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tenth  作者: 大友 鎬
第7章 放浪の旅
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空中庭園編-28 膝裏


 28


「貫け、レヴェンティ!」

 【突神雷】が坂本龍馬へと襲いかかる。

 がそれを龍馬は軽々と避け、鉄錐棒〔同名のサッチョウ〕を振るうように払う。

 そのタイミングに合わせるかのように、【転移球】で合流したレシュリーの【剛速球】が飛んでくる。

 いかに投球技能を跳ね返せる打法といえど、振りかぶってしまったあとでは跳ね返せない。

 【緊急回避】で無理やりに体勢を変えた龍馬だが、その代償にアリーの接近を許していた。

 無視されたかたちの斉藤一もレシュリーに追いつき、鉄錐棒〔鬼斬りユキジ〕を振りかぶる――

 手前で急速後退。

 アリーがレシュリーの首根っこを掴み跳躍。

 その後ろから、長巨大な槍のなぎ払いが襲いかかる。

 ジェニファーが武器の大きさを活かしてかく乱していた。

 ジェニファーに限らずアエイウの武器も大きいため、振り回すためで牽制やかく乱が容易くできる。

 ジェニファーに対峙していたはずの山南敬助も困り顔。【転移球】での接近も、ジェニファーにはその対処法もインプットされているため、一度失敗していた。

 そのジェニファーの攻撃が【緊急回避】した龍馬へと直撃。

 身体をふらつかせる龍馬の目の前に

「弾き叩け、レヴェンティ」

 【弾岩(ロッシュバル)】が解放される。

 剣先から氷柱のように尖った小石が数十個発射される。

 近距離からの礫の強襲。

 さらに流水のように滑らかに魔充剣レヴェンティが右肩から左わき腹へと走りぬけ、その勢いのまま回転。

 裏拳をするがごとく、狩猟用刀剣〔自死する最強ディオレス〕が1mmのズレもなく同じ場所を追従した。

 猛撃に龍馬は成す術なく倒れる。

 その光景を見た敬助に動揺が走る。

 No.4が呆気なく打ち倒された。

 そんな敬助の胸中を知らず、ただわずかに強張った表情で機微を見抜いたジェニファーが薙ぎ払った槍を前に構える。

「エンゴヲ!」

 聞こえるか聞こえないか、そんな微弱な声で、主であるレシュリーに告げたジェニファーは突撃姿勢。

 ジェニファーの膝裏辺りがカパリと開き、台形のようなかたちをしたものが中から出現する。

 ジェニファーの声にレシュリーは応え、向かってきた斉藤一の攻撃を鷹嘴鎚〔白熱せしヴァーレンタイト〕で防ぐ。

「はああああああああ!」

 アリーがその左から強力なけさ斬り。

 斉藤一は回るようにして、右へ急速回避。

 アリーは攻撃させないように連続斬りを繰り出す。当たらなくてもよい。

 その隙にレシュリーが【回転戻球】を敬助に繰り出していた。

「ロックオン、カイシシマス! 3ビョウマエ……」

 レシュリーの援護にあわせてジェニファーがカウントダウンを開始!

 動揺が走り、わずかにたじろいだ敬助だったが、

「そんなもので私は倒せませんよ」

 奮起するかのようにレシュリーの【回転戻球】に【投手倍返弾】を発動。

 レシュリーへと倍の早さで打ち返す。

 が元より、【回転戻球】は手元に戻る球だ。

 強烈に戻ってきたレシュリーは痛いの我慢してダイレクトキャッチ。

 すぐに球を落として、痛みを緩和するように大げさに手を振る。

「2、1……」

 ジェニファーのカウントダウンのなか、敬助へと【戻自在球】が反対側からぶつかった。

 大げさな演技は敬助の視線を集めるための囮。

 そもそも【回転戻球】すら跳ね返される前提の囮。

 本命は反対の腕から放たれた【戻自在球】だ。

 それを【蜘蛛巣球】へと変換。

 敬助の動きを止める。

 この戦いの当初、数百人の投げた【蜘蛛巣球】より効果は劣るが、足止め程度なら十分。

「ロックオンカンリョウ!」

 膝裏から出現した台形の正体は加速装置(ブースター)

 そこから火が噴き、ジェニファーが加速。

 ジェニファーの足裏には同時にローラーが出現しており、平坦ならば、おそらく斉藤一の速度を超えるだろう。

 そんな速度と質量を持ったジェニファーの突撃が瞬く間に敬助を直撃。

 一瞬にして槍ごと後方の壁に激突。

 敬助を一撃で粉砕する。

「セントウハケイゾクチュウデスガ、パワーブソクニツキ、スリープモードにイコウシマス」

 ジョバンニに出力の改善を申し込もうと、そう判断してジェニファーは起動を停止する。

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