表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
tenth  作者: 大友 鎬
第7章 放浪の旅
170/874

飛空艇編-21 呪言


21


「グジリーコさんが守ってくれたんだ」

「グジリーコが? 依頼主を裏切った、クソ冒険者が?」

「グジリーコさんはあなたを裏切ってなんていない。依頼主の名前を彼は言わなかった」

「そんなわけがないだろう。じゃあなんでお前と居たんだ? レシュリー・ライヴ? それは裏切った以外に考えられないじゃないか?」

「彼は僕が身勝手に救うと決めて、停戦したんだ。お前のことなんて知らない。お前は一体誰なんだよ?」

「俺のことを知らない、だと。お前のせいで、俺の人生は台無しになったっていうのに。レシュリー・ライヴ!」

「僕がお前の人生を台無しにした? 一発逆転の島のことを恨んでいるのか?」

「それよりも前に俺の人生は台無しにされた。この落第者め、金魚のフンめ。お前は永遠に落第し続けるべきだった。お前が新人の宴に合格しやがるから、俺は有り金を全て失った」

「お前……原点回帰の島の初心者協会の……」

「ようやく思い出したか……そうだ。その通りだ。俺はお前のせいで、妻に離婚され、借金で臓器も失った。輝かしき未来を奪われた。お前が、お前が落第しないから!」

「そんなのやつあたりだ。いつまで根に持ってるんだよ」

 そんなことでグジリーコたちが死んだなんて報われなさすぎる。

「うるさい。お前は永遠に不幸でなければならなかった。お前が幸せになってはいけなかった。お前が幸せになったせいで何人が不幸になったと思う?」

「僕は誰かを踏み台にしたつもりはない」

「だとしても結果的には不幸になった。お前が落第しなかったから、ゴジライくんは死に、トトイナくんにミッザーハくん、コレイアくんは死んだんだぞ?」

「3人を唆したのもお前なのかよ」

「その通りだ。ゴジライくんを殺したクソグジリーコは、悠々と生きてしかも幸せになろうとしている、って言ったら3人ともすっかり騙されてくれたよ」

「お前……最低だよ」

 僕のなかの怒りはとっくに臨界点を超えていた。

「最低? それはお前だよ。お前が落第しないから、俺は最低な人生を歩み、ゴジライくんたちは最低な結末を迎えた。お前が落第していたら、もっと楽しい未来があったとは思わないか?」

「思わない」

 言って僕はそいつの背後へと転移していた。

 僕がいてもいなくてもゴジライは死んでいた。そして僕がいたからこそ、3人は生き残った。おこがましいかもしれないけれどそれが事実だ。

 3人が死んだのは、目の前のお前が唆したからだ。

 お前が不幸になったのは僕の合否で賭博していたからだ。

 そもそもやらなければ、幸も不幸も関係ない。

 お前が不幸なのはお前の自業自得だ。

 グジリーコが死んだのも、コレイアが死んだのも、ミッザーハが死んだのも、トトイナが死んだのもお前が僕を勝手に恨んだせいだ。

 すべてお前のせいだ。

 僕は恨みと怒りを込めて鷹嘴鎚〔白熱せしヴァーレンタイト〕で胸を抉る。

 嘴が心臓を貫き、そいつは吐血。

「お前は死ね。恨まれて死ね。呪われて死ね。呪われろ、呪われろ、呪われろ、呪われろ、呪われろ、呪われろ、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

 恨み言を吐いて、そいつは死んだ。

 息を切らしながら、僕はヴィヴィへと近づく。

 死んでいるとは思っていない。近づくにつれ、呼吸しているのが分かって、それでようやく安堵する。

「なんだったの?」

 恐る恐るルルルカたちが爆心地へと近づいてきた。

「全部、説明するよ」

 気絶したヴィヴィを抱えながら、僕はルルルカたちに言う。

「どうして、泣いているんですか?」

 言われなくても気づいていた。

 僕は泣いていた。

「なんでだろうね」

 無性にアリーに会いたくなった。

 こういうときにアリーが言ってくれる軽口が僕の心を安らげてくれることに、いなくなって気づいた。

「涙を、拭いて頑張りましょう~」

 モココルが言う。僕が欲しい言葉じゃなかったけれど、その言葉に奮起する。そのとおりだ。

 敵はすべていなくなってしまったけれど、僕にはまだやるべきことがある。

 涙を拭いて、ヴィヴィをモココルに預けた僕は歩き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