第1節 桜散る
花が散った後の桜の木の下で僕、一春広樹は出会って一度も話したことがない同じクラスの女の子、斎藤凛に、
「突然呼び出してしまってすみません僕、凛さんのことが好きでした。」
と思ってもないことを言ったなぜ僕がこんなバカなことをしているのかそれは今日の昼休みまでさかのぼる
高校で初めて出会った友人、天野拓哉と会話をしながら数学の問題集をしていた時のことだ。突然拓哉が
「じゃんけんしようぜ」
と言ってきたところから始まったのだ
「なに?急に、僕は君みたいな暇人に付き合っている暇はないんだけど」
と数学の問題を解きながら拓哉を軽く一蹴すると
「はあ、相変わらず乗り悪いなそんなんだから彼女の一人もできねぇんだよ」
とあおり口調で言ってきたがそれを気にするわけでもなく僕は数学を解き続けた。すると拓哉から
「おまえがじゃんけん勝ったら何でも言うこと聞いてやるからさぁ頼むよ」
はぁそういう魂胆か
「それは裏を返して言えば僕が負ければ君の言うことを聞かないといけないということにもなるよね?」
と聞くと拓哉は胸を張って
「さすが天才。話が早くて助かるよ~」
じゃあこの賭け事なおさらやりたくないな、その言葉をぎゅっと胸の奥にしまい込み
「わかった、やろうか」
僕はためいきまじりに言い放った
「いいね!じゃいくぞ…じゃんけん…」
ぽん!その言葉が聞こえた瞬間僕はとっさにグーを出してしまった。もちろん、そんな馬鹿な判断をしてしまった僕がじゃんけんに負けた。
「はっはっは!グーなんて自分から負けに行ってるようなもんだろ」
僕はじゃんけんであおられ少しイラついたが
「僕に何を願うんだ?君はイケメンだし、スポーツもできるそれに、それなりに勉強もできる。
現にここ有名私立校不羈学園で学年ランキング上位10位には入れていて僕に願うことなんてないだろ。」
「はっ、丁寧に紹介ありがとよ、不羈学2位一春広樹君。お前の恥かく姿を一度見てみたいんだよ」
また馬鹿なことを頼んでくるんだろう、そんなことを思っていると
「この学園で一番の人気者、容姿端麗、成績優秀彼女にあこがれを抱かない女子はいなく、
彼女を好きにならない男子はいないとまで言われている斎藤凛に告白してこい,ああ雰囲気づくりのため桜の木の下でな!もう花はねぇけどw」
はぁやはりそんなことかと心の中で呆れつつ
「約束は約束だ、わかったよ。」
「じゃあ今日の放課後に決行な!!」
何が面白いのか僕には理解できなかったが罰ゲーム告白なんてアニメでは許されている行為だが現実でやるなんてばかばかしい、適当に終わらせてしまおう。
とこのように自分の中で今あった出来事を完結させ、問題集の続きを始めようと思ったら5限が始まる時間になっていた。はぁ、とため息を吐き5限の準備を始めた。
こんな罰ゲームが待っていたら普通は授業にも集中できなくなるのだろう。しかし僕は自分でも驚くほど授業に集中できた。
そのまま淡々と時は流れ7限が終わり帰りのホームルームも終わった。
そして告白の時、僕は少しもドキドキしなかった。僕は才女である彼女との初会話が散った桜の木の
下への誘いだということを心から後悔しつつ、
「凛さん、この後桜の木の下に来てくれませんか?」
普通は事前に誘っておくべきなのだろう。しかし彼女の周りにはすべての休み時間、人が寄ってたかっていたためこの時間しかなかったのだ。
「いいわよ。少しやらなければならないことがあるからそれを終わらせてから行くわね。」
あれ?断られると思ったんだがあっさりとOKをしてくれた。僕は春の気持ちのいい風が吹いている中桜の木の下で彼女を待った。
「ごめんなさい。待たせたわね。」
本当に来てくれるとは…そんなことを思いつつ今に至るというわけだ。
「突然呼び出してしまってすいません。僕、凛さんのことが好きでした。良ければ僕と…」
付き合ってください。そういう前に僕には興味がないかのように僕の左側に視線をそらしそらし、そらした先を一瞬にらみつけ、こう言い放った
「嫌よ。」
こんなにきっぱり断る人なのか、と思いつつ
「ですよね。こんなことするためだけに呼んですみません。じゃ僕は教室にカバンを置いてきてるから教室に戻りますね。」
そういって彼女に背を向けた途端僕の手をぐっと引っ張り顔を近づけ耳元で
「一時間後、一人で体育館に来なさい」
そう言った後に僕を突き放し
「ああそう、気をつけて帰るのよ。」
と人格が変わったかのようなやさしい声で僕に言ってきた。
・・・・ぼくはそのまま教室に戻った。なぜ一時間もまたされなければならないんだ。そんな疑問を抱きつつ僕は昼休みにやっていた数学の続きを解き始めた。
数学を解き始めてしばらくたったころ、教室の扉が豪快に開けられた。僕は一瞬びっくりしたが開けた人を見た時になんだお前か、と思い
「そんなに強く開くとドアが壊れるぞ」
と冷静さを取り戻した後にドアを強く開けた本人である拓哉にそう注意した。何か怒っている様子で上履きの音を鳴らしながらこちらに近づいてくるやいなや
「お前、告った後耳元であいつになんて言われた?」
と、僕に問うてきた。なんだ、こんなに怒って、告白が成功したとでも思っているのだろうか。なぜ拓哉が怒る必要があるんだ。
そんなことを考えている時にふと思った、あれから何時間たったんだ?あ…まずい。数学に夢中になりすぎて彼女との約束を忘れてしまっていた。
「なに黙ってんだよなんとか言えよ」
どうやって拓哉をかわそうかそんなことを考えていると廊下から誰かが歩いてくるような音が聞こえてくる。この軽い足音先生ではない。誰だ…?
