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其れは例えば宝石の様な  作者: 弦月 雪啼
白瑠璃の章
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Break the ice

七月某日、千代木市郊外の一軒家。ごく普通のモダンな家の広々としたリビングには現在、大きなモニターやホワイトボード、ノートパソコンが置かれ、大きな長机を囲う様に六つの椅子が整然と並べられている。この一室だけまるで何処かの会社の会議室の様になっていた。

そこに、六人の男女が集っていた。

「さあ皆さん座って座って~。」

そう言ってモニターの電源を点けたのは白い静謐。他の五人はノートパソコンが置かれている席を避けて好きな席に座る。パソコンでスライドの用意をしていた白い静謐が、全員が席に座った事を確認すると口を開いた。

「作戦会議を始めま~す!」

「その前に、一つ良い?」

出鼻を挫く様に言ったのは星野だ。

「え~?どした~?」

「三人くらい知らない人なんだけど…」

星野は困った顔で助けを求める様に白い静謐を見てそう言った。

「嗚呼そっか、先ずは自己紹介からか。はい、槌田さんから時計回りで~。」

白い静謐はハッとした顔で出入口から最も遠い席の人物を手で指す。指名されたのは仕立ての良いスーツをきっちりと着こなした壮年の男性だ。彼はスッと立ち上がり、威厳を感じさせる硬い声で言う。

「私は槌田 甚平(つちだ じんぺい)と言う。特異事例…怪異や魔術絡みの事件の捜査を行っている者だ。宜しく頼む。」

「はい、有難う御座います。補足しておくと、彼は日本警察のお偉いさんで~す。ループ事象を解決する過程で起きるであろう事件をこう…良い感じに処理してもらったり、色々お世話になると思いまぁす。」

「…それって隠ぺ…」

「はぁいお口にチャックね~。これは一般社会に影響を出さない為の処置だから。悪い事じゃないから、ね?」

隠蔽ではないか、と言おうとした星野を遮り白い静謐は有無を言わさぬ笑みを向けた。

槌田が席に座り、次の人の紹介に移ろうとした時。

「待て待て待て!!俺サツが来るとか聞いてねーんだけど!?」

勢いよく立ち上がって抗議するのは赤いメッシュが入った短髪のガラの悪い若い男。

「まあまあまあ、協力関係にある間はキミらの事も不問にして貰うからさ~。」

諫めようとする白い静謐に彼は更にヒートアップして机を叩く。

「冗談じゃねぇ!!帰らせて貰う!」

「…良いよぉ別に。キミらは当事者じゃないし。ただ…」

顔を逸らし不貞腐れた声でそこまで言った彼女は次の瞬間、真剣な声色に変え、流し目で彼を見て言った。

「キミは義理を通す機会を一生失う事になるだろうけどね。」

それを聞いた彼は目を見開き、拳を強く握ると舌打ちをして椅子に腰かけた。白い静謐は満足げに微笑んだ。

「さて、自己紹介を続けようか。」

「あっ次僕か。」

ハッとして立ち上がったのはシンプルな服装のスレンダーな人。特徴的なのはもみあげだけが長いショートボブの髪型と整った中性的な容姿。身長は男性にしては低いが女性にしては高めで、服装のせいかボディラインが見えない。顔立ちは女性よりだが判断材料としては悩みどころだ。何せ、星野の知り合いにはほぼ素顔でも女性に化けられる男性が居るのだから余計に判断が付かなかった。

その人ふわりと微笑み、落ち着いた柔らかい声で続けた。

尋木 采花(たずのき ことか)です。得意な事はヘリの操縦かな。よろしくお願いします。」

「えー…物凄い大嘘を有難う御座います。采花さんは魔術関係のエキスパートなので、めちゃくちゃお世話になりま~す。なんなら既に使用予定があるトラップの術式を考案して貰ってま~す。はい、次!」

尋木が座り、白い静謐が先程猛抗議していた男を指した時、星野はあれ?と首を傾げる。采花という名前はつい最近聞いた名前ではなかったか。苗字は違うが、下はあまり聞かない名だ。どういう事なのだろうと疑問に思っている間に手番が回った男が立ち上がって話し出す。

