表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/11

第六話 それは呪い

「すまない。恥ずかしい姿を見せたな」

「気にしないで。私も同じような思いをしたから」


 どういうことだ?


「そんなことより、自己紹介がまだよね。私はセナ。救助隊の一人よ」

「同じく救助隊のキュウだ。よろしく」

「よろしく、キュウ」


 いきなり呼び捨てかよ。ちょっとこういうタイプの人苦手だな。でも、ここはゲームの世界だしそんなものなのかもしれない。


「セナさんはどうして、ここに?」

「セナでいいよ。マップでプレイヤーの反応があったから。私も始めたばかりだし、一人だと心細いの。それに、私MMORPG系のゲーム初めてで、要領がわかんないから、教えてもらおうと思って」

「そうか。じゃあ本当に人助けをしたくてLSOに来たんだな」

「うん。お兄ちゃんを助けに来たんだ。私のたった一人の肉親だから、どうしても助けたかったの」


 虚ろな表情をするセナにはまだ他の事情があるように感じられた。あくまで、カンだが。


「じゃあ、俺もあまり詳しくないけど、しばらくの間サポートしてやるよ」

「よろしくお願いします」


 律儀に頭を下げるセナ。本当はいい奴なんだろうな。

 

「ヘルプから出せる妖精のことは、知っているか?」

「うん。ムオンっていう少年の妖精さんよね。ここに来るまでに、戦闘方法や職業、スキルやメニューのことを色々と優しく教えてくれたの。出てきてムオン」

「ぼくの名前はムオン。妖精ヘルパーだよ」


 プレイヤーの性別、もしくは各プレイヤーごとにヘルパーは違うのかもしれない。

 俺の妖精のことも説明し、お互いに挨拶をする。

 ヘルパーは、他の個体のことを直接知らないらしい。

 そこで、俺はさっきから気になることを訊ねる。


「失礼かもしれないが、その赤い眼は生まれつきか? それとも、ユニークスキルなどの影響か?」

「キュウだから教えるけど、他の人には言わないでね。この眼はパッシブユニークスキル《パンドラ》の影響なの」

「じ、じゃあ報酬はすべてキャンセルしたのか!?」

「うん。私には必要ないから。はやくお兄ちゃんを助けられたらそれでいいの」


 それほどにまで兄のことを救いたいのか。これは下手な指導はできないな。


「その《パンドラ》って最後に希望が残るパンドラだよね。どんな効果があるんだ?」

「統率力と支持力が-20。アイテムドロップ率20%ダウン。あと、不幸が起こりやすくなるの」


 ゴミユニークスキル。脳内にその言葉が過る。

 俺はパッシブスキルじゃなくて良かったと安心しつつも、セナの第一印象が悪かったことを思い出す。

 支持力の効果が本当だとこれで確認できたのだ。

 それにしても、《パンドラ》はどうにかならないものなのか。


「このパッシブスキルを変更することはできないのか?」

 

 俺の質問に答えたのムオンだった。


「変更できないんだ。パッシブスキルはプレイヤーの意思に関係なく発動される。でも、この《パンドラ》は特別クエスト《外に飛び出した者たち》をクリアすることで、上位スキル《パンドラ・希望》になれる。《パンドラ・希望》はとてつもなく凄いスニークスキルだけど、《外に飛び出した者たち》のクリア適正レベルは70。現在のプレイヤーの最高レベルでも60代だから、長い間は、この不幸なスキルと付き合わないといけない」


 もしかしたら、レベル70までに死んでしまうかもしれないし、ずっと一緒にプレイできる保証なんてない。

 たとえ、俺が一緒にいたとしても、二人だけでは効率が悪い。

 LSOにもギルドがあればな……ギルド?


「おい、ギルドってこの世界にあるのか?」

「あるに決まっているじゃない。このゲームはVRMMOよ。MMO系のゲームでギルドがないとかMMOですらないわ」


 よし。俺は心の中でガッツポーズをする。

 ギルドがあるなら、わざわざ俺が手伝う必要がないし、安全にレベル上げができるだろう。セナを受け入れるギルドがあればだが。


「ギルド作成条件はあるか?」

「適正レベル10のギルド作成クエストを達成すれば、町の役場で誰でも作れるわよ」

「わかった。セナ、取り敢えず近くのシュタルという町に行く。そこで職業に就き、セナの気に入るギルドに入団するところまでは手伝ってやる」

「ありがとう。なんとお礼を言っていいのか」

「気にするな。困ったときはお互い様だ」

「はい!」


 その後、俺はセナの知っているマップの見方を教えてもらい、フレンド登録とパーティー登録をした。

 

 フレンドを登録すると、フレンドの現在いるエリアとレベルと職業がわかるようになる。まだ、お互いに無職のままだが。

 登録人数に限界はない。

 

 パーティー登録をすると、自分のHPとMPのバーの下にパーティーメンバーのバーが表示され、レベルの差が15以上離れていなかったら、経験値が自動で均等割りになる。だが、アイテムはドロップさせた人の物。この時の経験値は敵にダメージを多く与えたプレイヤーの方で計算される。

 たとえば、レベル1のオークをレベル1のセナだけで倒すとしよう。その時の経験値はモンスター自体の経験値をパーティーメンバーの人数分で割った分が配布される。それが通常ではレベル6で経験値にマイナス補正のかかる俺だとしても。

 つまり、LSOでは高レベル者はサポート。低レベル者は攻撃。と上手くできればレベルアップも速くなるのだ。

 パーティーメンバーは最大で七人と少し変則である。

 

 俺たちはその方法を利用してレベルアップしつつ、シュタルに向かう。


 ーーー


 シュタルまでの道のりは、日本で見られる雑木林のように感じる。

 そこで戦うレベル1のセナとレベル6の俺のレベルは鰻上りに上がっていった。

 初めての戦闘にガタガタと震えるセナだが、10レベルを超えた辺りから、積極的に攻撃をするようになった。

 しかし、順調だったのは、シュタルからおよそ1㎞の辺りまで。

 どういうわけか、高レベルのモンスターが集まるのだ。

 ここら一帯はオークしかおらず、オークはどの群れも三体で行動していた。

 俺のレベルは15。

 セナのレベルは13。

 シオン曰く、このフィールドの平均レベルは5。だが、俺たちに集まるのは平均レベル13。

 これも《パンドラ》の効果なのか。

 

 一気に狩ることもできないので、少しづつ数を減らすが、最終的にオークに囲まれてしまった。

 数は十二体。一気にボコられたら、HPバーはあっという間にダメージを示す黒色に染まってしまい、ゲームオーバーになってしまうだろう。

 セナも涙目で、俺の服の端を力強く握る。

 くそ。使うしかないのか? この場面で使っても大丈夫なのか?


「「「グフォー!」」」


 オークたちは統率がとれているかのように、一斉に襲いかかる。


「っち、迷う暇を与えないってか! いいぜ、望み通り使ってやる! 《女体化:紅蓮の魔法使い》!」


 そして、火柱が二人を包み込んだんだ。

 

 ユニークスキルを使うキュウ。だが、それは男性が女性になる悪魔の秘術。

 キュウの体は《女体化》に耐えられることができるのか?

 次回 第七話 シュタルの町

 お楽しみに

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