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ほんとうに幸せ

作者: 鈴華

美しい庭園で1人の貴婦人がお茶をしていた。歳を重ねていてもわかる美貌と凛とした優雅な佇まいから只人ではないことが子供でもわかる。もちろん彼女は只人ではなか、マーロン王国の前王の王妃セシーリア・マーロンである。

とおの昔に王位は息子に譲られ、王妃としての責任を手放し、1年前に夫である前王を亡くした彼女は余生を自由に過ごしている。そして、天気の良い日は庭園でよくお茶を楽しんでいる。そこへ、1人の老紳士が現れた。青い瞳をもち、今は白くなった髪も若い頃は金髪に美しい容姿で社交界を賑わせた。アルベルト・サラハン前公爵である。彼は公爵位を息子に譲ったあとも王の相談役として、王城で仕えていたが、よる年波には勝てないとその任を降りることを望んでいた。昨日、正式にその任を解かれることが決定し、本日が最後の登城となる。

「王太后様にご挨拶申し上げます。」

アルベルトは丁寧にセシーリアに挨拶をした。

セシーリアはアルベルトの挨拶を受け目を合わせ言葉を紡いだ。

「今日でしたね。」

「はい。」

「アルベルト・サラハン前公爵、本日までよく仕えてくれました。我が国の今日があるのもあなたの一助のおかげです。ほんとうにありがとうございました。」

アルベルトはセシーリアの言葉を噛み締め、深く礼をとった。そして一つ間をあけたあと、深く礼をしたままセシーリアに尋ねた。

「セシーリア、あなたは今幸せですか。」

「幸せです。アルベルト様はどうですか。」

セシーリアは微笑みながら答え、同じ質問をアルベルトにした。アルベルトは礼をとき、同じように答えた。

「幸せです。」

「そう、それは良かった。」

セシーリアは更に顔をほころばせ、アルベルトの返答に満足そうにした。アルベルトはその顔を目に焼きつけるよう数秒間見つめ、もう一度礼をとり去っていた。

これが、アルベルトとセシーリアの人生で最後の会話であった。

その三年後、セシーリアは眠るようにこの世を去った。その次の日にアルベルト眠るようにこの世を去った。


そして、これは2人の昔話である。



セシーリア・ルナリアはルナリア公爵家の第2子の長女として生まれた。金の髪に紫の瞳をもち、幼いころからその美しさは噂になるほどで、成長すれば数多の男性が求婚に列をなすだろうと言われた。気高く、優しく、努力家で勉学においても優秀であった。祖母を王女にもつ公爵である父と別の公爵家の令嬢であった母をもつ彼女は血筋、容姿、能力に非の打ち所がない令嬢として成長していった。

そんなセシーリアもただの少女であることには変わりなく、母の友人の息子で兄の友人である1人の少年に恋をした。少年の名はアルベルト・サラハン公爵令息である。セシーリアより2つ年上のアルベルトはセシーリアよりも色素の薄い金髪に知性をおびた青い瞳をもち、物腰の柔らかな少年であった。アルベルトもまた、幼いころはセシーリアを妹のように思っていたが、彼女の美しく成長する姿と自分慕ってくれる姿に恋心を抱きはじめていた。周囲も初々しい2人の姿を微笑ましく思い、両家の身分もつり合うことからセシーリアが13歳、アルベルトが15歳のとき内々に婚約の話が進められていた。この国では、婚約は社交界デビューが許される16歳をもって行うことが伝統であり、セシーリアが16歳を迎えたとき婚約することにした。


15歳になったセシーリアと17歳になったアルベルトは月に1度お茶会を行っていた。お互いの屋敷を順番に訪問し、今回はアルベルトがセシーリアの家であるルナリア公爵邸へ訪問する日であった。

