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tenth  作者: 大友 鎬
第7章 放浪の旅
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大草原編-8 火葬

 8


「まさか、お前ーはっ!?」

 今更、僕の正体に気づいたところで遅いっ!

 途端に、【闘牛士人形(マタ・ドール)】が爆発する。【闘牛士人形(マタ・ドール)】に当たる前に【戻自在球(フォーザー)】を【三秒爆球(カウントボマー)】へと変化させて付着させておいたからだ。

 爆発する【闘牛士人形(マタ・ドール)】の隙間から見えるのは戸惑う改造屋(チーター)

 その頭めがけて【戻自在球(フォーザー)】が直撃、勢いをわずかに殺して通り過ぎ、近くの木にぶつかる。

 木にぶつかったのを見計らい【戻自在球(フォーザー)】を【蜘蛛巣球(コクーナー)】に変化。

 改造屋(チーター)を捉える。

「やあああああああああああ!」

 そんな改造屋(チーター)へとセリージュのビフォとアフタが突き刺さり、そのふたつに宿る【強炎(バーン)】が改造屋(チーター)を焼き焦がしていく。

「ががああああががおこれえええあがあえで終ああわっただあああが思うごおがあおおああああよおおお」

 焼け焦げながら懸命に何かを叫ぶ。うまく聞き取れないが、おそらく負け惜しみの言葉だろう。

「やったのね」

「これで終わりじゃないけどね」

 僕はバンゾーモの異形へと目を向ける。

 彼は生きたいのだろうか。

「どうしたのね?」

 異形を見つめたままの僕へとセリージュが尋ねてくる。

「僕は昔、同じような状態の人を助けようとしたことがある」

「それで、その人は……どうなったのね?」

「ディオレスは死こそが救いだって言っていたけれど、僕はそれを押し切って助けようとした。フィオナスの助けに応じて、キミを助けたように僕は独断で身勝手に助けようとした」

 僕の告白をセリージュは黙って聞いていた。

「そして助けれなかった。その人は意識を取り戻したけれど、辛い過去を思い出してしまっていた。たぶん、絶望したんだと思う。結局、ディオレスがその人を殺して、辛い過去を全部忘れられた。結果的に救われた……んだと思う。でもどこかでそれが正しいのかも分からない」

「だからこの人を殺していいのか、迷っているのね?」

「そうだね。迷ってる。復讐に走ったとはいえ、バンゾーモが悪いやつだとは思わない」

 僕たちが殺した改造屋(チーター)に葛藤しないのは、改造屋(チーター)が悪だと僕のなかで整理できているからだ。

 バンゾーモにはそれができないでいる。

「なるほどなのね。なら、私がいてよかったのね」

 セリージュがビフォに【強炎(バーン)】を宿す。

「何を……?」

「怒るなら怒っていいのね。恨むなら恨んでいいのね」

 セリージュがバンゾーモにビフォを突き刺す。【強炎(バーン)】が燃え移り、バンゾーモを燃やしていく。

「誰も埋葬してくれないから火葬にするのね」

 大陸で火葬にする例は極々稀だった。僕はそれを黙って見つめていた。

 僕は卑怯者だった。

 セリージュが何をするか薄々気づいていたのに、判断を丸投げした。

 灰になったバンゾーモが風に乗って消えていく。

「私のこと、怒っているのね……?」

「いいや。そんなことはないよ。辛い役目を丸投げしてごめんね」

「いいのね。あなたはフィオナスの助けに応じて、私たちを助けてくれた優しい人なのね。こういうところで葛藤するのはあなたらしいのね」

「僕はたぶん、そんなにいい人じゃないよ」

「そうだとしても、私はあなたに救われたのね。だからあなたが困っていたら泥をもかぶるのね」

「そこまではしなくていいよ。でもありがとう」

 いつまでも落ち込んでられない。セリージュは僕を励ます意味でもそんなことを言ってくれているんだろう。

 僕が無理をして笑顔を見せると、セリージュはなぜか赤く染まった頬を隠すように顔を逸らした。

「帰ろうか」

 僕は言った。

「待つのね。右手にあった、装置だけ燃えてないのね……」

「本当だ。この程度の大きさなら【強炎(バーン)】で燃えるかと思っていたけど、意外と頑丈ってことなのかな?」

「どうするのね?」

「埋める……しか思いつかないよ。さすがに持って帰るのはちょっと」

「そうね。だったら埋めるのね」

 僕とセリージュは茂みになって見つかりにくい場所にその装置を埋めた。

 これでマンティコアがシラスト盆地へと戻ってくれれば、大草原も落ち着きを取り戻すだろう。

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