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第一話 始まり

拙作を読んでくださり、ありがとうございます。

 高城たかじょう久志ひさしは天才だ。勿論、頭脳面だが。

 幼少の頃に親に勧められたIQテストを受けると、IQ150という常人よりすごい知能指数を示した。

 当時の俺は何が何だかわからなかったが、両親に褒められるのが嬉しくて何でも言われるがままににがんばった。

 小学受験は都内でも有名な小学校。簡単に合格した俺はエスカレーター式で輝かしい未来が待っていたはずだった。

 

 だが、学校で友達ができなかった。

 俺より賢い奴はほとんどおらず、俺の物言いが小学生ながら嫌味に聞こえたらしい。

 どのグループにも属さない俺は教室で喋るのは必要最低限になってしまった。

 もう一つ、不幸なことがあった。俺には二つ年下の妹がいるのだが、そいつのIQが170だと判明したのだ。

 いくら、女子とはいえ、優秀な奴をかわいがるのは当たり前。家ではまるで俺がいないかのように家族は振る舞っていた。

 


 こうして、学校でも家でも俺の居場所はなくなり、明るい未来など跡形もなく消えてしまった。

 しかし、この漆黒の闇に一筋の光明が差し込んだ。

 

 ネットだ。

 

 親から受験合格にパソコンを与えられていたのだ。最初は使い方がよく分からなかったが、慣れるとネットは最高だった。

 知らない情報はすべてそこにあったし、何より自分の存在価値がそこにあった。

 勉強なんかやめて、ネットにのめり込んだ。

 

 そして、オンラインゲームを知り、みんなで協力して何かを成し遂げる楽しみを知った。

 だが、本当に楽しかったのは、オンラインゲームをやり始めた頃だけだった。自分のキャラを最強クラスに成長させると、周囲からの嫉妬に苦しんだ。ネット住民の嫉妬は醜く、気づかない内に俺を狂わせていた。

 結果、信頼していた仲間たちの裏切りにあい、俺の最強キャラは見る影もなくなった。

 それからは、ソロプレイを決め込み、現実でもゲームでも一人になった。

 

 高校生になった俺は公立の高校に通いながら、ゲームにネットと明け暮れていた。

 そんな時、あるニュースが飛び込んできた。


「レジェンド・ソウル・オンライン。略してLSO。世界初のフルダイブシステムを使ったVRMMOゲーム。お値段たったの十万円か。高すぎだし、俺には関係ないな。」

 

 あらゆるゲームをやってきた俺にとって、VRMMOは一度は体験したいゲームだが、何せ金額が高すぎる。安くなるのを待つという選択肢を内心不本意だが、選択するしかない。

 この時俺は予想だにしなかった。LSOが世界を震撼させる事件を起こすとは。

 

 それは、サービス開始三日目のことだった。LSOにログインした二万人がいつになっても、現実にログアウトしないというのだ。プレイヤーの中には脳死になっている者もいて、プレイヤー全員が指定の病院に入院した。

 

 警察はLSO運営会社を取り押さえようとしたが、会社は幹部から上の重役は雲隠れをしてしまい、責任の追及が出来なくなった。

 

 目的もわからずじまいで、唯一わかったことといえば、LSOは複数のオートクリエイトシステムがサーバー内で活動していることだけだった。

 そのシステムは、ゲームの運営をコンピュータにすべてを任せるというもので、ゲームクリアまで一部の修正以外のプログラムを受け付けないという代物だ。

 これでゲーム内のプレイヤーはゲームクリアという自らの手で脱出しないといけないことになった。

 

 しかし、そんな最悪の状況の中、政府による一つの政策が発表された。LSOへの救助隊の派遣だ。

 

 最初は、人が全く集まらなかった。当たり前だ。みんな自分の命が大事だ。

 だが、しばらくして、報酬が発表され志願者が少し増えた。その内容は、生還した場合、日本国内での納税の義務を破棄し、公共施設を永久に使えること、そして、毎月十万円の支給といった破格のものだった。

 要するに、働かずとも一生楽して暮らせるのだ。

 

 それでも、規定人数一万人の内、半数も満たさなかった。

 だが、その志願者の中に俺はいた。どうせこのまま生きていても、引きこもりのニート人生しか待っていないし、報酬がもらえたらずっとゲームの中で生きていける。そんな思惑があっての参加だった。

 それは俺だけでなく、決行日に真っ白な会場に集まった奴らの多くがそんな雰囲気を醸し出していた。そうでもない奴もいるが。


「注目、注目」


 突然、部屋の明かりが消え、白い壁に映像が映し出された。そこに映っているのは初老の見覚えのある男だった。


「誰だ手前ぇ! はやくログインさせろよ!」

「そうだ! そうだ!」


 どこからと声が上がり、騒ぎになる。

 しかし、画面の男は動揺している風には見えない。


「静粛に、静粛に。私は今回の件を任された磯島という者だ。私の呼びかけで来てくれたのだから、知っているとばかり思っていたが、違うようだな」


 その軽いあいさつでこの部屋の全員を黙らせた。

 磯島俊介。警視庁長官で、何度も記者会見の時に、総理大臣と一緒にいた奴だ。今まで責任者は総理大臣だと思っていたが、違うようだ。


「今回の件では、防衛省と警察が担当するはずだったのだが、防衛省には拒否されてしまってね。ハハハ、たまったもんじゃないよ」

「そんなことはどうでもいい! 報酬は貰えるんだろうな!」


 髪を金に染めて、チャラそうな格好をした男が叫ぶ。


「もちろん。今から案内する部屋で、ログインしてもらいます。ただし、その部屋に入って辞退するっていうのは、よしてくださいね。それが守れる人は、この場に残って、そうじゃない人は退出してください。三分待ちます」


 しかし、三分経ったが、誰も出て行かなかった。この部屋に集まった時点でみんな決心しているのだ。


「最終確認です。本当に救助隊に参加してくれますね?」


 この時、俺は妙な胸騒ぎがしたが、それを無視して、案内の女性に従って部屋まで行った。それが、今後の未来を大きく左右するとは知らずに。


救助隊に参加し、部屋に移動するキュウ。そこでキュウが見たものは……

 次回 第二話 キャラメイク

 お楽しみに

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