「正体不明」
これ構想はすっごい前から考えていたんです。ちょっとずつちょっとずつ書いっていってやっと完成した。
力作?と呼べる作品になったと思います。
「正体不明」
僕の街、フレーベルは正体不明の怪物に襲われた。それは、ある日突然、宇宙から飛来したとされている。その存在には、いかなる名称も正式に与えられていない。何もかもが不明瞭で、まさに「正体不明」としか言いようがない。その怪物を目撃した者は、例外なく全員が死に至ったという。都市が次々と壊滅していく中、僕は偶然にも他の街に滞在していたため、この惨劇から免れることができた。フレーベルに住んでいた僕以外の人間は、皆、命を落とした。
死因は出血死。しかし、奇妙なことに、遺体に一つも外傷が見当たらなかった。内側から血が滲み出るようにして、彼らは静かに息絶えたのだ。そしてフレーベルは数週間で滅んだ。
フレーベルが滅んだ事はすぐに世界中に知れ渡った。僕は、その怪物を「フレーベルの怪物」と呼ぶことにした。個人的な呼称だ。軍は、このフレーベルの怪物を討伐するために、襲撃された地域へと遠征部隊を派遣した。だが、一ヶ月が経過しても、彼らが戻ってくることはなかった。通信は途絶し、部隊の消息は不明のままだ。
周辺の国々も、フレーベルの怪物に強い関心を示した。唯一判明しているのは、それが宇宙から来たという事実のみ。その一点に、彼らは興味を抱いたのだろう。だが、これは遊びではない。真剣に、そして冷静に対処すべき事象だ。やがて、フレーベルの怪物には莫大な懸賞金がかけられた。その額、実に、1000000000$。そして、フレーベル一帯での銃火器の使用が、一般市民にも許可が降りた。僕は、この狂気の淵で、ただひたすらに情報を集め始めた。
フレーベルの惨劇から数週間が経過した。僕は、生き残った者たちが集まる避難区域の一角で、ひたすら情報を集める日々を送っていた。インターネットは断続的にしか繋がらず、テレビのニュースも検閲された情報ばかりだ。しかし、人々の口伝、古い記録、そして闇市場で取引される非公式な報告書には、断片的ながらも真実の影が潜んでいる。
「アグノストス」――住民たちはそう呼んだ。彼らの言葉は、恐怖と畏敬が入り混じった響きを持っていた。「見た者は全員死ぬ」という共通認識は、彼らの証言によって補強される。ある老人は、フレーベルが襲われる直前、空に奇妙な光を見たと言った。それは、まるで宇宙の深淵から覗き込む瞳のようだったと。そして、その光を見た隣人が、翌朝には血を流して冷たくなっていたと語った。外傷はなかった。ただ、血だけが、まるで内側から沸き上がったかのように、シーツを赤く染めていたという。
軍の残された報告書には、「オンゲイデンティフィシール」という無機質な言葉が並んでいた。それは、感情を排した管理と分類のための呼称だ。彼らは、フレーベルの怪物を「未確認対象」として、その脅威を数値化し、戦略的な対応を試みていた。しかし、遠征部隊の壊滅という結果は、彼らの合理的な思考が通用しないことを示している。報告書には、部隊が最後に発信したとされる通信記録の断片が残されていた。「…視認…不可解な…出血…撤退…不可能…」ノイズ混じりの音声は、そこで途切れていた。彼らは何を見たのか。そして、何に絶望したのか。結果は定かではない。
科学者たちの間では、「イズヴァンゼムナ・フォルマ・ナ・ジヴォット」という仮説が囁かれていた。地球外生命体。彼らは、フレーベルの怪物が従来の物理法則では説明できないエネルギー反応や、未知の生命活動の痕跡として捉えようとしていた。僕が手に入れた、ある科学者の個人的なメモには、こう記されていた。「これは生命体なのか?その実体は、我々の理解の範疇を遥かに超えている。」彼らは、この現象が単なる「怪物」ではない可能性を示唆していた。
そして、報道と一般の人々は、「ペルビンデシュ」と呼称した。「怪物」だ。それは、人々の不安と恐怖を煽り、同時にそれを打ち破る「英雄」の存在を求める象徴として、瞬く間に社会に浸透していった。テレビのニュースでは、連日「フレーベルの怪物」の脅威が報じられ、その恐怖を打ち破る「アリシノス•イロス」の活躍が期待された。彼らは、銃火器を手に、フレーベルの怪物に立ち向かう者たちを真の英雄と称賛した。だがその英雄の正体は金に目が眩んだ野蛮なやつらだという事は、皆気にしていなかった。
