聖女編-3 襲撃
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僕はものすごぉおおおおく嫌だけど、アクジロウに廃墟の教会の場所を訊いた。
挙句、アクジロウは説明しおわったあと、こう言った。
「それよか、行くにしても三人じゃ無理だろ。酒場で雇うなりなんなり……」
「三人? 行くのは僕とヴィヴィのふたりだけど?」
「ってオレは含めずかよ」
「当たり前だろ」
いても、いなくても迷惑なのだ、アクジロウは。
「ってひどくね? なんとか言ってくださいよ、ヴィヴィさん」
なぜかヴィヴィのことをさん付けしたアクジロウ。初対面でなぜか萎縮していた。
「……私に言われても困るな」
「ガビーン!」
たぶん、こういうことを素で言うから、好きになれないんだろう。
「とりあえずなんとしてもオレはついていくぜ」
「やめてくれ」
正直、対処に困る。
「どうしてそこまで拒否るんだよ」
「いや、活躍してる場面が想像できない」
「嘘吐け。陰でそこそこ活躍してるっつーの!」
ああ、もう付き合いきれない。
「……勝手にしてくれ」
「おう、勝手にするぜ。勝手にするって決めたところで改めて聞くけどよ、三人じゃ無理だろ」
「いや、お前を囮にしたら可能だね」
「ひでぇ!」
「そう思うなら、ここで待機してろよ」
「だが断る!」
なんてウザさだよ。アクジロウ。
ほとほと困り果てたそんなときだ。
「バルバトスさんはおられますか?」
焦った様子で鍛冶屋の男が飛び込んでくる。
「バルバトスさんは、休養中だよ」
僕が代わりに答える。重傷ではなかったが、大事をとって休んでもらっている。
「そうなんですか……。やはり、あの教会の連中に襲われたのは、本当だったのですね。いえ、それよりも……」
「どうしたの?」
「あなたがたに話していいものかどうか。いえ、あなたは[十本指]でしたね……でしたら是非力を貸していただきたい」
「何か……あったってことだね?」
「実はゴブリンの群れがこの街に襲いかかってきているのです。毒素がいたときはイレギュラーでしたから理解ができますが、今は常時。なぜこんなことが起こっているのか……扉が破壊されれば、街へ侵入されてしまいます」
「どういうこと?」
それはありえない。街に移動するのは、毒素の事件であったときのように、人々の気配がなくなったときだ。それ以外に魔物が街へ侵入してくるというよりもエリア間移動をすることなんてありえないのだ。
同時に既視感に襲われる。バンゾーモの件に似ていた。
「行ってみよう、どこか一望できるところはある?」
「ええ、高台にあがっていただければ」
「じゃそこに案内してください。行こう、ヴィヴィ」
「おいおい、オレも行くっつの」
「別にどうでもいい、勝手にしろ」
「なら、アクジロウは爺さんのそばにいてあげるべきじゃないかな?」
そんな声が玄関口から聞こえきた。聞き覚えのない声だ。
「ジョ、ジョバンニじゃねぇかよ!」
アクジロウが驚き、近づくとジョバンニと呼ばれた男はチョップする。
「ジョバンニさん、じゃないかな? アクジロウクン?」
「ジョ、ジョバンニさん! つか、そんなことどうでもよく……ないです、ハイ」
再びチョップされそうになって、言いなおすアクジロウ。かなりジョバンニに萎縮していた。
「それよりも、今までどこにいたんですか?」
「封印の肉林だよ。呼ばれて入ったら出れなくなってね……、というかあそこ、元ランク6でも入れるみたいでね、驚きだよ。で出れなくてどうしようって思ったら最近、その開かずの場所が開いたんだ。きっと世界改変がおこったんじゃないかな」
「そうだったんすね……というか、それよりも」
「うん。事情は察してる。実はさっきから話は聞いていたんだ。だからなおのこと、アクジロウはここに残るべきなんじゃないかな?」
「ど、どうしてですか、オレだって……」
「でもキミみたいな強い男が爺さんを守ったら安心だろう?」
「俺が強い? 安心だと?」
「そうだよ。心強いんじゃないかな?」
「うおおおおおっっ! ならオレは守るぜ!」
「……慣れた手つきですね」
「彼はおだてに弱いからね。これで彼がケガをすることはなんじゃないかな? レシュリークン」
「どうして僕の名を?」
「キミは有名すぎるだろ? それにアリーから話も聞いていたし……知ってて当然じゃないかな?」
「そっか」
そういえば、アリーはこの人に武器を修復してもらったりしていたんだっけ?
「それよりもキミは防具の強化もせずによくランク5になったね?」
「それっておかしいことなんですか?」
「いや、おかしいというか、驚きだよ。フツーは徐々に強化していくものだからね。防具の強化についてご教授したいところだけど……まっ、それは追々。今はモンスターの群れを見ようじゃないか」
「あなたも行くんですか?」
「アクジロウより強いよ。元ランク6だ。今はしがない鍛冶屋だけどね」
自信ありげにジョバンニは笑う。頼もしい微笑だった。




