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【第一章】プロローグ

初投稿作品です。

まだ慣れていないですがこれから頑張っていこうと思います。

未熟者故、不定期更新になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。


まだプロローグなのであまり大きな動きはないです。

人間の五感、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚。

この中でも人の行動のほとんどは視覚に左右されると思う。

例えば、両目を塞げば何も見えないのは当たり前として、片目を瞑っただけでも視界の半分はシャットアウトし、立体感や距離感も掴めなくなる。

それに人って対象を目で見て、それで物事を判断するでしょ?

大きい小さい、広い狭い、そのモノの色や形、時には善悪の判断まで。

いや、まぁだから何だって訳じゃないけど、つまりはそれだけ視覚っていうのは大切ってこと。

片目が見えないってなると日常生活でも不便だし、もしスポーツマンとかならそれこそ致命的だ。

…と、ここまでこんなグダグダと目の見えるありがたさを説いてきた訳だが、何故いきなりそんな話をしたかというと。

まぁ、俺も去年まではスポーツマンだった訳で。

俺も目のありがたさを心に刻まれた訳で。


「……笑えねぇ」


泣きたくなるね。

気持ちの最終整理のためにやって来た海岸沿いの道を歩いている訳だけど、来てみれば整理どころか未練ばかりが募るばかり。

…まぁ、それで取り乱したりなんかはしないけどさ。

海岸沿いはやっぱり風が強い。

波の音も、潮風の匂いも、風に揺れる伸びてきた前髪の感触も確かに伝わってくる。

ただ俺の視界はいつも半分しか光を映さない。

まぁ、そういうこと。


「…我ながら女々しいねぇ」


ひとり苦笑いを零して呟く。

最近はひとりごとが癖になって来たのかもしれない。

別に悲しいとか悔しいとか、絶望に打ちひしがれてるとか、そんな悲観的な感情は持ち合わせてはいない。

いや、そりゃ見えなくなってすぐの時は辛かったけれどさ。

今となっては思ったとして『なんだかなぁ…』程度のもの。

人間の慣れとは恐ろしい。

でもまぁ、今はその『なんだかなぁ…』が厄介な訳で。

それを取り除きたくてここまで来た訳で。


「この辺も久しぶりだなぁ」


つい最近までずっと受験のことでいっぱいいっぱいだったし。

それも終わってつまりもうすぐ高校デビュー。

せっかくの新生活を『なんだかなぁ…』でスタートするのはやはりいやな訳で。

小さいときからのとっておきの場所に向かっているという今この時。

三月の海の風はまだまだ肌に痛かった。



しばらく海岸を歩いていると、ほとんど人気のないポイントに辿り着く。

大きな岩の壁と壁に囲まれた場所。

半円状のその場所の中央には、いい感じに削れてテーブルみたいになっている大きめの岩。

うん、岩まみれ。

そのテーブル岩に腰かけて通り抜ける風を受けながら呆けてるのが俺のいつもの在り方なんだけれど。

どうやら今日は先客が居たらしい。



テーブル岩に腰掛けているその少女は、腰まで届きそうなほど長い髪を潮風に流されながらも、それを気にした様子も無く、口元で何かを呟いている。

いや、あれは呟いているというよりも・・・。


「歌っている?」


なんとなくだけどそんな感じがした。

まぁ、だからなんだと言う訳じゃないんだけど。

しかし、参った。此処なら誰も来ないだろうって思ってたし、実際此処に来る人なんて殆どいない。

だからこそとっておきの場所だったし、静かに物思いに耽るのに適していたというか。

でも今は今は見知らぬ少女が居る訳で。

とは言っても別に此処が俺の所有地って訳じゃ無い訳で。


「誰?」

「……誰といわれても」


見つかった。

そりゃそうか。ずっと突っ立って考え事してたら普通見つかる。

怪訝そうにした表情でこちらを見ている見知らぬ少女。

一瞬、彼女の黒く澄んだ瞳に飲み込まれそうになる。


「散歩の途中に立ち寄っただけな訳で・・・」

「…そう」


綺麗な黒で癖の無い長髪。

整った顔立ち。

初対面での第一印象だけど、素直にかわいい娘だな、と思った。

まぁ、同い年の女子達と比べたら若干背が低いかもしれないけど。


「…あなた、今何か失礼な事考えなかった?」

「…とんでもない」


エスパーか何かだろうか?

それとも俺は考えている物事が表情に出やすい人種なのだろうか?


「初対面でそんな事、考えるわけ無いよ」

「…そう、ならいいけれど」


まぁ、考えていたんだけど。

いや、でも小さいって思う事は失礼な事なのか?

女の子って『小さくてかわいいね』的な事言われると嬉しかったりしないのかな?

……。

うん、失礼な気がした。


「さっきの、歌ってたの?」

「…え?」


ふと、気になった事を聞いてみた。

ただ、帰ってきた返事は・・・。


「ねぇ」

「…何さ?」




「あなたは、夢を捨てた事はある?」




聞きたかった答えではなかった。


「…まぁ、あるっちゃあるのかな?」

「…そう」


そう言って一拍空ける見知らぬ少女。


「でも、きっと私の言っている事とあなたの思っている事は違うわ」

「だろうね、まぁそれは初対面だし仕方ない訳で」


それで相手の考えがわかればそれはもうエスパーだ。

あれ、エスパー少女なんだっけ?


「…あなた語尾に訳でって付けるの癖なの?」

「…他人に言われて気が付く自分の癖ってあるよね」

「理屈っぽく聞こえるからやめたほうがいいわよ?」

「初対面で辛口コメントありがとう」


お互い無言になる。

まぁ、自分でも解ってるんだけどね、理屈っぽいの。


「…もう行くわ」

「そうかい」

「それじゃ」


別れ際は随分とあっさりしたものだと思う。

初対面で多く語ることも無いんだろうけれどね。

俺は彼女が歩いていく後姿を眺めながら、テーブル岩の上で風を受けていた。


「…なんだかなぁ」


呟くしかない、そんな心情の三月の海。

俺は高校生になります。

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