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第5章 過去と現在を繋ぐ影

三月に入り、春の気配が少しずつ近づいていた。だが、学園内にはその穏やかな季節とは裏腹に、不穏な空気が漂っていた。クリスマス前から始まった連続襲撃事件は、依然として未解決のまま。そして、ついにそれは東京を越えて、遠く離れた福岡へと広がった。


 福岡県那珂川市。3月2日午後8時頃、静かな住宅街で突如発生した殺人事件が、物語に新たな火をつけた。


 被害者は58歳の会社員、村越達夫。彼は近所でも評判の良い穏やかな人物で、毎晩同じ時間に犬の散歩をするのが日課だった。その夜も、いつも通り犬を連れて出た村越は、自宅から300メートルほど離れた薄暗い公園の横道で倒れているところを、通行人に発見された。


 防犯カメラの映像には、フードを被った人物が足を引きずるように歩いている姿が映っていた。服装は黒のウィンドブレーカー、顔は隠されており性別や年齢は不明。しかし、東京での襲撃事件の犯人像と酷似していることから、警視庁と福岡県警は合同捜査を開始することになった。


 一報を受けた勇輝たち6人は、それぞれのやり方で捜査を進めていた。


 勇輝、梨華、真里の3人は、ネット掲示板やSNS、事件に関連しそうな口コミ情報などを集め、関連性を精査していた。自宅の一室にはホワイトボードが置かれ、これまでの事件の被害者の名前や発生日時、現場地図、関連人物が書き込まれていた。


「やっぱり、偶然じゃないよな……」勇輝がつぶやく。


 梨華が頷く。「被害者の親って、どこか共通点があるような気がする。名前の響きとか、職業の傾向とか……」


「もっと詳細なデータがほしいわね」と真里が言いながらパソコンに向かう手を止めなかった。


 一方で、徳川、真希、細川の3人は、これまで警察が入手していた防犯カメラ映像を何度も見返す作業をしていた。画質の粗い映像を目を凝らして確認し、一コマずつ静止しては、犯人の歩き方や姿勢、着衣の特徴を紙に記録していく。


「うーん、この時……左足を引きずってる……?」「いや、微妙だ。段差があるからそう見えるだけかも」


「いや、ほら、こっちの映像でも同じ動きしてる。これって癖じゃない?」と細川が指摘し、真希がそれをノートに書き留める。


 6人の間には、もはや一種のチームとしての結束が生まれていた。過去の事件で築かれた信頼と経験が、彼らの行動を後押ししていた。


 そんなある日、勇輝はふと、被害者の家族にある共通点に気がついた。


「ねえ、聞いてくれる?」勇輝は資料を手にみんなを呼び集めた。


「被害に遭った高校生の両親、調べてみたら、どちらかが過去に不動産会社で働いていたんだ。しかも、福岡で殺された村越さんも不動産業に関係していた」


 梨華が驚きの声を上げた。「そんな偶然、あるわけないよね……?」


「いや、これは偶然じゃない。何かがある」と真希。


 しかし、ネットや自主調査では限界がある。勇輝は、刑事の夏目に連絡を取ることにした。


 翌日、授業中にスマートフォンに一通のメールが届いた。「帰りに警視庁に来るように」


 授業が終わると、勇輝、梨華、真里は急ぎ足で警視庁へと向かった。受付を済ませるとすぐに夏目の姿が見えた。


「夏目刑事!」と勇輝が駆け寄る。


 しかし、夏目はため息交じりに彼らを制し、「まずは座れ」とソファを指差す。


 静まり返る部屋の中、夏目が口を開く。「君の話をもとに調べてみた。結果、全員が“サンキュー不動産”に勤務していたことが分かった。現在は“スマイル建設”に社名を変えているが、当時は全国展開中の大手だった。そして……勤務時期も全員重なっていた」


 驚く6人の前で、夏目は更なる事実を語る。


「20年前、この会社で横領事件が起きた。犯人は結局捕まらず、時効が成立している。当時、容疑をかけられた社員がいたが、彼は無実を訴える手紙を警察に送った後、家族と共に失踪した。以来、消息は不明だ」


「その社員が、復讐を……?」と真里がつぶやく。


 夏目は頷き、「まだ断定はできないが、動機としては充分だ。君たちの気づきがなければ、この線には辿り着けなかった。よくやった」と微笑んだ。


 その後の警察の調査で、被害高校生の親、殺された村越氏は、全員がその横領事件で警察の事情聴取を受けていたことが判明した。そして、当時聴取を受けた社員のうち、まだ2人が存命であることも分かった。


 警察は次なる犠牲者を出さぬよう、警戒を強めていた。

同時に関係者2人の情報を集め、事情聴取の準備をしている。翌日、夏目刑事から2人のうち1人は東京都内に在住し妻子と暮らしている所までわかっており明日にでも話を聴くと報告があった。


 だが、犯人の動機は未だ霧の中。真実に迫るには、もう一歩踏み込む必要があった。


 6人の高校生たちは、自らの信念と仲間の絆を胸に、さらなる真相へと歩みを進めるのだった。

結束と絆を深める6人だったが、犯人から再度、皆倉姉妹に忠告の手紙が届き生徒達に同様が走った。安全の為外では警察の護衛がしばらく付くことになったが、勇輝と徳川は皆倉姉妹を心配して学園内では積極的にボディーガードをかって出た。そしてこの後、事件は大きく動いていくことをこの時はまだ誰も知らなかった。

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