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第四話 キュウは理を知る

――ドスッ

 

 始めは何の音かはわからなかった。自分が殴られたのかもしれない。だが、痛くない。では、幻聴か?

 

 恐る恐る俺は目を開けると、良い意味で期待を裏切られた。その音は、俺を囲んでいたリーダー格のオークが怒って、仲間に攻撃をした音だったのだ。

 最初は目を点にして驚いていた。そりゃそうだろ。

 だって、今までのゲームでザコモンスターの仲間同士が喧嘩を始めて、しかもダメージを与え合うなんて聞いたことも見たこともなかった。

 

 リーダー格のオークは同じレベルにしては、他のオークよりも強かった。希少種なのかもしれない。または、オークは基本三組で行動してその中の一匹が、知能が少し高くて強いのかもしれない。

 リーダー格のオークはHPが残り一割ほどで赤色をしているにもかかわらず、取り巻きオーク相手に無双し、あっという間に倒してしまった。

 

 俺には最初のダメージを与えた分、といってもゼロなのだが、それでも戦闘参加ボーナスで経験値を貰い、勝手にレベルが上がっていった。気づけば、レベル4。十分にオークにダメージを与えられることができる。

 おそらくステータスを上げることができるのだろうが、今はそんな余裕などない。


「悪いな。俺の為に死んでくれ」


 オークに人格などないし、生きてすらいない。だが、俺は今までのゲームでは思ったことのない感謝を込めて、ボロボロのオークの体に赤い粒子を漏らす傷を与えた。

 その一撃で粒子をまき散らしたオークは、俺に襲いかかることなく静かに消えた。


『特別クエスト《ユニークスキル習得》の完了を確認しました。ユニークスキルはプレゼントボックスから受け取ってください』

「お疲れ様。本当に勝つとわね」


 先ほどまでどこかに避難していたシオンが俺の肩に舞い降りる。


「ああ」

「あれ? 元気ないね。嬉しくないの? 念願のユニークスキルだよ」

「嬉しいんだが、なんかモヤモヤするんだよ」

「ふ~ん。ちょっとは成長したっていうことなのかな」

「ほっとけ。そういえば、どうやってメニューとか開くんだ?」

「そんなことも知らないのに、よく戦ったわね」

「勝てたからいいんだよ」

「まぐれでも?」


 ニヤニヤするシオンにイラつく俺は、シオンを肩から追い払う。


「いちいちうるさいんだよ! さっさと教えやがれ!」

「そう怒るなって。まず、武器を腰にしまう。次に、右手もしくは左手で上から縦にスライドしてみて」

「こうか?」


 シオンの説明の元、ぎこちなく何もない場所をスライドする。

 するとどうだろう。半透明のメニューが手元に表示されたのだ。


「おお! すごいなこれ」

「でしょ? どういう技術を使っているのかしらね」

「知らないのかよ」

「だって私たちヘルプは、救助隊が結成されるのと同時に作られたからね。最初の頃のLSOの運営情報はほとんど知らないの」


 じゃあ序盤しかつかわれないんじゃ……


「つまり、役立たずだな」

「あんたに言われたくないわよ! オークに仲間殺しをさせておいて、よくそんなことが言えたわね!」

「仕方ねえだろ! 俺だって知らなかったんだから」

「まあお子ちゃまと喧嘩するほど私の器は小さくないからこれで許してあげるわ」

「お前、本当は人間が操作しているだろ」

「純血の人口AIよ」

「AIに血があるとか世も末だな」

 

 この後、俺とシオンは十分以上口喧嘩をし、話が進まないとクリアもできないとのことで、停戦を結んだ。シオンの案内で小さな洞窟のセーフティーエリアに移動し、俺はそこで休憩も兼ねた質問会を始める。


「でだ、いくつか質問するが、プレイヤー全員の容姿は現実と同じなのか?」

「ええそうよ。あなたたちのログイン方法は生命維持装置からスキャンしてから、初期プレイヤーたちは空調システム搭載の全身スーツがゲーム開始時に全身をスキャンできて、この世界でより違和感のないようにプレイさせているはずだわ」

「そうか。次に俺がログインした時に死んだプレイヤーだが、あいつは救助隊ではないのか?」

「違うわ。何度も死んでしまってやり直しているプレイヤーの一人よ。ちなみにあのプレイヤーのレベルはあなたと同じ6だったわ」


 俺のHPの横にはレベルが6と書かれていた。先ほどのオーク一体で一気に2もレベルが上がるとは。案外レベル上げは楽なのかもしれない。


「あなた今レベル上げは意外と簡単だと思ったでしょ」

「な、なんでわかった!」

「その顔を見れば誰でもわかるわよ。レベルアップに対て説明するけど、経験値が必要な分だけ溜まればレベルアップ。これは大体のゲームが同じだと思うけど、LSOの経験値ゲット方法はシビアよ。そもそもモンスター自体の経験値は高いわ。でも、そのモンスターよりレベルが1、プレイヤーのレベルが高いたびにモンスターの経験値が半分になっていくの」


 はあ!? 何そのクソゲー。

 クリアさせる気ないだろ。


「逆にレベルが1、低いたびに経験値は1.2倍ずつ増加する。そのため、無茶なレベル上げのせいで迷宮は四つしかできていないのよ」

「そういうわけか。納得した。次はステータスに対て教えてくれ」

「このゲームでは、レベルを上げると全体的にステータスが成長して強くなるけど、プラスαで、レベルアップ時に貰えるステータスポイントを振ることができる。でも、攻撃力、防御力、移動力、統率力、支持力の自分にしかわからない隠しステータスにしか振れない」


 初めて聞くステータスがあり、少し引っかかる。


「統率力と支持率以外は何となくわかるが、その二つはよくわからない。教えてくれ」

「統率力は、NPCやプレイヤーを率いる条件に補正があったり、どちらかというと屈服させて人を従わせる暴君のイメージを持ってくれたらいい。支持力は逆、補正は同じだが人々から愛されて、支えられるっていう感じかな。この二つは、日常生活にも影響するからこれに振っても損はないかも」


 NPCならまだしも、プレイヤーの心まで従わせるとか恐ろしすぎだろ、LSO。


「じゃあ、今回はこれぐらいにして、ユニークスキルを見てみない? 私もそれの内容を知らなくて、楽しみなんだ」

 

 すっかり忘れていた。


「じゃあ開けるか、《プレゼント・オープン》」


 メニューは簡単な命令なら、声に出すことで使うこともできる。

 プレゼントボックスには、ユニークスキルの入った箱しか入っていないのを確認してから命令しているので、プレゼントで溢れることはない。

 目的の箱はピンクの箱でかわいい赤いリボンでくくられており、俺はそれを緊張しながら紐をほどく。

 中にはユニークスキルと書かれたバッジが入っていた。

 幸運にもユニークスキルを手に入れるチャンスを得たキュウ。

 だが、ユニークスキル入手方法は甘くはなかった。

 次回 第五話 ユニークスキル

 お楽しみに

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