「アルベルト様、ようこそいらっしゃいました。」

アルベルトの訪問を心待ちにしていたセシーリアは、屋敷の入口でアルベルトを出迎えた。

「出迎えてくれてありがとう。これを君に、こないだのお礼だよ。日常使いしてくれると嬉しいな。」

アルベルトは会う度に美しくなるセシーリアの姿を眩しそうに見つめ、手に持っていた小さな包みを手渡す。その胸ポケットには、紫の刺繍が施されたハンカチが入っている。アルベルトは誕生日以外にも時おり、セシーリアに小さなプレゼントを送る。セシーリアは、そのお礼として自身の瞳の色の紫でアルベルトのイニシャルを刺繍をしたハンカチを前回のお茶会でアルベルトに送った。今回は髪を飾るリボンであった。リボンとはいっても、公爵令嬢であるセシーリアが用いるのに相応しい、質のいい青い生地と緻密な刺繍が施されものである。普段、重い髪飾りよりもリボンを使って髪を結うことの多いセシーリアのことを考えられた送り物である。お礼のお礼なんてと思いながらも、セシーリアはアルベルトの色であり、自分のことを考えて選ばれた送り物を喜んだ。

「アルベルト様、ありがとうございます。明日から早速使わせていただきますね。」

今日は天気がよく、庭の薔薇が見ごろであることから、2人は庭のガゼボでお茶をしていた。1時間半ほど、会話を楽しんだあと、アルベルトは帰っていった。

次の日、セシーリアはアルベルトからの送り物のリボンを早速身につけ、自宅で読書を楽しんでいたとき、登城していたセシーリアの父が慌ただしく帰宅した。セシーリアは城で要職につく父の早すぎる帰宅に疑問を感じながらも自室で読書を引き続き楽しんでいた。しかし、セシーリアは父である公爵に急に呼び出された。

セシーリアは父の執務室の前まで行き、ノックし、声をかける。

「セシーリアです。」

「入りなさい。」

セシーリアは父の声が沈んでいることに気づき、根拠の無い不安を感じた。気を引き締め部屋に入り、父の目線が指したソファに座る。座ったセシーリアの前に父のルナリア公爵も座り、深刻そうな顔をしたまま口を開こうとしては閉じることを繰り返した。

「お父様。」

セシーリアの声掛けに意を決したようにルナリア公爵は口を開いた。

「王妃様がお亡くなりになった。次の王妃はセシーリアになるだろう。」

マーロン王国の国王シェーデン・マーロンは28歳で王妃アリシア・マーロンは元はハルトマン侯爵家の令嬢で25歳であり、8年前に結婚し、6年前に王女が1人生まれていた。また、4年ぶり王妃は妊娠し、王子が生まれることが期待されていた。

「どういうことですか。」

セシーリアは頭が追いつかないながらも、もう少し情報が欲しいとなんとか理性を働かし父に事情を説明することを求めた。

「今朝、王妃様は産み月を前にして産気づき、御子は死産なされた。王妃様もそのままお亡くなりになった。このことは、明日正式に発表されるだろう。そして、次の王妃については明日、王様と大臣たちで話し合うことになっているが、王妃に相応しい身分の中で未婚で成人に近いことからセシーリアを王妃に指名することを王様と宰相から話された。」


「ですが、私はアルベルト様と婚約するはずです。」

「正式な婚約はまだ結ばれていない、それに婚約ならばしていたとしても今回のような事態では解消して終わりだ。」

「他の方ではダメなのですか。」

「すまないセシーリア、お前しかいないのだ。」

セシーリアの世代の令嬢で侯爵家以上の家格の令嬢はセシーリアしかいなかった。王の王妃や側近候補となる10~5歳ほど上の世代が多く、もう結婚している女性が多い。売れ残っているのは問題のある者なので、王妃にすることは無理だ。その下のセシーリアの世代は少ない上に高位の貴族は男児が多く、侯爵家以上ではセシーリアが1人、伯爵家が3人、その他は下位の令嬢であった。伯爵家の令嬢は王妃として嫁ぐことのできる最低の身分ではあるが、血筋、容姿、能力の申し分のない公爵家の令嬢を差し置いて王妃の座におさまることはないだいろう。

