第七話:人生はローグライクダンジョンや!
「よし!俺、決めた!ダンジョン、行くよ!」
「え、まじで!?」
ここで暮らし始めて一週間。
だんだんここの世界の常識にも慣れてきた。
普段は二番街の研究してるもを見て遊んだり、アリザさんとお話したりして過ごしてたんだけど……。
ここ最近は刺激が足りなくてつまんない!
早く元の世界に帰ってワソピーヌ読みたいんだけど!って感じ。
あ、でも、ドラさんから面白いもの教えてもらったよ。
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「え、私でも魔法が使えるんですか!?」
「いや、実際はそう簡単じゃない、魔法の習得自体にはかなりの時間を要するからな。」
「でも今使えるって!」
「まぁ落ち着いてくれ、まず、魔法というものは精神力を削りながら発動する。レベル0のここね殿では一生かかっても無理だろう。」
「そんなぁ……。」
「しかし、魔法が使えるものが作ることのできる[魔石]なんてものがあってな。それは魔法を発動する以上の精神力を削りながら生成することが出来、それを手のひらでパキッと割るだけで魔法が使える。所謂インスタント魔法だ。」
「でも、お高いんでしょう……?」
「もちろん、魔法を行使できるものだけでも少ない上に魔石を生み出せるのなんてほんの一握りだからな。」
「でも今なら……?」
「残念ながら、うちにあるものはどれも非常用、かつ強力すぎるものだからお渡しはできない。しかし、面倒なことをしなくても手っ取り早く手に入れる方法を知っているだろう?」
「…………ゆーくん?」
「えっ、僕?」
隣でメダカの鑑賞をしてたゆーくんに火の粉が降りかかる。
「僕、経験値上げなんて行きませんよ。」
「何故?そのような強大な力を持ちながら何故行使したがらないんだ?」
「僕はあんまりそういうの好きじゃないんですよ、しかも命を奪ってまでしたくありません。」
「それは、無害な野生動物に限った話だろう?」
「え?」
「ここの近くには誰も近寄らなくなってしまったダンジョンがある。……といっても現在は二番街の管理下にあるが、殆ど手を付けていないと言ってもいいだろう。そこにはたくさんのモンスターが生息している。モンスターたちはたまに村まで降りてきて人を襲うんだ。もちろん、村の警備隊が監視して入るがそれでも被害は出る。どうだ、あくまで村を守るための殺戮行為だ。」
「行こうよ!ダンジョン!めっちゃ楽しそうじゃん!」
「…………。ちょっと考えさせて下さい。」
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そして二日後、冒頭に至る。
「てか、ゆーくん俺なんか言うんだ。」
「え、あぁ、考え事してるとつい……。」
「よぉし!思い立ったが!吉日!!!」
「でも流石にもう今夜の8時だし、明日にしよう。」
それもそっか。地下籠もりしてると時間の感覚がなくなって困る。
「じゃ!明日7時集合!お休みっ!」
「あっ、ちょ!」
ゆーくんが自分から動いてくれるなんて思ってもみなかった。
もうちょっと時間がかかるかなと思ってたけど、自分の中で踏ん切りがついたんだろう。
まぁ、どちらにしろ好都合。
この一週間、基礎能力を上げる訓練をしてた。
私のスキル、武具能力上昇はどんな武器でも2倍、3倍ぐらいの威力にまで上昇する。
防具やアクセサリーも同じようにだ。
だから、元がへなちょこな私でもある程度動けるようにはなった。
それでもレベル10くらいらしいけどね。
ゆーくんは…………取り敢えず銃で遊んでたから行けるっしょ!
