第2節 愛のカタチ
「私に愛を教えて」
は?こいつは何を言っているんだ、まさか僕と付き合ってほしいという比喩表現なのか?そんなバカげたことを考えていると
「ひとつ言っておくことがあるとするならば、この私の発言はあなたへの告白の比喩ではないから」
はい、振られました。僕は何度同じ女の子に振られないといけないのか…そんなことを考えていると、
「私今好きな人がいるの、だから今まで私が学んでこなかった愛を教えてほしいの」
そんなこと好きな人と勝手にやっていてほしい、この言葉を口に出そうとした瞬間
「私のこのお願いがあなたへの罰ゲームということを忘れないでね」
あぁそういえばそうだったぶっ飛んだ質問すぎてそんなこと忘れてしまっていた
「僕は君に具体的には何を教えればいいんですかね?」
僕は聞きたくもない質問をいやいや彼女に投げかける。
「そうねぇ…まずは付き合うという感覚を味わってみたいの。だから一週間私と付き合って、一応言っておくけどあなたに好意は微塵もないから」
毎回一言多くないか?しかしその言葉を言っていなければ少しでも興味があるのでは?と思ってしまう自分にため息が出る。
「わかりました、じゃあ一週間っていう短い期間だけどよろしくおねがいします。」
そういって握手を求めてみたが
「なんであなたが上から目線なの?これは罰ゲームということを忘れないで」
そういってぷいっと反対方向を向いて体育館を出て行ってしまった。僕の平和な学校生活はどこへ行ってしまうのだろうか、そんな疑問を抱きつつ僕も彼女が出て行った数分後に
体育館を後にした。
次の日いつも通り遅刻ギリギリに学校に到着し自分の荷物を整理していると
「おい、あいつじゃね…」
「そうそう、昨日の…」
ひそひそと話されるのは僕は嫌いだ、なんの話をしているのだろうか、そんなことを思っていると
「おい!ちょっと来い!」
急に唯一の友達である拓哉に屋上へ呼び出された。
「朝から騒がしいなどうした?」
「どうしたじゃねえよ!お前斎藤凛に何したんだよ!」
は?僕はどっちかと言ったらされたほうだが…
「僕の何のうわさが広まっているのか教えてくれないか?」
と聞いた瞬間
「は!?ここまで来てまだとぼける気かよ、斎藤凛にスポーツで勝負して負かして罰ゲームさせたんだろ?!」
どこから出たデマだ、その答えはすぐに出た斎藤凛だ。
「今あいつはどこにいる?」
「教室だと思うけど…仲間内の女子に囲まれてるとおもうぜ?」
何か僕にうらみでもあるのだろうか…そんなことを思いつつ
「教えてくれてありがとう」
その一言だけ言って僕は屋上を後にした
「なんで………」
今拓哉が何か言ったような気がしたがそんなことを気にしている場合ではなかった。
斎藤凛…何が目的なんだ…
斎藤凛の席を見つけた案の定、人がたかっていた
「あ…きたよ…あれだよね広樹君って…」
このひそひそは僕の陰口だったのか、嫌気がさす。僕は斎藤凛の席に普段鳴らさないような豪快な足音を立てながら近づこうとしたがおそらく斎藤凛の仲間であろう女子が前に立ちはだかり
「あんた、何が目的で凛にスポーツで勝負を挑んだの?」
「……はあ、どけ」
今までにないほど怒りはピークに達していた。そんな僕ににらまれた女子はさっきの威勢がうそのように退いていく
「斎藤凛今日の放課後学校横の花壇に来い」
「ふふっいいわよ」
何を笑っているんだこの女はそう思いながら斎藤凛のもとから離れる。ギャル集団は今の僕には近寄れないからと言ってまた陰口を始めた。ん?なんだあの子
ひとり異常なほど慌てている女の子を見つけたがその時はそれに構えるほどの余裕はなかった。いや余裕があっても話せなかったというほうが正しいだろうか。僕は一度深呼吸をして席について自分がすべき勉強に取り掛かったがあまり集中はできていなかった。この原因は考えずともわかった。あの女のせいである。僕が勉強に集中できなくなるほどまで斎藤凛という女は邪魔をしてきていて一周回って尊敬までしていた。と、そんなくだらないことを考えていた時ふと思い出した。
そういえば拓哉が帰ってきていない。まだ屋上にいるのだろうか、ホームルームはあと2,3分で始まってしまうぞ…そんな心配もつかの間担任の先生が教室に入ってきた直後に拓哉が浮かない表情で教室に入ってきた。ぼくはそれも気になりはしたものの斎藤凛のことで頭がいっぱいになってしまっていた。考える余裕を担任の先生が与えてくれるわけもなく
「ホームルームを始めるぞー」
という陽気な声が教室に響き渡る。僕は今日一日集中して授業を受けることができるだろうか、いやできるはずがない。だが授業は受けないといけない、といろいろなことを考えていたらホームルームは終わっていた。僕は今日一日をどうやってやり過ごそうかと考えていたら一減の予冷が鳴った。僕にとってこの予冷は波乱な一日の開幕のゴングにすら聞こえた