セシーリアは目の前が真っ暗になった。頭では理解できる、貴族として何が正しいことかもわかる、しかし心が受け入れられないのだ。茫然としているセシーリアに父であるルナリア公爵は痛ましそうな目を向けたあと、自室に戻るように促す。

「お前には可哀想なことであるのはわかる。だが、これも貴族の務めと思い受け入れるしかない。今日はもう休みなさい、夕食も部屋に届けるよう伝えておく。」

「はい。」

セシーリアは自室に戻り、ソファに座ると自然と涙があふれていた。16歳になったら恋い慕うアルベルトにエスコートされデビュタントを迎え、正式婚約を交わしゆくゆくは彼の妻となることを今まで当たり前に考えていた。セシーリアが数日、部屋に閉じこもっている間に亡くなった王妃の国葬が行われた。この後、1年間は喪にふくし王国では祝事は中止されるか規模が縮小されることと、正式にセシーリアが次の王妃として内定された。1年後の新年の夜会でセシーリアはデビューし、王との婚約が発表される。そして、その半年後に結婚式を挙げることとなることも決定された。セシーリアはこの1年間に王妃としての勉強をすることとなる。国葬が行われてから1週間もたたずにルナリア公爵家には王家から王妃教育の教師が派遣され、セシーリアは勉強漬けと毎日を送ることとなった。もちろん、アルベルトとの接触や手紙は禁じられていた。セシーリアは悲しみを忘れるために勉強に打ち込んだ。


アルベルトはセシーリアの婚約が無くなることは王妃が亡くなったことが正式に発表された日、つまりセシーリアが知った次の日に知ることとなった。アルベルトも父であるサラハン公爵に呼び出され、セシーリアの王妃の内定を知らされた。そして、セシーリアとのこれからの接触や手紙を禁止された。サラハン公爵はアルベルトにひと言だけ声をかけた。

「お前の次の婚約はセシーリア嬢が結婚してからにしよう。」

アルベルトは気持ちを抑えるように拳を握りしめ父の精一杯の慰めにお礼を言った。

「ありがとうございます。」

正式に社交界デビューした公爵家嫡男ならすぐにでも変わりの婚約者を決めるべきなのを諦めがつくようセシーリアの結婚まで待ってくれるのはサラハン公爵の父として行える、哀れな息子への最大の配慮であった。


16歳になり社交界デビューをひと月後に控えたセシーリアは元々の優秀さと、悲しみを勉強にぶつけたため、王妃教育を必要最低限のラインまで終えていた。セシーリアは順調に用意されていく、デビュタントと結婚式のドレスなどに鬱憤した気持ちを持たないではいられなかった。アルベルトにエスコートされるデビュタントならきっと、アルベルトとの結婚式ならきっと、ドレスやアクセサリーの細部までこだわっただろう。今は用意されているものはどうでもいいという感情しか思い浮かばない。それに、王家に嫁ぐに相応しい装いをもとめられ、セシーリアの好みをほとんど考慮してくれない。最初はデビュタントのドレスくらいは自分が望むものをと自分の意見を言った、しかし、王家から使わされたセシーリアのデビュタントから結婚式までの用意を手伝う側仕えの返答は素敵といいながらも、こちらの方が王家に相応しいという遠回しな否定であった。そのときに、セシーリアのやる気は一つもなくなった。今のセシーリアが行う会話はこの一つである。

「アクセサリーはいかがなさいましょうか。」

「どれが似合うかしら。」

「セシーリア様にはこちらなどが格式高くお似合いだと思います。」

「なら、それにするわ。」

このようにして、セシーリアの様々な用意は容易に決まっていくこととなった。どれも素晴らしい品ではあったが、セシーリアの重い髪飾りより軽いリボンを好むような好みからはかけ離れたものであった。