「あっ、ルドルフさーん!」
「おぉ、ねぇちゃん!それに坊主!生きてたのか!」
「お陰様で……。」
私を村に案内してくれたルドルフさん、いつもは村と平原を隔てる門の前で警備をしてるらしい。
「どこまで行くんだ?」
「えっと、この近くのダンジョンまで!」
「そうか……二人で大丈夫か?」
「もちろん!ねぇゆーくん!」
「え、あぁ、多分……。」
「…………まぁ、ここだけの話だが、二番街から色々もらってるんだろ?大丈夫だとは思うが。」
ルドルフさんもあそこの息がかかってるのか。
「まぁ、行けばなんとかなりますんで!」
「おう、気をつけろよ。何やらドラゴンもどきみたいなのもいるらしいからな。」
なにそれ、逆に見てみたいわ。
「ここ……であってるのかな?」
ドラさんからもらった端末で地図を見ながら来たけど、ただの洞穴みたいのしか見当たらない。
「もっと、こう、遺跡!みたいなの想像してたんだけどなぁ。」
「まぁまぁ、入ってみようよ。」
お、前よりずっと積極的じゃん、嫌いじゃないよ。
ダンジョンの中はずっと薄暗く、何がなんだかわかんなかったけど。
内装は遺跡っぽくてテンション上がった。
「あっ、なんかいたよ!ゆーくん!」
「えっほんとだ。なんだろこの生き物。」
「ゴブリンじゃないかな。なんか緑色だし。」
「グギャァァ!」
うおっ、好戦的だなこいつ。
「ゆーくん!撃って!」
「う、うん。」
――ダンッ。
放たれた弾丸は見事頭を貫き、即死だった。
「やるじゃん!」
「…………。」
ゆーくんの手は震えていた。
「大丈夫。こいつらは害獣だから。あくまで私達がやってるのは駆除。分かった?」
「……うん。ごめん……大丈夫。行こ。」
それからダンジョン探索は順調に進んだ。
ていうか、全部ゆーくんにやらせてたんだけどね。
だって私がやっても意味ないじゃん。
おかげでだいぶレベルは上がったみたい。
スキルを使うのは帰ってからっていうお約束。
「あ、なんか新しいスキルもらえたよ。」
「え、なになに?」
「うーん、「鑑定」だって、あんまり使えないかも。」
「いや、なんか物作るときに使うでしょ!良かったね!」
「……うん。」
どうやら結構メンタルやられてるっぽい。
「一回帰ろっか。」
「うん。」
進んできた道を引き返そうと振り向いたとき、もうそこに道はなかった。
「え!?なにこれ!?」
「うーん、多分閉じたんでしょ。物音一つなかったけど。」
さすがダンジョン、このくらいの仕掛けはないとね。
「どうするの!ねえ!」
「どうするって、進むしかないでしょ。」
「もうやだよ!なんで……。」
「大丈夫、私もいるでしょ?」
「………………。」
二人共無言のままダンジョンの奥へと足を進める。
ひたすら、ひらすら殺して回った。
そうして1時間ほど歩いた頃。
「これは……。」
「おっ、ボス戦じゃない?」
今までとは明らかに雰囲気の違う扉。
その奥からはかすかに物音が聞こえる。
「……失礼しまーす!」
「あっ、ちょ!」
――ようこそ。
「うわっ脳に直接っ!」
――驚かせてしまったか?すまない。
そんな声とともに奥から何者かの影が見えた。
「あっ……。」
――こんにちは。
うわっ、高身長イケメンだ!2mぐらいある?かっこいい!
「こんにちは!お名前なんて言うんですか?」
――アルグラという。ちょっと待っててくれ、今お茶を入れるところだ。
「ここねっていいます!お茶、大丈夫ですよ!」
――そうか、ではこちらに。
そういうとアルグラは椅子に腰掛けた。
「ゆーくん。」
「ん?」
「撃って。」
「は?」
「撃って。」
「なんで!友好的じゃないか、一回話しを聞こうよ。」
「撃って。」
「だかr……うわっ!」
もういい。
――ズギャーンッッ!!!
私はアルグラに向かって容赦なく引き金を引いた。
――なるほど。会話の余地はないですね。
音速を超える弾丸を軽々と躱したアルグラは笑っていた。