そんな感じだ。

「テッラ、レシュリーを襲うとかどういうことじゃんよ!」

 同期たるジネーゼがテッラを糾弾する。姉の暴挙を弟が止めろ、とそう言いたいみたいだ。

「悪いが天才たる俺も天才たる姉上に同意しているんだ。どうして天才たる俺が[十本指]ではなく、お前のような落第者が[十本指]なのだ!」

「バカじゃん。そんなの活躍したに決まってるからじゃん」

 テッラからの落第者という僕をかつて貶めていた言葉が放たれ、僕をかつて嫌っていたはずのジネーゼから僕を認めるような言葉が飛ぶ。

 どんな表情をしていいか分からず僕は困惑していた。

 それでも、それが目的なら戦う必要なんてないのかもしれない。

「欲しいなら[十本指]の称号なんてくれてやるよ」

「そうね」

「全面同意でござる」

 僕に[十本指]の拘りなんてない。アリーもコジロウも。

 勝手につけられた称号になんの意味なんてない。

「そうなのか。ありがとう……なんて言うと思ったか? 天才たる俺がそれじゃあわがまま言って譲ってもらったことになるだろうが!」

 テッラはそうは言うけれど、現状、襲いかかってきた理由だって、他人がつけた[十本指]の称号が欲しいという個人的なわがままだと気づいているのだろうか。

 僕はやられるつもりはないけれど、仮に僕から[十本指]の称号を奪ったら、自分が欲しいから強奪した、というレッテルがついて回るように思える。

 そんな考えに至らないぐらい、称号に盲目しているのだろうか。

 こうなった時点で、もう説得はできないのだろう。

「ジネーゼたちは下がって。三人でやる」

「出たわ、またわがままが……」

「そんなことを言う気がしていたでござるよ」

 アリーとコジロウが嘆息し、

「本当に三人でやるつもりじゃんか」

「どう見ても無理があります。相手は[十本指]が三人も揃っているんですよ?」

「こっちも一応、[十本指]が三人だ」

「おいおい、天才たる俺たちがいるんだ。それとも相手にならないとでも?」

「そこまでは言ってないよ。でもキミたちは特に僕が[十本指]なのが気に入らないんでしょ?」

 だとしたら、と言ったところでアリーが言葉を引き継いだ。

「同じ数で勝っても納得してくれないわね、こいつら。強情だもの」

「ということでこっちは三人で行かせてもらうよ。6対6じゃなくてもいいわよ、って言ったのは確かそっちだったと思うけど」

「天才たる私を舐めやがってぇ!」

 僕たちを劣っていると思っているラッテは、僕たちの挑発するようなやり方に怒りを露にして襲いかかってくる。

 僕たちに合わせて人数を減らそうとしないのは、元から6人で戦うと決めていたジレンマだろう。

 僕たちが何人がかりでもラッテたちは6人で戦う準備をしていた。

 この場合、何人がかりというのは6人以上を示す。

 ヤマタノオロチを倒すことを知っていたラッテは僕たちがここに到着した時点で、それ以上の数が集まると思っていた。

 その人数ごとラッテは6人で倒そうと思っていたのだ。

 なのに、僕が6人未満で挑むものだから、ラッテは元の計画を崩せずにいる。

 でもまあ、僕が人数を減らしたのは僕のわがままで、負けたら僕の責任だ。

 ラッテが気に病む必要なんてない。

 動揺とともに怒りを呼び込んだラッテは僕へと一瞬へと間を詰めた。

「一撃で仕留めてあげる!」

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