ついにセシーリアは社交界デビューの日を迎えた。デビュタントのドレスでは婚約者がいる者は婚約者の色を纏う者が多い。セシーリアのドレスも例に漏れず、ドレスは結婚相手となる王の瞳の色の新緑を思い出させるようなグリーンである。グリーンのドレスを着たセシーリアは父にエスコートされ、会場に入った。全貴族が入場したあと、王が入場し、新年の挨拶と前王妃の喪があけたことを宣言した。そして、セシーリア・ルナリア公爵令嬢を王妃として迎え入れることと、半年後に結婚式を執り行うことを続けて発表した。発表後はデビュタントを迎えた令息、令嬢のダンスの時間である。セシーリアは王とダンスを行うこととなっていた。セシーリアは次の王妃として内定されてから、2回だけ王と会う機会が設けられていた。1度目のお茶会はセシーリアの得意なことや世間話をする程度であった。この時、王への感情は何も無かった。2度目のお茶会は王妃教育の進捗が早いことへのお褒めの言葉と、亡き王妃と王の娘である王女との顔合わせであった。顔合わせ後は、王妃となった暁には王女の健やかな養育を行うように命じられた。セシーリアはこのとき、自身が継子を虐めるような人間として扱われたことに怒りを感じ、王への感情はあまりいいものではなかった。そして、3度目が今回の舞踏会である。セシーリアは作った笑顔を顔に貼り付け、王とダンスを行った。曲も終盤になったころ王はセシーリアに言葉をかけた。

「サラハン公爵令息と1度だけ踊ることを許そう。ただし、そなたの父と兄と踊った後だ。」

王であるシェーデンは自身がアルベルトとセシーリアの若いふたりの仲を引き裂いたことも、セシーリアがデビュタントも結婚式も彼女の好みとは全く異なるものであるのも分かっていた。セシーリア以外に王妃に相応しい者かいない以上、結婚は決定事項ではあるが、哀れなセシーリアの夢を1つくらいは叶えてやるのが年長者としての優しさであろうとアルベルトとセシーリアのダンスを許した。セシーリアは驚きながらも、心からお礼を言った。

「ありがとうございます。」

セシーリアはその後父とダンスをし、少し休憩をとり兄とダンスした。父とダンスをする前に兄にアルベルトにダンスを王に許されたことを伝えてほしいと頼んだおかげでアルベルトはセシーリアを待ってくれていた。アルベルトとの最初で最後のダンスが始まった。

「セシーリア、久しぶりだね。着飾った君はとても綺麗だ。」

アルベルトは自分の色ではないドレスを纏うセシーリアを寂しく思いながらもその美しさを褒めずにはいられなかった。

「ありがとう。でも。」

セシーリアはそれ以上言ってはいけないことも、言わなくてもダンスの相手には伝わることををわかっていた。アルベルトはセシーリアの言いたいこと正しく理解した。次の言葉をかけたのはセシーリアだった。

「今までありがとう。」

瞳の奥に悲しさを覗かせながらも、笑顔を浮かべ続けるセシーリアは紛れもなく王妃に相応しい姿である。ダンスも後半に入り、終わりは近づくばかりである。アルベルトの今の気持ちはセシーリアが幸せに過ごしてほしいと思いである。もちろん、アルベルト自身が幸せにしたかった。

「セシーリア、幸せになってほしい。」

セシーリアは、アルベルトの深い愛情を感じ、寂しさと一緒に心の暖かみを思い出した。

「私は絶対に幸せになります。アルベルトもどうか幸せになってください。」

セシーリアも本当の笑顔を浮かべてアルベルトの幸せを祈った。アルベルトはセシーリアの笑顔を見つめ、うなづいた。

「約束する。」

ダンスの時間は終わり、2人は本当に別の道を歩んでいく。


半年後がセシーリアは、王家に嫁いだ。結婚式のとき、セシーリアの頭にはにはティアラがあったが、髪にはリボンも編み込まれていた。伝統でいうなら、ティアラと同じ宝石の髪飾りを付けるが、セシーリアはリボンを付けることだけは譲らなかった。セシーリアはリボンを好き自分を忘れたくなかった。結婚式でこの一つを譲らなかっただけで、セシーリアの気分は良かった。セシーリアの幸せへの第一歩である。


