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  作者: 星空
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第2話 メール交換をやめない理由

『昨日はありがとうございました。お会いできて嬉しかったです。〜』

朝になると良彦からメールが来る。ちょうど出勤時間なのだろうか。電車に乗ったころなのだろうか。朝8時、決まった時間に来る。一応返事をする。

『おはようございます、お仕事がんばってください。』

そんな挨拶程度のメールしか返さない。それにしても、なんとそっけない文面のメールだろうか。こんなつまらないメール交換なら、すぐに終わりになってもよさそうだ。でも、良彦は、毎朝毎朝飽きもせず、メールをくれる。それだから、冴子も返信メールを送る。でも、なぜか心はときめいたりしない。こんなのだったら、やめればいいのだ。でも、やめないにはそれだけの理由があった。


 ある日、良彦からメールが来た。『電話で話せませんか?』冴子はあまり気乗りがしなかった。でも、少しくらいはいいかなと思い『いいですよ』と返事をした。

 ほどなく電話がかかって来た。

「あー加奈子さーん、声が聞けて嬉しいです・・・」

本当は加奈子ではなく冴子だ。でも、しらじらしく受け答えをする。

「加奈子さん、なんて呼ばなくてもいいです。かなちゃん、でいいのに」

どうしてそんな嘘がつけるのだろう。冴子は自分でも不思議だった。


「今日は何をしていたんですか?」

「今日は何も。お休みなので家でゆっくりしてました。」

「そうでしたか。私はこれから会議なんです。それまでちょっと時間があるので電話しました。」

「そう、会議ですか、大変ですね。」

「ええ、いろいろと大変です。今手がけている仕事は、取引先がアメリカの会社のため、英語でミーティングをしなければいけないので、ちょっと疲れます。」

「そうですか。英語が話せるんですね。」

「いえ、ほんの片言です。ですから疲れるんです・・・」

(こんな愚痴の話なら、奥さんにしてくださいね)


 良彦からのメールは、毎朝毎朝決まった時間に来るのだが、それも土曜日と日曜日にはぴたっと来ない。冴子はわざと土曜日にメールをしてみた。勿論返事は来ない。日曜日にもしてみた。やはり返事はない。そして月曜の朝、大体決まってメールの内容は、土日の家族サービスの話だった。3年生と1年生の男の子がいるらしい。家族で潮干狩りに行った、だの、家族でキャンプに行った、だの・・・。そして最後にこんなメールが書かれている。『加奈子さんの週末はいかがでしたか?』冴子は勿論、メールの返事をしない。(無神経さにもほどがありますよ、マイホームパパさん)


 冴子は本当は嘘をつく気などないのだ。でも、相手の男がそうさせる。男とは、なんと無神経な動物なのだろう。いい加減、腹が立つ。特に既婚者の男はそうだ。とかく自分の都合を優先させる。いかにも優しそうな素振りを見せておきながら、結局女を利用するのだ。(本当に素敵な男性というのは、奥さんを大切にできる人なんだと思う。奥さんを一途に愛せる人なんだと思う。)


 冴子はメール交換をやめない。まだやめられない。彼女にはやめない理由があるのだ。まだ彼女の計画は始まったばかりだった。


 


 


 



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