第10話 先生の潰し方
ガチの本気でギリギリ間に合いました。
なんで自分でも間に合ったかよく分かってないけど。
というか、先生来るの遅くないか?
前世の学校もそうだったけど、遅刻に厳しい先生ほど遅刻するよな。
教師としてそれはどうなのだろうか…まぁ俺が考えても仕方ないか。
そんな事を思いながら何も考えずに横を見た。
俺の目に入ったのは、怯えている人達だ。
なんで怯えてるんだろうか。さっきまでは普通の学生だった。全員が怯えているなんて、だいぶおかしいと思うのだが…
そんな事を考えていたら、扉が勢い良く開いた。
勢い良く開いた瞬間、怯えていた生徒たちの中には、震える人もいた。
なるほどな。この先生が問題ってことか。
でも、どんな問題を起こしているのか、まず問題を起こしているのか。
これが分からないからどうしようもないな。
「よーし。じゃあ授業始めるぞー。今日の授業は…魔術か…お前ら、今魔術のキューイ先生が来てないから、来るまで自習でいいぞー」
…最初の授業が自習とは…まぁいっか。
「んじゃあ前の時にやった魔術、剣術テストの評価返すぞー」
そんなのあったのか。テストみたいな感じなのかな。いやー、テストとかそういうのは嫌いだからやめてほしい。
「まず1番、アスモ・シャルト、来い」
アスモシャルトか。かっけぇな名前。
コスモみたいで。
「お前、今回評価低かったな?サボってたのか?」
あれ、よく見たらアスモさん、泣きそうになってないか?
大丈夫なのだろうか…
「い、いえ…家の面倒事に巻き込まれてしまいまし…ッ?!」
アスモさんの言葉は先生がアスモさんを殴ったことで途切れた。
は?何してんだあの先生。もしかして…生徒に暴力を振るうことがOKなのか?ここの世界?
「てめぇ、言い訳してんじゃねぇよ。次満点じゃなかったら、火魔術で炙ってやるからな」
おいおい、流石に言い過ぎだろう。
大人がそんな暴力とか脅しで解決していいものなのか?
「おいぐずぐず泣いてんじゃねぇよ。なんだ?今やってほしいのか?」
「やっ、やめてください…俺は…っ!」
アスモさんはまた殴られた。
なんなんだあの教師は。
「俺に口答えする気か?俺はメイグリッド家当主の息子だぞ?逆らえばどうなるかなんてわかるよな?」
「ぐすっ…はい…わかってます…」
「それでいいんだよ。次逆らったらお前の家族もタダじゃおかねぇからな」
怖い。怖すぎる。
あんなんと毎日過ごさなきゃならないのか?
あ、今わかった気がする。
みんなの俺を見る目は、期待の眼差しではなかった
それは、この先生をどうにかして止めてほしい。
懇願の目だった。
どうせこいつは止められない…と思っている目をしていた人もいる
今、このクラスを助けれるのは俺一人だ。みんな逆らえばどうなるのか。それが分かっていれば、誰も先生に手なんて出せない。
今、ここで俺がこのクラスを救わなくちゃいけない。
そんな気がする。
「すみません、先生に少しお話があるのですが…」
「あ?なんだテメェ…見ねぇ顔だな…新入生か?」
「はい。今日から入ってきたものでして」
「ほぉ〜。俺のクラスに転入生なんて、5年振りくらいかもなぁ。まぁいい、よろしくな」
そう言って先生は手を差し伸べた。
そして俺は満面の笑みで、
「あなたとの関係はここで終わらせますよ」
先生の腹をグーパンした。
「ぐふっ?!」
先生も驚いているようだ。
権力があれば自分は狙われないと思っていたのだろう。
その油断が命取りさ、へへへ。
「皆さん。この先生に恨みがあるんじゃないでしょうか。今ここで、やり返さなくていつやり返すんですか?」
クラスの人全員に聞こえるよう大声で言った。
クラスの人達全員が立ち上がり
「この機会を作ってくれてありがとう!私達、ずっとやり返したいと思ってたの!!」
「そーだ!ずっと思ってた!覚悟しろよ!」
「よし!皆さん行きますよ!!」
「「「おぉぉぉ!!」」」
一気にクラスが団結した。
「くふっ…お前ら、逆らえばどうなるか、分かってやってんだろうなぁ?!」
「ええもちろん。分かっていてもあなたにやり返したい人が大勢いるんですよ。俺は一人一人の情報は知りませんし、俺の見てないところでどうなろうが知ったこっちゃありません。ですが、俺の目の前で傷つけられている人を見ると、自分も腹が立ってくるんですよ」
「いっちょ前に言いやがって!覚悟しろよ!お前ら全員っ…俺の権力で社会から抹殺してやるからなぁ!」
先生は小物のセリフを吐きながら、どこかに行ってしまった。
「…俺達の勝利です!!!」
「「「やったぁぁぁぁ!」」」
俺の学校生活初日は、先生を潰すところから始まった。
アスモ・シャルト 男
先生 メイグリッド家の当主の息子 男