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tenth  作者: 大友 鎬
第7章 放浪の旅
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大草原編-9 手紙

 9


「やあああああああああっ!」

 シラスト盆地から戻る途中、僕たちはマンティコアに遭遇していた。

 【剛速球(ファストブレイカー)】で一気に屠るとそのままシラスト盆地を抜ける。遭遇したマンティコアは大草原から引き返してきたマンティコアだった。

「どうやら出現域が元に戻ったみたいだね」

「そうなのね」

 セリージュが同意する。

 しばらく走って大草原も半ばに到達するとジャイアントに遭遇する。

 初めて大草原に訪れたとき恐怖しかなかったその魔物(モンスター)も今では恐れることはない。

 つかみかかろうとしてくるジャイアントの首筋まで【転移球(テレポーター)】で移動して鷹嘴鎚(ベク・ド・ファコン)で抉る。

 体勢が崩れ、怯んだ隙にセリージュが【雷鳴(サンダー)】を宿した二つの魔充剣で一気に首を掻っ切った。

 セリージュはやはりランク4というべきか、比べるのは申し訳ないけれどメレイナやムジカよりも戦いやすい。

 安心感が違った。もっともネイレスほどでもなく、アリーとコジロウとは比べる意味すら持たないのだけど。

 倒したジャイアントが斥候だという考えもあって、周囲を警戒していたけれど、恐れおののいたのか、それともはぐれだったのか、それ以降ジャイアントに遭うことはなかった。

 そうしてようやく僕が遊牧民の村についたのは、夕暮れどきだった。

「レシュ!」

 戻ってきた僕にネイレスはせかせかと近づくと突然殴ってきた。

「ああ、メモ書いていくの忘れてたね」

 たぶん、殴られる理由はこれだろうと推測する。案の定、

「分かればいいわ。レシュがいきなりいなくなったからびっくりしたのよ」

「本当ですよ、心配したんですから!」

 後ろにいるメレイナやムジカも不安げな顔をしていた。

 心配させすぎちゃったかな。

 僕が申し訳なさそうな顔をしていると、ネイレスはため息をついて、

「でも無事に原因を突き止めたみたいね。マンティコアが一気に草原からいなくなったわ」

「うん、なんとか……」

「で、後ろの子は誰なの?」

「ああ、彼女は……」

 僕はセリージュをネイレスに紹介し、そして事件の詳細を話す。

「なるほどね。原因はバンゾーモか……。振られたから、てっきり大草原から出て行ったのだと思ったけど……そんなことになっていたなんて」

「知ってる人なの?」

「そりゃそうでしょ。遊牧民の全員と知り合いよ。それにしても、振られた腹いせに復讐か……皮肉なものね……」

 ネイレスは哀しそうにつぶやいた。

「それは、どういうことなの?」

「ランテプリゾナがバンゾーモを振った理由って自分が不癒の病で長くはないと知っていたからの」

 不癒の病というのは癒術でも治らない病気やケガのことだ。そして、その病で死んだ人は蘇生すらできない。かつてヴィヴィが癒術に不可能はないと言っていたが、そのときのヴィヴィはそこまで病気に詳しくなかったのだろう。

 なる原因も不明というのだから、対処方法もない。

「つまり他の女性と幸せになって欲しいからランテプリゾナさんはバンゾーモを振ったのか」

 結果、その意図を汲めなかったバンゾーモは復讐に走った。

「そうよ。でもバンゾーモには彼女しかいなかった、だから恨んでしまったのよ。皮肉な話ね。もっともそれに付け込んだ下衆が一番悪いんだけど」

「このこと、ランテプリゾナさんには伝えないほうがいいよね?」

 僕の問いかけにネイレスは何も言わなかった。

 何かを言いよどんでいる、そんな感じだった。

「ランテプリゾナさんは今日の朝、息を引き取りました……」

 ネイレスの代わりにメレイナが言った。

 どことなくネイレスは悲しそうな顔をしていた。ブラジルさんのことを思いだしたのかもしれない。

「もしかして落ち込んでます?」

 なんとなく尋ねてみる。

「だとしたら慰めてくれるの?」

 何言ってんの、あんたって言いたげな顔でネイレスは僕に尋ね返す。

「……手段によりますけど」

 返答に困ってそう答えてみる。

「ハハハ……レシュは面白いね」

 ネイレスに笑顔が戻る。とりあえずは大丈夫なのかな?

「あの改造屋(チーター)の目的は結局分からずじまいだったけどこれで一応は解決ってとこだね」

「そうだね。ジャイアントとかは私なら楽勝だし、ムジカたちの経験稼ぎとしては効率がいいわ」

「僕も、少しここで経験稼ぎしていこうかな?」

「確かにランク5には向いてる狩場だけど、迎えに行く人がいるでしょ?」

 そう言ってネイレスが手紙を渡す。

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