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tenth  作者: 大友 鎬
第7章 放浪の旅
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空中庭園編-19 二組

 19


「あー、もういい加減イヤになってくるじゃん」

「それは私のセリフ。あーなんであんたについてきたんだろう」

 愚痴るジネーゼの横でうんざりするリーネ。

 双魔士であるリーネは本来なら後衛にいるはずだったが 

「前に出たいじゃん」

 と護衛になるはずだったジネーゼが駄々をこね、前線にいた。

 とはいえ、癒術士系であるリーネはヴィヴィ同様、棒術が使えるので戦えないことはない。

 それでも、大勢に囲まれ、かつてないほどに敵の攻撃を凌いでいるのは、試練よりも面倒くさくうんざりもしたくなる。

 そして駄々をこね前線に出たジネーゼも、自分で望んだこととはいえ、敵の数にイヤになったのか愚痴を零していた。

 ジネーゼはNo.9山南敬助の打撃を弾き飛ばしながら、敬助の指示で襲いかかってくるMCP48を持つ壬生ウルフズの部隊を迎撃していく。

 敬助の号令で襲いかかってきた大松系斎をジネーゼが斬りつけ、細川内匠をリーネが金剛杖〔供養するアーゲンベルド〕で叩き潰す。

 杉山腰司はジネーゼの背後から強襲するが、暗殺士たるジネーゼの暗殺技能【蔦地獄(ツタジゴク)】によってその身を蔦に拘束され、息もできぬほどに締め上げられてしまう。

 暗殺、という割には忍ぶどころか暴れているが、それは忍士も同じことなのでそれを指摘するのは今更で野暮だった。

 尾形俊太郎は【緊急回避】によって、リーネの攻撃を避けることに成功したもの、直後、耳を塞いでしまう。それは反射的なことだった。

 俊太郎を襲ったのは【蚊音(モスキートーン)】。

 本来なら、超音波のような音で敵を追い払う癒術だが、若年層もなぜか聞こえ、聞こえたものはとてつもなく不快になってしまう。

 その不快音に思わず両手で耳を塞いだ俊太郎は無防備、その隙をリーネが見逃すはずはない。

 棒術技能【蟻戯技(ギギギ)】によって倒し、続け様にわざと接近を許していた谷三十郎に【頭蛾頭餓】をぶかました。

 負けじとジネーゼが速攻の連撃でリーネへ不意の一撃を狙っていた松永主計を倒すと思わず敬助は拍手をしていた。

 敬助はあれだけの数をたったふたりで倒した手腕に素直に感心していた。

 もちろん、ジネーゼとリーネに余計な横槍が入らなかったのは周囲で戦う味方たちのお陰だ。それに途中で敬助が力を抜いたのをジネーゼたちは見抜いている。

「MCP48じゃああなたたちの相手にはならないようです。やはり、MVPの何人かをこちらに回していただかないと無理みたいですねえ」

 とはいえそのMVPはアエイウの暴走を対処していたり、瀕死ではあるが悪魔士ルクス、堕士マイカといった厄介な職種に対処していたり、とやることが多く、人数を割けないのが事実だ。

 だからこそMOST10の敬助がジネーゼたちを担当しているのだ。

 口笛で近くにいたMCP48の山崎烝を呼び寄せ、敬助はジネーゼへと向かっていく。

 さてさて、新八のほうはどうなっているんでしょうねえ。

 それでも余所見できるぐらい、敬助は余裕を見せていた。


 ***


 チラ見されているとは知らず永倉新八は豪腕を振るう。鉄錐棒も持っているが、闘球でもほとんど使わない。

 乱闘要員。

 そう呼ばれてしまうほどの暴れん坊。野次をつけた観客に平然と殴りこみ、闘球をめちゃくちゃにすることさえもある。それがいい、醍醐味、と思うファンも少なくない。

 そんな永倉新八に対するはシッタとフィスレ。

 シッタは短剣〔蠅取りショーイチ〕の刀身で受け止めて、右から左へ受け流し、得意げに舌なめずり。

 その横から、受け流しに合わせて強襲するのは吸剣士フィスレ。

 剣先から飛ぶのは黒狼の顔の形を模した衝撃波。

「ふん!」

 体勢を崩していた新八だったが、それを利用して、ぐるりと地面を前転。

 しかし、その黒狼は新八を追尾。

 背後からかみつく。

 黒狼が迫っていることを勘で悟った新八は裏拳を放ち、狼たちをかき消した……

 かに見えた。

 けれどその狼たちは新八の腕に噛みついていた。

 しばらくしてそれは黒い球となり、フィスレの刀剣〔超合金の魔人ガゼット〕へと吸い込まれていき、フィスレのかすり傷が消えていく。

「ぬぅ……こっざかしいぜ」

 言って新八は笑った。

 フィスレの使ったのは吸剣技【吸剣(カタレプシー)黒魔狼(クドラク)】という。

 対象を攻撃し、自身を回復する効果があり、剣士でも単独戦闘を可能としている。

 もちろん、チーム戦においても、その耐久力で仲間を守ることに適していた。

 新八が狙いをフィスレに変える。

 ちょこまかと動き、ときおり攻撃を受け流すシッタ程度ならどうとでもなる。新八はそう感じていた。

 それよりも、自身の体力を奪い回復するフィスレのほうが何倍も厄介だった。

 フィスレとシッタによって新八は完全に足止めされている。

 豪腕を振るい、戦場をかき乱すという新八の役割が果たせずにいるのだ。

 そのせいもあってか、周囲では闘球専士たちが続々とやられていた。


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