その足音は僕の教室前に来たら止まり、聞き覚えのある声で
「やっぱりあなただったのね」
と言ってきた。その声の正体は斎藤凛だった。
「なんのまね?天野拓哉君」
冷たい声で拓哉にそう言い放つと
「なんでおまえばっかり」
ぼそっとそんなことを言うや否や拓哉は早々教室をでていった。
「体育館に来い、といったはずだけど?」
なんでそんなに怒っているのか、そんな疑問は彼女の声から出される圧により消え失せた
「数学をしていたら時間の感覚がなくなっていた」
なんて馬鹿なことを言っているのだろうか。そんなことを思っていると
「あなた、馬鹿なの?」
ぐうの根も出ないことを彼女に言われてしまい
「一応君の1個下の人間なんだけどね…」
ととっさに思い付いた言葉を並べてみたが
「馬鹿なことを言った自覚はあるみたいでよかったわ。あなたみたいな人が2位なんてこの学園の未来が心配ね」
冷たさは変わらないな、そんなことを思っていると
「なんであの男とつるむの?」
と僕に問うてきた
「彼が面白いから…だけど…」
そう、彼が面白いからつるんでいる。それが外向けの理由だ本当の理由は●●●だというのにいつもうそをつく自分に心底あきれる
「彼を面白いと感じるなんてあなたどうかしてるわよ」
なぜ彼女は拓哉に対してこんなにもあたりが強いのだろうかこれを聞こうとした途端
「早く体育館に行きましょ」
…?斎藤凛、勉強は一人前だが運動でいいうわさは一つも聞かないが…
「なんで体育館に行くんだ?」
率直な疑問を彼女にぶつけてみたすると
「バスケをしましょ。そうねぇ…ルールは一対一、5点先取、先行はあなたでいいわ」
ちょっとまったなぜバスケをする前提で話されているんだ
「あなたどうせこの後暇なんでしょ?」
暇じゃなけりゃ教室で一時間も待っちゃいない。そんなことをおもいつつ、
「凛さん、運動でいいうわさは聞きませんけど」
そういってみると
「何?そんな私に負けるのが怖いの?あなたの得意な競技にしてあげたのだけれど」
なんだこの女、煽るのもうまいのか
「そんなわけないだろ。きみを負かすのが申し訳ないだけだ」
そう煽り返すと
「わかったわ。そんな感情試合が始まった瞬間一気に消えると思うわ。じゃあ始めましょ」
この勝負は賭け事なしの真剣勝負なのかそんなことを思っていると
「もちろんあなたにメリットはあるわ。あなたが勝てばあなたの願いを一つ聞いてあげる」
「それは裏を返して言えばあなたが勝てば僕があなたの言うことを聞かないといけなくなりますよね?」
前にも誰かとこれと似たような会話をしたな。そんなことを思っていると
「メリットがある試合はデメリットもあるのよ。覚えておきなさい。」
僕は彼女に拓哉との関係を聞きたい、しかし、
「君は容姿端麗、成績優秀、非の打ちどころのない完璧人間、僕に願うことなんてないんじゃないのか?」
と聞くと
「あるから勝負を挑んだのだけれど」
そりゃそうだ。そんなことを思っていると
「さっきも言った通り、ルールは一対一、5点先取でいいわね?」
とご丁寧に確認をしてきた
「あぁそれでいいよ」
そして試合が始まった
試合は僕の圧勝…と思っていたのだが彼女は僕の予想をはるかに超えてきた
圧倒的なドリブルセンス、そして僕が一番得意とするエリアを徹底的にマークされ5対0と完敗だった。
「はい、私の勝ちね」
「なんでスポーツができるのにみんなの前では隠すんだ?」
率直な疑問を荒い息とともに出すと
「勝ったのは私よ?なんであなたが質問しているの?」
そんなことを言われると思っていた。どこか拓哉と似た雰囲気を感じる。
「そうねぇまずは…」
まずは?ちょっとまった僕は複数個質問されるのか?そんなのごめんだ
「複数個質問するのはなしだぞ?」
「何よ面白くないわね。じゃあなぜ拓哉君との何らかの勝負の罰ゲームで私に告白したのかということはいったん置いておきましょうか」
「なっ…!?わかっていたのか」
どこからばれていたのだろうかそれは一瞬で分かった。おそらく彼女は最初から分かっていた。だから拓哉が隠れていたくさむらをにらみつけたのだろう
「あんな罰ゲーム簡単に受けちゃだめよ。あなたも傷つくしやられた人も場合によっては傷つく」
やはり彼女は思いやりの心はあるのだろうか、そんなことをおもいつつ
「ごめん、君に不快な思いを…」
させてしまった。その言葉が出る隙は一瞬もなく
「いいえ、私は全く傷つかなかったわ。あなたは思い人ではないから」
あぁなんで僕は一日に二度も同じ人に振られなければならないのだろうか。そんなことを思った。
「で、僕への願いは?」
「あぁそうだったわね。あなたへの願いは…」
どうせろくな願いじゃないだろうと思った
「はい、なんでしょうか」
「私に愛を教えて」
散ったはずの桜がまた散り始めたかのような春風のにおいが僕の横を通り過ぎ、また僕の前で桜が散った。