セシーリアは結婚してから1年半後、王子を産んだ。その2年後に王女を、その一年後には再びを王子、さらにその下に王子と王女の計5人の子供を王との間に設けた。そして、前王妃の子供である王女のことも、自身の子供と同じように深い愛情を持って育てた。王と王妃の仲は仲の良い夫婦だと王国では市民までが知るほどであった。シェーデンとセシーリア2人の治世で王国はさらに豊かなになった。そんな、2人の手助けをしたのはアルベルト・サラハン公爵である。アルベルトはセシーリアの結婚1年後、6つ年下の侯爵家

令嬢と婚約が進められ、侯爵令嬢のデビュタントと共に正式に婚約し、結婚、二男一女に恵まれた。

シェーデン王はセシーリアとの間の長男が結婚後、3年ほどして王位を譲った。前王シェーデンと前王妃セシーリアは離宮と城を行き来しながら、息子の王政を手伝っていたが、10年後シェーデンは病に倒れあっけなくこの世を去った。死の際までセシーリアは献身的にシェーデンの世話をした。


シェーデンは結婚してから徐々にセシーリアを女性として愛するようになった。亡き王妃アリシアには親愛はあったが、女性として愛していたかと言われればそうでは無い。しかし、セシーリアの子供たちを深く愛する様子や自分を支えてくれる姿を愛してしまった。そして、シェーデンはセシーリアに自身が愛される資格がないと考えていた。だから、この思いを伝えることをしようとは思っていなかった。だが、もうすぐ自身の命が消えることを感じ、自身の気持ちを伝えずには、セシーリアの気持ちを知らずにはいられなかった。

「セシーリア、愛していいる。君は」

セシーリアは夫からの思わぬ言葉に驚きながらも、言葉を返した。

「シェーデン様、愛していますよ、」

シェーデンはセシーリアのその言葉を聞き、セシーリアに手を握られ、満足そうに穏やかな顔で息をすることを止めていった。セシーリアは、シェーデンが力尽きた後も手を握っていたが、手を離しながら心の中でシャーデンには言わなかった続きを言った。

「愛していますよ、家族として。あなたが望む男女の愛ではなく、子の父として、王として敬愛しています。」

長く連れ添った夫に安らかな死をもたらしたいと思う一方で、嘘はつきたくなかった。男性として愛したのはアルベルトだけであることを曲げたくなかった。


セシーリアは今まで夫や息子を支えてくれたアルベルトが挨拶を終え、去っていく姿を見えなくなるまで見つめていた。そして、これまでの人生を振り返っていた。

「愛する人に出会い愛され、結ばれはしなかったけど幸せだった。結婚してからはオットが深く愛してくれてたくさんの子供を得られて幸せだった。あなたが最後まで私の幸せを願ってくれいて幸せね。」


3年後、セシーリアはこの世を去った。セシーリアの棺の中には、ひとつの箱が入っていた。そこには、子供たちがくれて手紙など大切な品が入っていて、生前から一緒に棺に入れるよう願っていた。その箱の下には刺繍がされた青い古いリボンが入っていることを知るのはセシーリアだけである。。


セシーリアが亡くなったことを聞いたアルベルトは深い悲しみ抱き、誰もいない自室で涙を一雫流した。翌日、アルベルトは起きてこなかった。アルベルトの棺には花の他に何かは入っていなかったが、その胸ポケットには古い刺繍の入ったハンカチが入れられていた。もう何色かもわからない刺繍でアルベルトのイニシャルが縫われている。アルベルトは密かに自身の執事に死んだときはこの古びたハンカチを胸ポケットに入れるように頼んでいた。花に包まれたアルベルトの胸ポケットに古びたハンカチが入っていたことは誰にも気づかれず、埋葬された。


幸せな2人のお話でした。

お読みいただきありがとうございました。

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