情報が錯綜する中で、それぞれの呼称が指し示すものが、必ずしも同じ「実体」ではないことに、僕は気づいた。
特に、「英雄」と呼ばれる人々が、実際に「怪物」と戦っているという報道には、違和感を覚える。その違和感の原因はわからない。
情報収集の過程で、僕はもう一つの不穏な動きに気づいた。フレーベルの怪物の脅威とは別に、人間同士の争いや不信感が高まっているのだ。物資の奪い合い、情報統制、異なる意見を持つ者への排斥。恐怖と混乱は、人間社会の脆い均衡を容易く崩壊させた。人々は、フレーベルの怪物の恐怖に怯えながらも、互いに疑心暗鬼になり、小さな火種が大きな争いへと発展していく。この狂気は、本当にフレーベルの怪物のせいなのだろうか。それとも、僕らの内側から湧き上がる、別の「怪物」の仕業なのだろうか。僕は、その答えを探し続けた。
僕はある日、古いデータストレージデバイスを手に入れた。それは、フレーベル壊滅寸前に、ある科学者が密かに持ち出したものだという。デバイスの中には、暗号化されたファイルが多数含まれており、解読には数週間も要した。しかし、その中身は、僕がこれまで集めてきた断片的な情報を、一本の線で繋ぎ合わせる決定的なものだった。
ファイルの一つは、「イズヴァンゼムナ・フォルマ・ナ・ジヴォットについて」と題された、極秘の研究報告書だった。そこには、フレーベルの怪物が、⬛︎原⬛︎だという事が記されていた。それは、宇宙由来の未知の⬛︎⬛︎体、
あるいは、特定の条件下で発生する
物⬛︎現⬛︎の一種であるという。
そしてこの⬛︎⬛︎体は、空気⬛︎⬛︎する。
報告書は、その⬛︎⬛︎⬛︎が、人間の体に作用し、あらゆる疾患が臓器などに現れる。
「それを見た者は全員死ぬ」という共通認識も、この報告書によって説明された。おそらく見たもの、ではなく近くにいたものが⬛︎⬛︎⬛︎に脅かされるのだろう
⬛︎原⬛︎は、自律神経にも影響を及ぼし、心臓麻痺や脳出血を引き起こす。外傷がないのに出血死する、という奇妙な現象の謎が、ここで解き明かされた。
さらに、報告書には衝撃的な事実が記されていた。フレーベルの壊滅後、軍や政府は、この⬛︎⬛︎⬛︎の存在を隠蔽し、「宇宙からの怪物」という情報を流布したというのだ。それは、パニックを抑えるため、あるいは、国際的な混乱を避けるため、という名目でだった。しかし、その結果、人々は実⬛︎のない「怪物」に怯え、その恐怖は人間同士の不信と争いを更に加速させた。物資の奪い合い、情報統制、そして異なる意見を持つ者への排斥。これらはすべて、「怪物」への恐怖が引き起こした、人間自身の暴走だった。
「アリシノス•イロス」と呼ばれた人々についても、真実が明らかになった。彼らは、決して「怪物」と戦っていたわけではなかった。彼らの多くは、病原体の拡散を食い止めようと尽力した科学者や医療従事者、あるいは、混乱の中で人間同士の争いをする者たち。しかし、彼らの行動は、人々の「怪物」という認識によって歪められ、「怪物と戦う英雄」として祭り上げられていたのだ。彼らの犠牲は、⬛︎体のない「怪物」ではなく、人間自身の愚かさによってもたらされたものだった。
僕は、デバイスの画面に映し出された文字を読みながら、全身から力が抜けていくのを感じた。僕が「フレーベルの怪物」と呼んでいたものは、僕自身の、そして人類全体の「認識のズレ」が生み出した幻影だったのだ。そして、その幻影が、どれほどの悲劇を生み出したのか。僕の故郷フレーベルは、⬛︎体のない「怪物」によってではなく、人間自身の恐怖と、それに続く狂気によって滅ぼされたのだ。
僕は、手に入れたデバイスをそっと閉じた。その冷たい感触だけが、僕の掌に残された唯一の現実だった。フレーベルの壊滅から始まった僕の旅は、結局、外なる「怪物」を追う旅ではなかった。それは、僕自身の内側、そして人類の集合的な意識の中に潜む「怪物」を探す旅だったのだ。
