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tenth  作者: 大友 鎬
第7章 放浪の旅
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飛空艇編-11 大聖

 11


 なぜなら。

 誰かと誰かの抗争は大聖猿セイテンにとって好機でしかない。

 アビェジャナやガラモノを倒されたことに怒っていたセイテンは手加減などしない。

 魔物にだって仲間意識はある。それこそ群れからはぐれ、それでもなお生き抜いたセイテンを支えていたのはアビェジャナやガラモノといった自分によく似た魔物だったのだから。

 ゴジライがそれに気づいたのは一瞬だった。

 対処もなにもなかった。

 グジリーコに確かに向かっていたゴジライの胴体は横から貫かれていた。

 抵抗も何もできなかった。

 それは北から一直線に伸びてきた、先端の尖った棒のようなもの――伸縮自在の尻尾、レシュリーが求めるニョイの伸縮材だった。

 しかしその素材は、それを生やすセイテンにとっては武器なのだ。

「ウキャキキャキャキャキャ!」

 頭を締めつけられたかのようにセイテンは鳴き、喜ぶ。

 わき腹が貫通したゴジライは思わず膝をついた。


 ***


「大丈夫?」

 僕は駆け寄り、ゴジライに声をかける。

「当たり……前、だろうが!」

 ゴジライは意地を張り、痛みを堪えてそう叫ぶ。

 まるで罰が当たったかのように、北方の何者かの追撃がゴジライを貫く。

 その何者かは僕にも気づいているのに、弱っているほうを的確に狙っていた。

 矢ではないこと、殲滅技能ではないことを鑑みると、第三者と考えるべきだろう。

 ゴジライの出血は止まらない。呼吸も荒い。

 助けないと。

 けれど敵がどこにいるか分からない。

 周囲を探る。見えない。

 僕の視力では超遠方は確認できないし、物陰を探る技能もない。

 けれど、ルルルカにアルルカ、モココルが北に移動しているのがかろうじて見えた。

 モッコスはヴィヴィたちの護衛だろう。

 好判断だ。

 けれど、まだ敵はいる。

 殲滅士も弓士(?)もまだ、存在している。

 そんななかで助けれるのか。

 【回復球】も効き目が薄い。血が止まらない。新しく覚えた【止血球(ストッパー)】もほぼ効果がない。

 やがてゴジライの呼吸が止まる。

 やらなければ。

 危険は承知のうえで僕は集中する。

 今の僕ならすぐに【蘇生球】を作れるはずだ。

 わずかな時間で作ると決意して、僕は【蘇生球】を作ろうとした途端、

 風を切る音が聞こえ、集中しきっていた僕は避けることも叶わなかった。

 世界は無情だ。

 人を助ける機会すら、こうやって奪うんだから。

 同時に、アリーを助けるときじゃなくてよかった、と僕は薄情に思った。

 【蘇生球】は作れなかった。

 僕は矢の方向をギロリと睨む。

 どこにいるのか、分かったような気がした。

 無意識に鉄球を作り出す。

 そうして僕は【剛速球】を繰り出す。

 届かないなんて思いもしなかった。

 本来なら、遠距離投球は外野士の専売特許だ。

 でも、遠くへと消えていく球に、なぜか当たった感触を覚える。

 僕は【転移球】を自身へと放つ。まだ、終わってなどいない。

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