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tenth  作者: 大友 鎬
第7章 放浪の旅
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空中庭園編-22 精霊


22


「ソノテイドデスカ」

 ジェニファーは叩き潰した土佐ナイツ上田楠次元永に呟く。

 ジョバンニが想定してジェニファーに組み込んだ戦術プログラムは、ランク6相当のものだ。

 だたし、格上の相手にも対応できるようにジェニファーには学習能力が組み込んである。

 それでも初戦となるジェニファーにとって楠次元永は初めての敵であり、初めての対人でもある。

 それにしては手応えがない。

 ジェニファーにとってはその感想を素直に吐き出しただけだが、それは辛辣にも見える。

 日々研鑽を積んできた闘球専士が、プログラムを組みこまれた機人に言われたのだ。

 気絶して聞こえてなかったとしても立つ瀬がない。

 それは今翻弄されているBCT全員の感情を逆撫でしていた。

 それすらもジェニファーの戦術プログラムに組み込まれたプログラムのひとつだ。

 とはいえ、それは挑発以外の何物でもない。

 敵をひきつけ注視させ、足止めをする。

 ジェニファーは合理的にそれを判断し、実行していたのだ。

「ツギハドノカタデスカ?」

 ジェニファーが言うと我先にとBCTの面々が駆け出していく。


 ***


「精霊さん、精霊さん、私の声が聞こえますか」

 リアンの祝詞に空気が変わった、ような気がした。

 それは気のせいかもしれないし、気のせいじゃないのかもしれない。

 それでもどことなく張りつめた空気が、声に合わせて一瞬だけ柔らかくなったような気がした。

 あたかもそれはリアンの声に精霊が応えたようだった。

「西方に熱。東方に潤」

 リアンは祝詞を続ける。

 瞳を閉じて、集中して。

 こんな戦いのさなか、瞳を閉じるのは無謀そのものだろう。

 けれどリアンは信じていた。

 アルを信じていた。

 アルなら、こんな状況でも大丈夫だと。

 シャアナやエル三兄弟にはその集中力と信頼感に戸惑ってしまう。

 守ってくれた仲間への信頼の証として、もちろん魔法詠唱はしなければならない。

 だからこそ、敵の攻撃を避けるためにも足は止めない。

 現状、逃げるだけで手一杯になっているなかで、リアンだけが唯一足を止めている。

「北方に熱、南方に潤。北西方に熱、南東方に潤」

 リアンの祝詞は方角を利用して属性を決めていく。

 熱はそのまま熱、潤は湿。生まれるのは風。

 それをひとつ、ふたつ、みっつ、と重ねる。

 現状は階級3。

 けれどリアンの詠唱は続く。


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