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第九話:我らが帝国軍に、弱点はない。

「で、全部話してもらいますよ。」

「ごめんなさい……。」

 

 あれからというもの、今までとは一転、ここねはとてもしおらしくなってしまった。

 それもまだ戻らない髪の毛の色と関係しているんだろうか。


 「それに、ドラさんは知ってたんでしょ?」

 「…………すまない。」


 はぁ、結局俺だけ何も知らずに使われてたのか……。


「その、まず、ね。あのダンジョンにはアルグラさんって竜人族の方がいたでしょ?」

「まず竜人族を知らないんですが……。」

「ええと、竜人族っていうのは、ドラゴンと人のハーフのことね。アルグラさんはドラゴンの血を強く引き継いでいたみたいだけど。」

「ふーん。」


 何言ってるかよく分かんないけど、そういう人だってことね。


「それで、そのドラゴンの力を戦争に使いたくて呼びに行ったわけね。」

「……うん。」

「なんで戦争なんかするんだよ、人を殺しても意味ないだろ。」

「そうだね……。」

「ここねも…………参加するの?」

「うん。」

「……俺は?」

「出来れば、力を貸して欲しい。」

「なんでそこまでここ、二番街のために働くの?何もしなくても生活させてくれるでしょ!」

「違うの。」

「え?」


「私、元の世界に帰る方法を知ってるの。」


「…………!」


「今は教えられない。でもそのためには王国との戦争に勝つ必要があるの。」

「ドラさんは、全部知ってたの?」

「あぁ、ここね殿の、いや実はこっそり勇斗殿のステータスも覗かせていただいた。」

「…………。」


「…………ちょっと、考えさせて。」


 元の世界には帰りたい。

 でもなんで帰り方を知ってるんだ?

 ずっと思ってたけど、ここねはなんだか底知れなく不気味だ。

 まだ、信用に値しない。

 

「で、髪の毛の話だっけ?これは実は私もよく分かんないんだけど少し心当たりはあって……。」

「ん。」

「まぁ、そのうち、そのうち話すよ!」

「駄目です。」

「ふぇっ、だめなの!?」

「駄目です。今話して下さい。」

「こまったなぁ……。」

「……分かりました、ここねさんが話しやすいタイミングでいいですよ。ただ、いつか絶対話して下さいね。」

「…………!ありがとう!」


「そろそろ夕食の時間です。いきましょ?」

「うん!あ、あとゆーくん。」

「はい?」

「また、敬語に戻っちゃってるよ!」

「あっ!ごめっ!」

「あははっ!私、色々準備してから行くから、先行ってて!」

「うん!」



 ――――――――――――――――――――――――――――――


 「はぁ…………。随分と悪趣味なことするね。」

 

 自分の、元の色に戻った髪の毛をときながら大きくため息を付いた。

 

 「ステータス。」

 

 愛用する木刀に向かって喋りかけると、いつものようにウィンドウが現れた。


 ・木刀  レベル:89

 

 ・殺害数:753

 

 ・攻撃力:89


 でも、もう後戻りはできないよね。

 

「ここね~、夕飯の準備が整いましたよ~。」

「あっ、ライザさん!了解です、すぐ向かいます。」

 

 いつからライザさんも私のこと呼び捨てするようになったんだろ……。



「ここね殿、ちょっといいかね。」

「……?なんでしょうか。」

「王国との件で少し話したいことがある。後で私の部屋までに来てくれ。」


 戦争の話かな、あんまり乗り気じゃないけど、帰るためにはやるしかない。


「分かりました。ゆーくんは居ないほうがいいですか?」

「ああ、よろしく頼む。」




 

「失礼します。」

「どうぞ。」

 

 重々しい扉をノックすると奥から声が聞こえた。


「ども、昨日ぶり?」

「アルグラさん?」


 あんた普通に喋れんのかい!


 「昨日の返事でもしようかと思って。」

 

 部屋に入ると、ドラさんとアルグラさんが二人でテーブルを囲んでいた。


「失礼します。」

 

 私も椅子に腰掛ける。


「それで、アルグラさんはこのお話、協力してくださるんですか?」

「あぁ、いいよ。どうせ暇だしね~。もうドラさんとは話したけど。」

「うむ……。実は早速なんだが、王国が帝国に対し攻撃を仕掛けてきたとの情報が入った。」

「随分といきなりですね。」

「恐らくこちらの動きに気づいたのだろう。帝国の管理下の村が既に占領されている。」

「でもそれって帝国じゃなんとかできないんですか?」

「……恐らくだが、ここね殿と同じようにこの世界にやってきた人間が、王国側についている。」

「なにか証拠はあるんですか?」


 ていうかアルグラさんに転移してきたって言って大丈夫なのか。


「年はここね殿と同じく15,6歳で、とても人間業とは思えないスキルを操るらしい。」

「それは怪しいですね……。因みにどんなことをするんですか?」

「そいつが触れたものが全て爆弾となるらしい。」

 

 吉良〇影さんかな?


「たまに時を巻き戻したりしません?」

「そんな神のようなことはできないと思うが……。」

「いえ、何でもないです。で、それを確かめると同時に退治してほしいと。」

「うむ、最悪殺しても構わない。」


 流石にそんな物騒なことはしない……よね?


「あの~、私は?」

「アルグラ殿には周辺にいる王国兵士の殲滅を頼みたい。」

「りょ~かいっ。っていうかずっと思ってたんだけど、ドラさん?はそんなにぽんぽん人を動かせるほどエラい人なの?」

「まぁ、一応、二番街最高責任者権、帝国軍部上級大将を務めさせて頂いてる。」

「ふ~ん。なんかすごそうだね。」


 なんかすごいってか、上級大将って2番目ぐらいに偉い階級じゃなかった!?

 まぁ、あの規模の研究施設を管理してるならやっぱりすごい人だったのか……。


「決行は4日後、それまでに各々準備を整えていただきたい。」




「というわけなんですが……。」

「僕にも参加しろって?」


 うぅ……、明らかに嫌そうな目でゆーくんが訴えかけてくる。


「えっと、参加はしなくてもいいんだけど……手伝ってほしいなって。」

「具体的には?」

「それは、ゴニョニョ…………。」

「そのくらいなら……。」

「ありがとう!恩に着るよ!」




 ――――4日後……。


「あっ、アルグラさん!ここで~す!」

「あっ、いたいた!」


 ――ばさっ、ばさっ、どしーん!


「げほっ、あぁっ、はっくしょん!」


 もっと優しく着地して下さい!

 てかあなた飛べたんですね、完全にドラゴンじゃん。


「どれ、準備はできてる?」

「はい、帝国兵士の方々ももう反対側で待機されているそうです。」

「はぇ~、やっぱりその板みたいなので連絡取れるの?」

「えぇ、これで写真取ったり遠くの人と会話したり出来るんです。」

「やっぱりなんでもできるんだなぁ、あそこ。」

 

 そう、二番街が開発した道具にはスマホと酷似したものがあった。

 って言ってもインターネットは使えないけどね。

 逆にいえばそれ以外はだいたい使えるってことだ、つくづく帝国の技術力には驚かされる。


「……。それじゃ、行きますか!戦争!」


「……はい。」

 

 

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