荒野と老婆にご注意を。
ホラーですよー
気を付けて☆(笑)
あるところに独りの男の旅人がいました。旅人はある国の、ある荒野に、老婆が一人いたのを見つけました。荒れ果てた広い荒野の真ん中に、老婆が一人で何も持たずに立っているなんて…。不思議に思った旅人は、思い切って、その老婆に声をかけました。
「もしもし、こんなところで、何をなさっているのですか?今日は涼しいから良いものの、普段は日が照りつけ、そんな風に立っていたら、干からびて死んでしまいますよ?食べ物はありますか?水は持っておりますか?」
そもそも、こんな老婆が今生きていること自体奇跡だ。この荒野は広く、真ん中に来るのにも、若い男が休まず歩き続けても半日以上かかってしまう。ましてやこんな老婆が……。
「ありがとう、親切な旅人さん。」
老婆はしわがれた声で言い、旅人に飛びついてきました。
そして極限まで旅人に顔を近づけました。
老婆はずっと下を見うていたので顔はよく見えませんでしたが、この時旅人は初めて老婆のその顔を見ました。
鼻は尖がり頬はこけ、骨が浮いています。目が血走って、ぎょろぎょろと瞬きもせずに飛び出しています。唇はガサガサにひび割れ、血液と唾液が混ざりこぼれ落ちています。
―化け物だ…。旅人は直感的にそう思いました。しかし、もう遅い。老婆の皮と骨しかない様な細い腕と指に有り得ないほど強い力で掴まれ、振り払う事ができません。
「みんなみんな、知り合いでも親戚でも誰も私のことを気にも掛けてくれないわ。でも貴方は違うのね。だって貴方は知らない私を心配してくれるんだもの…!
貴方お肉が私のお腹を満たしてくれるのでしょう?貴方の血液が私の喉を潤してくれるのでしょう??」
早口にそう言うと、いきなり旅人の首筋に歯を突き立てました。とても老婆とは思えない頑丈な頑丈な歯を、旅人の首筋に、ざっくりと、深々と、そう、肉が抉れてしまうほどに…。
旅人は痛みとショックのあまり声も出ませんでした。身体が、喉が、硬直して動かないのです。これでは誰に助けを求める事も出来ません。いや、声が出たとしてもここは荒野の真ん中、誰も周りになんかいやしません。
じゅるっ…
じゅるるるるるる……
老婆は一瞬間をおくと、旅人の血液を一気に吸い上げました。辺りに嫌な音が響き渡り、見る見るうちに、旅人は干からびてゆきました。
老婆は旅人の血液を吸い尽くすと、皮を食いちぎり、肉を貪り喰い始めました。
………………………………
昔、老婆が馬車に乗ってその荒野を渡ってた時。金を失くし、その主である男にに馬車を追い出され、飢え干からびて死んでしまったという。
そして今、その荒野には噂があります。
男の人が、独りでその荒野に行って、生きて帰った者は一人もいない、と。
いやー、私幽霊とか信じませんけどね?