早計な結論
「貴方を殺す。それしかこの現象を終わらせる方法は無いんです。」
意識が途絶える直前。
聞こえて来たのは突き放す様な、冷たい少女の声。聞き慣れたその声は僅かに悲哀と後悔を帯びていた。
霞む視界に捉えたのは___
___眩い白銀だった。
◇◆
これで良い。こうするしか無い。
そう自分に言い聞かせ、感情を殺し、次の為に路地裏を進む。
夥しい血を流し倒れ伏す燕尾服姿の友人を弔いもせず捨て置いたのは、きっとあらゆる情を捨てる為。
二年。たった二年の付き合いの友人だ。彼を殺せなかったら私は。
恩人を殺せない。
だから。
無慈悲で良い。
冷酷で良い。
自分はどれだけ手を汚しても、どれだけ恨まれても良いから。
どうか、どうかあの人の事だけは___
頬を伝う水滴は打ち付ける雨によるものなのだと言い聞かせた。
__しかし、この覚悟が間違いだった事を後になって知る事となる。
そして、気が付いた時には全てが手遅れだった。
◇◆
篠突く雨の中、薄暗い路地裏で死にかけの同級生を見つけた。
心臓辺りを撃ち抜かれて夥しい血を流す、助かりようのない彼。
__駄目。これじゃ未来が変わらない。
「もう一度、チャンスを頂戴。ここで終わらせる訳にはいかないの。貴方さえ生きていれば、まだ…」
涙を流しながら震える手で瀕死の彼をまさぐる。
持っている筈。
「…無い…無い。……なんで…」
どれ程の間そうしていたたろうか。焦燥に駆られ無遠慮に探す。
すると…
「……あった…!」
ポケットの多い衣装に手こずりつつなんとか目当てのものを探り当てた。
“賢者の血晶”
僅かに神秘的な輝きを放つその宝石は然程強い力は持たない。しかし、今の状況ではこれだけが希望だった。
「…次のループで逢いましょう。今度こそ、上手くやるから。」
震える手を強く握り締めた。
◇◆
二月二十九日。それが全ての終焉の日。
空が赤く染まり暴風が吹き荒れ、世界は混乱の渦に包まれた。
誰もが終わりを確信したその深夜。日付が変わる瞬間に世界は時計の針を戻し始めた。
とある研究所にて銀の門は輝き、ブロックノイズの様に乱れた時計を模った魔法陣はその針を逆転させる。
そして、幾度目かの三月一日が訪れる。




