表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説「モミジ」 山下 雅夫

作者: 山下 雅夫

※この作品はフィクションです。実在の人物などとは関係ありません。


「モミジ」山下 雅夫

春に嫁がこの世を去って、私の胸にはぽっかりと大きな穴が空いた。

仏壇の嫁の写真は一向に変わらない。

嫁がどれだけ大切な存在か、嫁を十分に愛せていたか、

そんなことを考える心の余裕もないほど私は消沈していた。

まるで水を失った植物のように。いつもは優しさを感じる夏の木漏れ日さえも私には無情に感じた。当たり前の日々が続きすぎていて、いつまでも続くと思っていた。

自分の愚かさを、誰よりも自分で責めていた。食卓に愛のこもった飯はもうない。

からだはげっそりと痩せて、笑うことも無くなった。切れかけた電球、溜まった洗濯物、人との接し方もまともにできなくなって、

飯も、スーパーの安い惣菜、パウチご飯、レトルトの味噌汁。

それでも、生きていくために、仕事は続けなくてはいけない。職場に行く道のモミジの葉は、私の気持ちを知らないかのように、いつものように風に揺られて。

ふとモミジを見るたびにゆっくりゆっくり色づいていく。あっという間に秋がきてしまった。真っ赤に色づいたモミジや真っ黄色のイチョウの葉。若い時の自分たちの姿がよみがえる。付き合い始めてから半年くらい経った時の秋、満面の笑みに染まった顔を私に見せてくれる姿がよみがえる。心にともりがつくことは、もうないかもしれない。それでも、君の色を見つめるたびに、胸の奥が少しだけ温かくなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