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tenth  作者: 大友 鎬
第7章 放浪の旅
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空中庭園編-27 個力

「最後は"個"ですね」

 誰だったかがそんなことを闘球後、集配員に答えたことがある。

 それを体現するかのようにMOST10は個の力が強い。

 冒険者は危機が迫れば自然と協力するが、闘球専士は危機が迫ってもその自然とがない。個がすでに強力だからだ。

 レシュリーたちの連携を肌で感じても長年、結束したようでその実、"個"の力で戦ってきた彼らはどうやってそれをすればいいのかが分からない。

 山南敬助は仲間をうまく利用することがあり、それもある意味では連携ではあった。

 けれどMVP48、そのなかのMOST10となれば、より"個"の力で戦う。

 No.1ならともかく、No.9の山南の指示を聞くとは思えない。

 だから今までのやり方を変えない、"個"の力で戦う。

 9人は自然と分散していた。

 その一方でレシュリーたちは分散させられたもののある程度は固まっている。

 もちろん、MOST10が分散する傍らで、レシュリーたちの分散を狙っていたのは言うまでもない。

 永倉新八に対するはシッタ、フィスレ、シュキア。

 山南敬助に対するはジェニファー。

 沖田総司に対するはジネーゼ、リーネにフレアレディ。

 土方歳三に対するはアエイウとエリマ。

 大石内蔵助良雄に対するはアル。

 武市半平太小楯に対するはヴィヴィにメレイナ、ムジカ、セリージュ。

 坂本龍馬に対するはアリー。

 芹沢鴨に対するはコジロウと近くいたデュセとジジビュデ。

 近藤勇に対するはルルルカ、アルルカ、モココル、モッコス。

 そしてNo.1斉藤一に対するはレシュリー・ライヴ。

 MOST10たちは各々の標的へと襲いかかった。

 MOST10に巧く誘導されて分断されたかたちとなったレシュリーはちらりとアリーを一瞥し動き出す。

 「最後は"個"」というのは空中庭園の伝統を体現した言葉だ。

 剣士のあらゆる技を生み出した空中庭園の冒険者が大陸に降り立ったとき、自分の強さを証明するために用いたのは一騎討ちだった。

 1vs.1で勝負するそのスタイルは美徳とされ、純粋な強さだけが証明されるため、強さを誇示するためには一番有効なスタイルだった。

 しかも負けた側は、負けた以上ほかに戦える人がいても退くため、その潔さも愛された。

 けれどそれが大陸で通用するはずがない。

 一騎討ちをそもそもしない大陸側の冒険者は一騎討ちを申し出るために単騎、前に出てきた空中庭園の剣士をフルボッコにしたというβ時代の記録がある。

 美徳とされた行為は所詮、空中庭園のもの。

 強いて言うならそれも悪しき伝統だ。

 それは剣士系職業が空中庭園にほとんど存在しなくなった今でもある意味で続いている。

 今でこそ一騎討ちはやらないが、それでも空中庭園の冒険者の多くはひとりで修行を行うことが多い。

 それは"個"の力を高めるため。

 団体など"個"の力が集まっただけに過ぎない。

 そんな感情がどこかにあるのかもしれない。

 1+1=3にもなる、数式としては間違いだが、大陸の冒険者のなかには連携攻撃をそう例える冒険者もいる。

 息のあった仲間同士で攻撃を絶え間なく続ければ、強者だって倒せる証明の言葉だった。

 その言葉をさらに立証するかのように分散させられることを望んでいなかったレシュリーたちはすぐに合流した。

 何かしらの理由で一対一を狙うならともかく、これだけ広いフィールド、仲間も多くいる状況で一対一など大陸の冒険者は選択しない。

 斉藤一を無視してレシュリーはアリーと合流。

 先程の一瞥によって、意思疎通を図ったアリーはレシュリーの合流をいちいち確認しない。

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