【第二章】プロローグ
第二章です。
やっぱり更新は不定期だと思います…。
町枝市の名物とも言える紫陽花が最も映える時期である梅雨も過ぎて、久しぶりに使命感に燃える太陽が必要以上に紫外線の押し売りをしてくる7月の昼時。
この熱気は全力でクーリングオフしたい所だが、どうやら返却サービスは実施していないらしい。
夏の時期だけ地球温暖化について真剣に考えられるなんて事はないだろうか?
俺はそういった人間らしい。
つまり何が言いたいかというと、要するに暑いのだ。
確かに夏が暑いというのは至極当然のことであり何一つおかしなことなど無いのだが、だからと言ってそれが苦で無いなんて事は無く、熱気に当てられた頭じゃまともな思考は出来ないというもの。
現在昼休み前4限の授業中。日光絶好調のこの時間帯の授業が数学というのは学校サイドの緻密に計算された嫌がらせと採って良いのだろうか。
せめてクーラーが欲しい。これが私立と市立の悲しい現実の差なのだろう。
おぉ、暑い。
「そういえば、もう少しで夏休みだな」
授業も終わり、いつもの様に一香と弘一と三人で昼食を突いていた時、何とはなしに呟いてみた。
「そうだな、今年は何か予定とかあるのか?」
「んー、俺は特にないな」
「私も」
弘一の問いに俺と一香は同じ答えで返す。
高校生になって最初の夏休み。とは言ったものの実際何かが変わる訳でもなく、やはり唯の長期連休程度の認識だけど。
でも、今年は何か色々やってみるのも良いかもしれないな。
「一香はどっか行ったりしないの?」
「私は、そこまでこの辺りを知っている訳じゃないから」
「あぁ、そういえば東京から来たんだったね」
今一香は町枝に住んでいる親戚の人の家に住んでいるらしい。
なんでもご両親は世界ツアー中らしくて、最初は一香も一緒に行くとかいう予定だったそうだ。でも一香は日本の高校に通いたいと主張したらしい。それで親戚の居る町枝に越して来て、学校もココに落ち着いたそうな。
「じゃあ、町枝を回って歩こうか?」
「なにがあるの?」
町枝なら生まれた時からずっといる訳だし案内は出来る。
若干興味があるのか、聞いてくる一香に夏の町枝ツアーを考えながら答える。
「そうだな、そんなに大きくないけれど祭りもあるし、隣町まで行けば海で泳ぐ事も出来る」
「それに、町内でも何かイベントがあるだろう」
「へぇ~」
俺の声に弘一も続く。
良く考えたら俺もそこまで意欲的に参加した事は無かったかもしれないな。
今年の夏休みは、今まで注目していなかった身近な事にも視点を当ててみようかな。
「おもしろそう…」
「だろ?夏休みは長いし、色々やっていこうぜ」
一香の方も結構乗り気だし、やっぱりこういうのは楽しくなるね。
「まぁ、その前に試験があるがな」
「……おぉう…」
弘一の言葉に一瞬思考が停止し、そのまま一気にテンションがダウンした。
一発ノックアウトだよ、ちくしょう。
「…ま、まぁ、なんとかなるでしょ…」
「夕姫ちゃんとやらないと赤点とるよ?」
「…辛辣デスネ一香サン」
「夕姫馬鹿っぽそうだし」
「俺は今激しく傷ついた!」
本当に性格悪いなこの女。
そんな感じでギャーギャーと騒ぎながら、時間は過ぎてゆく。
いつもの様に一香が俺をからかいながら。
いつもの様に俺はそれに噛みつきながら。
いつもの様に弘一が俺たちに対して呆れながら。
三人での初めての夏を迎える。