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tenth  作者: 大友 鎬
第8章 やがて伝説へ
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行先

26


「いきなりで悪いんだが、人探しを頼みたい」

 シッタはいきなりウイエアに切り出す。

『本当いきなりっぺ。今それどころじゃないんだけど、まあシッタはんとわいの仲っぺ。言うだけ言うっぺ。ただし、手短にだっぺ』

 ウイエアが手短に、と言うということは本当に急ぎの用があるのだとシッタは理解している。

「アエイウってやつを知ってるか、そいつがどこにいるか知りたい」

『ちょいちょい、待つっぺ』

 その言葉はシッタに対してか、それとも近くにいる相手に対してか分からなかったが、シッタは舌なめずりして待機。

『アエイウっていったっぺな。エミリーはんを知ってるっぺか?』

 次に聞こえてきた言葉にシッタは驚きを禁じえなかった。

 探し人とウイエアは何の因果か傍にいるらしい。

 アエイウと【念波】をしてはいないが、ウイエアは念じてシッタへと居場所を伝える。

 ウイエアの視覚を乗っ取るかのようにシッタの視界が変わる。

 そこはウィッカの本社の手前だった。

 そこで唐突に【念波】が途切れる。【念波】は受け取り手が拒めば強制的に遮断することもできた。

 他の人間に傍受されないようにするためのウイエアの策だろう。

 それでも場所を教えたということは、そこに来いと暗に言っているようなものでもあった。

「どうかしたのか?」

「アエイウの場所が分かった。どうやらあいつはウィッカの本社近くにいるらしい」

「ウィッカっていうとブラギオさんのとこの集配社だろう。キミが面接に落ちたっていう……」

「正確には三次面接な。諜報試験と隠密試験はクリアしたっつーの」

 舌なめずりして、シッタは指摘をするが

「それはともかく、どうしてアエイウさんがそんなところに?」

 フィスレは華麗に流して気にも留めず、問う。

「さあな。なんでかウイエアもそこにいるわけだしよ、こりゃ、きな臭ささが満点だ」

「アエイウさんのところに連れて行って終わりというわけにはいかなさそうだ」


 ***


 シッタたちがアエイウの場所を特定していたその頃、

「じゃあ、行く準備をするけど……残りたい人はいる?」

 レシュリーは全員を眺めて、問いかける。

 一番迷っていそうなクレインをさらっと視線を流したものの、それがわざとらしくてクレインは自分が一番問われているとそう感じてしまった。

 どうしよう……?

 と思ったのは一瞬だった。

IMW(行きますわ)

 とアテシアが答えるよりも早く、

「行きます」

 そう答えていた。それは反射に近い。

 残るんじゃないかと思っていたレシュリーはもちろんデデビビもその答えに驚いていた。

「だ、だ、大丈夫なの? クレイン」

 心配するデデビビを他所に「うん、もう決めたんだ」と告げたクレインはレシュリーに向き直る。

「迷惑かけて大丈夫なんですよね。ボクは弱いし、それにすごく怖いけど……それでもついていきます。何もできなくても、レシュリーさんの行動全部……見ておこうと思います」

「……美しい」

 凛とした姿はジョレスにそう言わしめた。

 それほどまでにその決意は、覚悟は、どうしようかとクレインよりも長く思考していたほかの弟子たちの気持ちを揺れ動かした。

 クレイン、それに最初から行くと決めていたアテシアとミセス、クレインの決意を尊重しようとしていたデデビビを除いたほかの5人、特にアンダーソン、インデジル、マムシの三人はお互いに顔を見合わせ、そうして決める。

 ジョレスはクレインの覚悟の美しさゆえにそれに便乗するように結論を出し、ユテロもひとり思考して決める。

「その様子じゃあ、誰も居残りはいないみたいね」

 アリーが言う。

「それならば善は急げでござる」

「じゃあ、船に乗って。ジェニファーが待ってる」

「ジェニファー? 誰ですかそれ」

「乗ってみれば分かる」

 言って弟子たちを飛行船に誘導すると

「よう。ちょっと待ってくれよ」

 アロンドが話しかけてきた。

「駄賃は払うぜ。俺たちも乗せてけ」

 飛空艇を持っていないだろう。

 レシュリーが拒む理由はなかった。

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