アイビス魔法学園〜愛の力で世界に祝福を〜
「うわー、なんていうかコッテコテの乙女ゲームって感じだね」
ゲーム実況者『NOA』
チャンネル登録者数500万を超える、日本トップクラスの配信者。元プロゲーマーでありゲームの腕はもちろん、頭の回転が早いトークスキルやさっぱりしてる受け答えで人気を誇っている。
そんな彼女は、画面に写った男と女が語り合っている姿を見て乾いた笑い声をだしていた。
少し前にNOAにやってほしいゲームを募集した際、一番多かったゲームが『乙女ゲーム』だった。FPSを主に行っているNOAからすれば今まで触れ合ってきたことがない類のジャンルであり、選ばれた時は少し不満を口に出してコメントは大盛り上がりしていた。
全ハッピーエンド開放を目指しついにパート5まで差し掛かったところで私はリスナーとゲームを振り返った。
「よーし、これで6ルートクリア。あと何?教師ルートと隠しルートの怪盗ルートだけ?まぁ、怪盗ルートって知ってるから隠しルートもなにもないんだけど」
「個人的には暗殺者ルートが一番大変だったな。あの子かわいい顔して地雷多すぎない?全然高感度上がらないし。まぁ、暗殺者だから懐柔されにくいんだろうけど」
「あー、それと悪役令嬢。どのルートでも本当に散々だよね?これがザマァってやつ?攻略対象に殺されて死ぬか、国外追放された先で死ぬか、平民に落ちて死ぬか、、、あれ?死ぬばっかじゃない?というか死しかなくない?制作者鬼かな?」
「あー、それとヒロインの妹ちゃんも可哀想だよね。ヒロインを怒らせるために毎回殺されてるし、完全なる舞台装置じゃん。やっぱ制作者鬼だわ」
別にゲームに感情移入するわけでも、同情するわけでもない。だってゲームはゲームだし、私はあくまで観測者だ。リスナーの中に「NOAは冷たすぎる。人の心がない」みたいなアンチコメントがあったけど、無視して終わりの挨拶をする。
人気になればなるほどアンチが湧くのは当たり前のこと。それを見て心がすり減っていく同業者は沢山いるんだろうけど、それを気にしてる暇はない。
人気配信者、株トレーダー、企業との話し合い。自由にできる時間は動画の編集と睡眠に使う。忙しいけどゲームをするのは楽しいし、なによりお金が貯まっていくと気分が上がる。
「あ、そろそろ時間だ」
今日はコラボ商品のことで企業と打ち合わせがある。家ではほとんどパーカーズボンというラフな格好でいるけど、打ち合わせとなればそうとはいかない。ほぼ新品みたいな小綺麗な服に身を包んで、めったにしない化粧を軽く施せばそれなりの格好にはなったはずだ。
ピンポーン
「ん?誰だろ?」
荷物は何も頼んでいなかったはずだけどな_
その後、私はリスナーに刺されて死んだ。
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