新世代編-12 天賦
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「こんなものですわね。MDYですけれど」
息の合った連携に、札術でフォローしていたデデビビは驚くしかない。
この連携がアテシアとムィが出会って次の日にはもうできていた、と知ったらデデビビはさらに驚くことだろう。
そのぐらいアテシアとムィの適合率は高い。
それすらもアテシアの才覚の、優秀さのお陰なのかもしれない。
〈天賦〉と呼ばれるそれは知ってしまえば嫉妬を覚えざるを得ない才覚だ。
レベルアップは〈早熟〉なみの速さ、能力値の上昇量は才覚がない冒険者の2.5倍。才覚がある冒険者と比較しても、1.5倍以上。
最初から持っている戦闘能力。動きを見切れる戦闘勘。技能の熟練度を楽々高める戦闘技術。
他を圧倒する改造よろしくの高スペック。
改造し続けてもなお、高みに達せず、極みにも至らない、そんな冒険者からしてみれば憎悪の対象。
見ただけで殺意を抱く可能性だってある。
嫉妬、憎悪、殺意、そんな負の感情を一身に浴びる、それが唯一のデメリットだろうか。
β時代にも〈天賦〉を持っていた冒険者がいたが、そんな感情を受け止めきれずに自殺したという逸話もある。
そんな才覚を持っているのがアテシアだ。
「うへぇ、あっという間だね……」
そんな才覚を知らないクレインは素直に驚く。
もうクルドゥルは全滅していた。
そのほとんどを倒したのはアテシアだ。
「DD行きますわよ」
「これはすごい子を仲間にしたね……」
「でも、張り合いがあるよ。そうでしょ、デビ?」
「そうだね。張り合えるかはどうかは微妙だけど」
デデビビは苦笑。
「何をしてますの? 敵がまた出てきますわよ」
「今行くよ」
逸り尋ねるアテシアにデデビビは答え、構える。
アテシアの言葉に遅れて、周囲にクルドゥルが出現する。
敵の出現すらも予知できたのはアテシアの才覚ゆえだろうか。
嫉妬を通り越して、その万能さに呆れ、クレインも走り出す。
その頃にはアテシアが半数ものクルドゥルを倒していた。
負けてられない、奮起してデデビビもクレインも戦い始めた。
アテシアの加入が、ふたりのやる気に火をつけていた。
その日から三人での修行の日々は続き、空中庭園でレシュリー・ライヴがしでかしたことが噂になる頃――新人の宴の前日にはランク0のレベル上限70に到達しかけていた。
ちなみに言うまでもないかもしれないが、アテシアはその数日前にレベル上限に達していた。
そうして三人は新人の宴の日を迎える。
『冒険者情報』―――――――――――――――――――――――――――
デデビビ・バウリス
LV68 札術士 〈???〉 ランク0
【取得スキル】
炎札、構築、札引、土札、光札、闇札、風札、氷札、水札
【装備】
雀の外套、雀の羽飾り、雀の防護腕具、雀の長靴
クレイン・レディ・アウス
LV64 魔法士 〈無魔〉 ランク0
【取得スキル】
収納
【装備】
玉髄の安蘭樹杖〔犬の兵隊ググワンガ〕、練習用杖、紫陽花の外衣、紫陽花の頭巾、紫陽花の手袋、紫陽花の靴
アテシア・リリュー
LV70 盗士 〈天賦〉 ランク0
【取得スキル】
収納
【装備】
鐺耳付短剣〔耳なしホゥイーチ〕、鯨の纏衣〈進〉、鯨の頂冠〈進〉、鯨の蒼手袋〈進〉、鯨の美靴〈進〉
ムィ
LV215 王蝙妖蝠 〈王蝙蝠〉
【取得スキル】
なし
【装備】
なし
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