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第六話:貝細工

「いやぁ、なんとかなってよかったね!」

「……………………。」

「あ!レベル上がった?早くスキル使おうよ!」

「……………………。」

「どうした?もしかしてまださっきのにビビってるのぉー?」

 かわいいなぁこいつ。

「……あなたは……なんなんですかあなたは!」

「んえっ?なになに?なんでそんな声出すの。」

「目が覚めたらこんな訳の分からない世界で!皆訳の分からないことを喋ってるのに、なんで貴方はそんなに冷静なんですか!挙句の果てには銃を使って躊躇いなく動物を殺して、それなのにずっとヘラヘラしてて、正気じゃ無い!」

「あのねぇ……。」

 正気じゃ無い、か。

 確かにその通りかもね。

「っ……。ごめんなさい。言い過ぎました。一度帰って頭冷やして来ます。」

「……。」


  ――――嫌だよお父さん!やめてよ!


  蘇る懐かしい記憶。

 そういや長いことお父さんと会ってないな。

 ()()が終わったら少しお話したいな。


「ただいまーっ!」

「おかえりなさいませ、ここね殿。」

「あっ、ライザさん!ゆーくんは?」

「今は自室でお休みになられてるかと。先にお風呂へ入ってしまわれたらどうですか?」

「あっ、ゆーくんは入浴中なのね。じゃ、部屋にいるから。」

「ちっ…………。」

 まだ会って1日、2日程度なのに何考えてるか理解できるようになってしまった。

「研究室の方行っていい?見せてほしいのがあるんだ♪」

「もちろん、いつでも歓迎しますよ。」 


 私が使わせてもらってる部屋の角にもエレベーターみたいなのがついてて、いつでも二番街へは出入りできる。


「ドラさーん!」

「あぁ、ようこそ。勇斗殿は一緒ではないのか?」

「疲れて休んでるって!それより例の物見せてよ!」

「あぁ、ここね殿と勇斗殿の分それぞれ用意させていただいた。」

「さっすが!お仕事速いですねぇ。」

「あまり性能の良いものではないが、生活する上で困ることはないだろう。」

 

 昨日探索してるときに研究員さんが使ってるの見たときはめっちゃびっくりしたんだ!

 だって、私と同じくらい大きいくらいのプレートをズボンのポケットから取り出すんだもん。

 びびびってきたけど、ドラさんによると、このポケットはものを入れるときに小さくしてるらしいから、原理としては青狸ポケットとは違うらしい。

 今回用意してもらったのは腰につける巾着袋くらいのサイズ。

 これでも私一人はいるらしいからここの技術力はやはりレベルが違う。

 唯一の欠点は質量が変わらないから、あんまり重たいのは私が無理ってことだけ。

 そしたら、あのポケットからプレート出したおじさんは実はムキムキだったのか……。

 

「因みに、ずっと思ってたんですけど、袋が破けるとどうなるんですか?」

「出入り口を通らなければ大きさは変化しないから、小さいままばらまかれることになるな。」

「へぇ〜。」

 青狸ポケットも破けたら全部一気に出てくるんだろうか、そしたら一瞬で押しつぶされて死にそうだけど。 

 


「ぬぬぬぅ……どうしたものか……。」

「どうなされたんですか?」

「あ、ライザさん。そういえば言ってなかったけどゆーくんと喧嘩したんですよね。」

「出会って一日で喧嘩とは流石ですね。」

「出会って二日で皮肉とは流石ですね。」

「いえ、それほどでもww」

 殺すぞ。


「で、何したんですか?」

「なんかイノシシ殺したら拒絶された。」

「イノシシなんてどこにでもいるのにねぇ……。」

「いや、そういう問題じゃないでしょ、きっと命を奪うのに抵抗があったんじゃないかな。」

「ここね殿はないのですか?」

「ないよ。微塵も感じない。」

「それはそれで大問題でしょう。」

「…………まぁ、取り敢えず謝ってくるよ。あ、そういえば、教えてほしいことあるんだ。」

 

「ゆーくんこっちこっち!」

「ちょっと!っ……もっとっ……ゆっくり行ってください!」

「ここ広いからねぇ、置いてかれると二度と元の場所には戻れないよ!」

「そんな、わけ、ないでしょう…………。」

 体力ないなぁ、やっぱりレベルアップさせなきゃ何もできなさそう。

「ほら!ここ!」

「え、あぁ……………………。」


 広がる満天の星空。

 丘の上に立ってるこの屋敷からはモンスターの住む平原が一望できる。

「見つけたんだ、すごいでしょ。」

「……綺麗です。」

 さっきライザさんに教えてもらっただけだけどね、それは内緒。

「その、さっきはごめんね。私も少しテンションが上がると周りが見えなくなるタイプといいますか……。」

「いえ、僕も言い過ぎました。あそこで殺してくださってなければ二人共死んでいました。正しい判断だったと思います。」

 二人の間に沈黙が残る。

「…………ねぇ、敬語やめてよ、そっちの方がいいでしょ?」

「いや…………うん、分かった。よろしくね、ここね。」

「呼び捨ては許可してないよ?」

「えっ、あっ、ごめんなさっ……ごめん!」

「只今から許可します!、っ……はははっ!」

「……っはは!ありがと!ここね!」

「うん!」


 ――まだ、まだその時じゃない。


「あっ、そういえば!これ、ドラさん達に作ってもらったんだ〜。」

「へぇ、なにこれ。」

「手、入れてみ。」

「うん……おわぁ!」

「おらぁ!」

 ゆーくんが手を入れた瞬間にそのまま袋の中へと押し込む。

「ちょっと!なに!おーい!」

 おぉ、ちゃんとちっちゃくなってる……。

 かわいい!

「出るよ!……おいしょっと……うぁぁぁ!」

 ゆーくんが袋から出てきた瞬間に勢いで転げ落ちてきた。

「あはっ、あははっ!なに、それ、!やばいっ。」

「もう!なんなんだよ!…………っふ。」

「あ、今自分でも笑ったっしょ!」

「笑ってませ、笑ってない!」

ふと、夜空に視線を向ける。


 まるで、友達、みたいだね。

 いつまで、友達なんだろうね。

 一人だけどこかに行かないでね。

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