新世代編-5 展望
5
そんなとき、膝を突いたデデビビがうわ言のように、自分を奮起させるように、こうつぶやいた。
「僕はレシュリーさんのようになるんだ」
だから彼女を救わなければならない、デデビビは動かない身体にそう言い聞かせていた。
レシュリー・ライヴは今、原点回帰の島で修業する冒険者のなかでの人気は高い。
落第者になりながらも、逆境に耐え、何人もの[十本指]を倒し、一発逆転の島の風習さえも変えた冒険者。しかも短期間のうちに[十本指]にまで上り詰めている。
憧れる人は多い。
自分を落ちこぼれだと思っている人間は特に。
デデビビもそうだが、クレインも憧れを抱いていた。デデビビほどの憧憬はないにしても。
そんな人になりたい、明確な目的をデデビビは持っている。
ボクごときを助けにきた、そんな人をみすみす殺しちゃあいけない。
クレインの体が動き出す。
勇気が恐怖を上回る。
ワイヤーニードルの動きは単調だ。クレインに真っ直ぐ向かってきている。
フェイントも何もないだろう。
だからクレインはただ叩きつけた。
そうして起こる衝撃。
ワイヤーニードルが地面にたたきつけられた衝撃と、自分でも敵を倒せたという衝撃が同時に起こり、クレインは目の前の光景と自分自身の力に思わず放心する。
ワイヤーニードルを一撃で屠った女の子の姿にデデビビも驚き、声も出ない。
「……これがボクの」
可能性、だとは思えなかった。クレインはそう思えるほど楽天的ではない。それどころか少し悲観的だ、
それでもどこか戸惑っている。まだ諦めるなと励まされているようだった。
そうして我に返ったように、クレインはデデビビに近づく。
「……大丈夫?」
「ああ。キミが無事でよかったよ」
こんなときでさえボクの心配をするんだ。
クレインは呆れると同時になぜか胸が高鳴った。
倒れそうになるデデビビを支えるように肩に腕を回す。
「これじゃあ、どっちがどっちを助けたんだか分からないな」
悔しそうにデデビビはつぶやいて意識を失った。
「……ありがと」
クレインは照れくさそうにそう囁いて、帰路につく。
いつの間にかクレインにあった陰鬱な気持ちはなくなっていた。
『冒険者情報』―――――――――――――――――――――――――――
デデビビ・バウリス
LV32 札術士 〈???〉 ランク0
【取得スキル】
炎札、構築、札引、土札、光札、闇札、風札
【装備】
雀の外套、雀の羽飾り、雀の防護腕具、雀の長靴
クレイン・レディ・アウス
LV24 魔法士 〈無魔〉 ランク0
【取得スキル】
収納
【装備】
玉髄の安蘭樹杖〔犬の兵隊ググワンガ〕、紫陽花の外衣、紫陽花の頭巾、紫陽花の手袋、紫陽花の靴
―――――――――――――――――――――――――――――――――




