第5節 冬の静けさ
もう冬か、一年とは早いものだ。そんなのんきなことを考えている場合ではない。今日もいつも通り教室に入り窓から彼が来るかどうかを観察する。
「亮は人格が変わる前は小学校、この学園には無事に来れるのだろうか…」
などと独り言をぼやいていると
「あなた、亮君の心配をしているの?」
凛だった、僕は教室の扉が開いたことにも気づかずに窓を眺めていたのか、今は始業の1時間前正直こんなに早く来る必要はなかったとは思っている。だが今は亮のことが心配でならず
優等生である凛よりもはやく学校についてしまった。
「凛か、おはよう。まあ一応幼馴染だからね、心配にもなるさ」
僕が家を出ようとしたときに凛は居間へ降りてきていた。朝ごはん食べるの早くないか…そんなことを思っていたら
「私も心配で朝ご飯は抜いてきたわ、この学校で変なことを起こされたら困るもの」
と、いつもの冷たい声で心を見透かしたかのように話しかけてくる。
「しかし、こんなに早く来る必要はなかったなー」
とのんきなことを言っていると
「そんなこともないかもしれないわよ」
と校門のほうを指さしながら凛は言った。亮にしては早すぎる、広樹しては遅すぎる、微妙な時間に彼は無事学校にやってきたのだ
時間は始業まで残り20分、僕たちの教室である2年A組のクラスの扉が開く。僕はなぜか息をのんだ、緊張しているのだろうか、いろんなことを考えていたら
「おはよう、拓哉、斎藤さん」
は…?まさか
「ひ…広樹…?おはよう…」
どういうことだ何が起きているんだ、僕と凛はお互い目を見合わせた。そして凛もおそらく同じことを思っているだろう。
「「亮ではなく、これは広樹だ」」
なんでだ…しかも斎藤さん…だと、昨日も記憶も消えている…
「なんだ、拓哉らしくないな、こんなに早く学校に来るなんて」
「お前こそ広樹らしくないな、こんなに遅く学校に来るなんて」
本当に広樹だ…この人は紛れもない…そんなことを思っていた時
「なんでお前、毎日始業の10分前に来てるのに俺が今よりも早くいつも学校に来てること知ってるんだよ」
核心をついた質問だった、やばい、なんていえば…と迷っていた時
「私が勉強を学校で全くしない拓哉君に2位の人間はこんなにも早く来校しているということをおしえてあげたのよ」
少しお兄ちゃんは傷ついたが、ナイスフォロー!凛!輝いたまなざしで凛を見つめると
さげすみの目でこちらを見てくる、わが妹ながらコワイ…そんなことを思っていたら広樹が僕の耳に近づいてくる
「拓哉、昨日、俺凛さんと喧嘩した?全然覚えてないんだけど…」
そうか…あの時からもう広樹ではなかったのか…
「大丈夫だ、斎藤さんとはなにもなかった」
軽くあしらった。兄弟であることは公表したくないのだ、親の関係が複雑で他の人は巻き込みたくないから…
と、そんな話はいいんだ。まずはどうやったら亮を戻せるかを考えるんだ。そうだ、僕は親にあったことがないぞ一春広樹の親に。
今日の放課後凛と一緒に親に会いに行こう…にしてもどうやって凛を誘うかが問題である。
「拓哉、なんか考え事か?」
やばい…広樹の声が聞こえていなかった。
「あはは…ちょっと次のテストが心配でな」
「何だそんなことか、お前にしては珍しいなまあがんばれよ」
これがトップの貫禄かと一瞬感心してしまったが、そんなことを思っている場合ではない。
そうだ手紙で伝えるか
「凛へ
放課後広樹の両親に会いに行こうと思うが、凛も来るかい?
来るなら手紙を渡した後、僕野本に怒りながら来て
「何よこのラブレター、ふざけてるの?」
と言って地面に投げつけてくれ。来ないのであればごみ箱にでも捨ててくれ。
広樹」
これでいいだろう。決してふざけているわけではない。
一度振られるが関係がばれないために必要なものだ。そう自分に言い聞かせながら凛の周りに人がいなくなったのを確認してひそかに手紙を渡した。
朝礼十分前、テスト一週間前だから凛の周りには勉強を教えてほしい奴らが集まっていたが、何とか見つからずに渡すことができた。
その手紙を開いたのが見えた。朝礼が終わった後すぐにこちらへきて
強く手紙をたたきつけ
「何よこのラブレター、ふざけてるの?」
「やっぱり振られるかー」
教室内で笑い声が上がった。だがこれでいい、これで凛とともに広樹の家に行くことが決まった。
広樹とともに行くから一応広樹にも許可をとっておこうと広樹を呼んだ
「何の用だ」
相変わらず冷たい広樹に頼んだ
「今日お前の家に行かせてくんね???」
「は???なんで?」
「そういえばお前のお母さん、話には出てたけど見たことなかったなあと思って、挨拶的な??」
と、ふざけて聞いてみると、数秒間があった後帰ってきた言葉は衝撃的なものだった
「俺にはお父さんもお母さんもいない」
「は…?いやだってお前、、、」
そうしゃべろうとした瞬間凛が入ってきた
「広樹君、ここの数学の問題教えてくれないかしら」
どういうことだ何が起こっていると迷っていた時、凛が紙切れを広樹に見えないように渡してきた。
「
お母さんの話をしていたのは小学生のころ、中学に入るまでに一春家に何かが起こってるわ
」
何かといわれても分からなかった…
「広樹君ここの問題ややこしいから一旦広樹君の家に行ってもいいかしら」
「あ?あぁ…いいけど」
「拓哉君も一緒に勉強するの?」
強引に話を振ってくれた。ナイス凛
「おう…もちろんだ」
変な空気が流れた一瞬の間、その後放たれた言葉をきいて俺は冬を始めて感じたかのような寒さを感じる。
「ずっとおもってたんだが、なんでお前ら兄妹ってこと隠してるんだ」
俺と凛の間をすっと通り抜けるような冬の静けさが二人を襲った。
次のお話がラストになります。
段々シリアスな展開になる3人の世界を最後まで楽しんでください