「何でも屋Big Dipper(ビッグ・デッパー)の代表で来たドゥーベだ。黒い霧とも呼ばれてる。どっちで呼んでくれても良いぜ。」

「はい有難う。Big Dipperには様々な専門家が居るし、荒事にも慣れてるから飛び道具として活躍して貰う心算で~す。はい、次~。」

続いて指されたのは星野も知る人物。上品なワインレッドのワンピースに身を包んだ金髪で緋色の瞳を持つ美少女が立ち上がって挨拶をする。

「僕はアリスティア・セアラ・ロシュルィナ。セアラ工房の技術師だ。危険地帯に足を踏み入れる気はあまりないけれど、必要な道具なら揃えよう。宜しくね。」

「は~い。聞いて貰った通り、アイテム制作担当で~す。多分工房に籠って貰う事になりま~す。次~最後に星野ちゃんね。」

そう言われて星野は立ち上がった。

「私は星野 瑠璃。占星術師、です。宜しくお願いします。」

ぺこりと頭を下げると、白い静謐が補足する。

「今回の異変にいち早く気付いて私に相談してくれた子で~す。重要な情報源兼、キーパーソンっぽいのでよろしくね~。」

そこで話に区切りを付け、白い静謐はモニター画面にスライドを映した。

「それじゃ、改めて作戦会議…の前に対処する順番を説明しま~す。」

「順番?」

「そう、順番。私達が対処するべきものは大きく分けて三つ。」

白い静謐は質問に答えつつ指を立てて説明していく。

「一つ、加賀地村の邪神。これはループ事象を解決する前に何とかしておきたいし、封印が限界に近いから寧ろ近いうちに対処しないといけない。

二つ、ループ事象。これがメインだね。原因は調べがついてるよ~。で、三つ目は|Chaos Collectiveカオス・コレクティブと呼ばれる非合法組織。これについてはループを解決する過程でどうしても敵対するし邪魔になるんだよね~。と、言う訳で順序としてはこう!」

彼女がパソコンを操作すると“作戦会議”と書かれたスライドが捲れる。次のスライドにはこう書かれていた。


①蛇神討伐

②クラヴィスの説得

③C.C.の対処

※場合によっては②、③を入れ替える事も検討


それを見た槌田、黒い霧、尋木の三人は首を傾げた。

「②はなに?」

訊ねたのは尋木だ。

「ループ事象の原因…かな?まあ、順を追って説明してくよ~ん。」


◆◇


①蛇神討伐について。

「私より采花さんから言って貰った方が分かり易いかな。頼める?」

「良いよ。アレについては僕のが詳しいだろうし。」

「じゃあよろしくお願いしま~す。」

「はぁい。先ず、ここで言う蛇神は僕の家系が代々封印してきたモノです。名も無き邪な蛇の神って言われてたかな。水を司るっていうか水そのものが本体みたい。よくある河川を蛇やら龍やらに例えて神格化するあれね。

あの神様自体はあんまり位の高くない神様で力もそんなに無いから倒すのは難しくないし、別にそんなに急がなくても良いんですけどねぇ…問題なのはその上司。あと流れ出る水という性質。邪神と呼ぶべきか、凶神と呼ぶべきか、まあどっちでもいいかぁ。取り敢えずロクでもないってことは覚えておいて下さい。

そんな感じの上司が居る異空間?異次元?…まあそんなのがあって、そことこっちを繋ぐ川になっちゃうんですよ。あの蛇神は。どっち方向に流れるとしても被害は甚大だろうから早めに対処したいって感じですね。」

「文字通り厄災の“呼び水”になってしまうという事かい。」

「そゆこと~アリスちゃん上手~い!なので、作戦としてはこっちのタイミングで封印を解いて速攻叩きのめす感じ。」

白い静謐は軽い調子でそう言う。相手は神様だと言うのに、そう眉を顰めたのは星野だけではなかった。

「下級っつても神格相手だろ?気軽過ぎんだろ。」

「同感だな。君が浅慮だとは思っていないが…それほどまでに勝算の高い策でもあるのかね?」

疑う様な目で彼女を見るのは黒い霧と槌田だ。彼女はその視線を悠々と受け流して言った。

「勿論!そのためにも先ず、とある人工衛星を手に入れるよ~。」

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