「それを見た者は全員死ぬ」という言葉は、真実とも呼べるものだった。しかし、それは、宇宙から飛来した実体のある怪物では⬛︎⬛︎った。それは、未知の病⬛︎体が引き起こした。心臓麻痺や脳出血などの症状、あるいは、人間自身の根源的な恐怖の現れだった。人々は、理解できないものを「怪物」と定義し、その恐怖に駆られて暴走した。その暴走の中で、互いを傷つけ、殺し合い、そしてその死すらも「怪物」のせいにしたのだ。僕の故郷フレーベルは、確かに壊滅した。しかし、それは「怪物」という名の存在によってではなく、フレーベルの住民たちが抱いた恐怖と、それに続く「英雄」と呼ばれる者の争いによって、自ら滅亡の道を歩んだのだった。軍の遠征部隊が戻らなかったのも、彼らが「怪物」に敗れたからではない。彼らはおそらく、⬛︎原体の作用によって、あるいは、混乱の中で発生した紛争に巻き込まれて戻れなくなったのだろう。
「アリシノス•イロス」と呼ばれた者たち、彼らは、真に英雄だったのかもしれない。しかし、彼らが戦っていたのは、外なる「怪物」ではなく、人間の中に巣食う恐怖と、それによって引き起こされた狂気だった。彼らの行動は、人々の「怪物」という「認識」によって歪められ、彼らの犠牲は、誤った解釈の中で消費されていった。僕は生き残った。そして、すべての情報を介して、理解した。この世界に「怪物」なんてものは存在しない。存在するのは、人間が「分からないもの」をどう定義し、どう解釈するか、それで生み出された「認識のズレ」だけだ。恐怖は、人間の解釈によってあらゆる形へと変わり、「英雄」と「怪物」は、他の「認識」によって容易に入れ替わっていく。真実は常に分裂し、確定する事はない。それは僕が今、この瞬間に抱いているこの感情もまた、たった一つの解釈に過ぎないのかもしれない。
「怪物を倒そうとしていた人間こそが、怪物だった」
この結論は、僕の心に深く刻み込まれた。僕は、この真実を誰かに伝えることはできないだろう。いや、伝えるべきではないのかもしれない。なぜなら、この真実もまた、僕という一人の人間の「認識」に過ぎないからだ。そして、もしこの真実が、新たな「認識のズレ」を生み出すのなら、それはまた別の悲劇の始まりになるだろう。僕は、荒廃した世界の中で、ただ一人、この重い真実を抱えて生きていく。空は相変わらず泥水のような色で、遠くの都市からは、まだ黒煙が立ち上っている。しかし、僕の視界は、以前よりもずっとクリアになっていた。僕が本当に恐れるべきものは、外なる「正体不明」ではなく、僕自身の、そして人類の「認識」そのものなのだと。この物語は、ただの「怪物の話」ではない。人間が「分からないもの」をどう定義し、どう解釈するかの、僕自身の、そして人類の記録なのだ。
僕はこんな事を、伝えるべきではないと思っていたが、これからのことを考えると伝えていかなければと思ってしまった。
だから今回起きたことを未来に伝えてゆくためにここに、歴史に……書き記す。
今、この物語を読んでいる「君」がどう感じたかはわからない。だが過去にこのような惨劇が起きたという事を、知ってほしい。
僕はもうすぐ死ぬだろう。「怪物」という「認識」の手によって。
僕は、観測者だ。起こった事を書き記さなければならない。
だがもうすぐで書けなくなってしまいそうだ。だから大事な事を「君」に伝えよう。
これは「今」を生きる「君」にとっては関係のない事のように感じているだろう。
だが、これはこの先の未来でも起こり得ることだ。人間一人の「認識」のせいで世界が汚染される事は容易に起こる。
その汚染をとり除く事が出来るのも、人間だ。
人間は可能性に溢れている。悪い方向に道を進める事もあれば良い方向に向かって行くこともある。そしてこれが悪い方向に進んだ時の例だ。「君」の時代では良い方向に行く事を願っている。その時は「君」に是非、観測者をやってもらいたいと思う。
たとえ人間が悪い方向に道を進めたとしても、観測者をやってもらいたい。
観測者になるということは、残酷な運命が待っているかもしれない。
だが「君」はその残酷な運命にも耐えれると僕は信じている。そのためには僕がたとえ、病に犯されても、「人」に襲われたとしても、この本だけは必ず残そ……思う。「⬛︎」に……期……いる……。もう縺雁挨……繧後□。
正体不明「完」
あなたは「怪物」をどう「認識」しましたか?
そしてこの世界をどう「観測」しましたか?
「怪物」の正体分かりましたかね?わからなかった場合は⬛︎⬛︎⬛︎とかの開けてる部分あるじゃないですか。
例えば⬛︎原⬛︎とかこれの空いてる部分繋げるとわかると思います。




