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94.上級生達の実食

「あらあら、食べてくれるのではなくて?

せっかくここにいた女子で力を合わせて美味しくなーれと想いを込めて作ったのに、公子に無駄にされてしまうのね」


 悲しそうな顔をしてみせれば、金髪ちゃんも少し顔を曇らせたわ。

本日1番良い働きよ、金髪ちゃん。


 精神感応なんて魔法を使わなくても、家格君への精神的働きかけはバッチリじゃないかしら。

彼の青灰色の瞳がザバザバ泳いでいて、ちょっと面白いのだけれど?


 一緒に作った眼鏡女子ことカルティカちゃんは……いいの、気にせずそのままたくさん食べてちょうだいな。


「いや、そうとは……」


 ふふふ、言い淀んだわね。

もちろんそんな絶好の機会を見逃すラビアンジェ=ロブールではなくってよ。


 さっと移動して手早く葉っぱ皿4枚に2種のお肉を盛ったわ。

カルティカちゃんが保温魔法をかけてくれているから、まだまだ温かいのよ。


 家格君達なら1人1皿ずつでいいんじゃないかしら。

お孫ちゃんには1切れ多く入れておきましょう。

孫サービスよ。


 ウェイトレス仕様で1度にパパッと運んでしまうわ。


「まあまあ、そうなのね!

作った甲斐があったわ。

さあさあ、たくさん食べて大きくなるのよ!」

「お前は母、いや、むしろ祖母様か!」


 まあまあ?

1世紀ほど生きるお婆ちゃんだとバレてしまったのかしら?


 でも気にしなくってよ。


 ずずいと勢いのままにお皿を押しつければ、ちゃんと受け取ってくれたわ。


「ま、まあ、そこまで言うなら食べて……って、聞け!」


 あらあら、1人でノリツッコミ?

何か喋っているけれど、忙しいのよ、私。


 お孫ちゃんと金髪組にも手渡すわ。


「ありがとう」

「「ありがとうございます」」


 お孫ちゃんてばお礼も言えてえらいわね。

ああ、その可愛らしい頭をなでなでしたい。


 でも天つゆも持って来てあげたいから、ぐっと我慢よ。

淑女の微笑みを向けて乗り切るわ。


「ったく……これがあのムカデ……本当に食べて大丈夫なのか?

……うまい」


 何だか家格君がさっきから1人でブツブツ言っているわ。

ノリツッコミが好きなのかしら?

でもちゃんと食べたのね。

なでなではしないけれど、お口に合ったみたいで良かったわ。


 それより意外そうなお顔ね。

どんな味を想像していたのかしら?


「「「美味しい」」」


 まあまあ!

金髪組はもちろんだけれど、お孫ちゃんのお顔が年相応に綻んだわ!


 何だかんだでこんな場所に転移してきたのだもの。

緊張していたのかもしれないわね。


 それよりもうちのお孫ちゃんの可愛らしいこと!

孫にそう言われると祖母ちゃん、照れちゃう!


 騎士科に所属しているだけあって食べ方は上品だけれど良い食べっぷりよ。

前世の孫達を思い出して微笑ましくなるわ。


「ふふふ、網の焼き目のついたお肉はこの出汁に浸して食べてみてちょうだい」


 そう言いながら取ってきたお椀を渡して天つゆを注いでいくわ。

水筒が空になったわね。


「これ、合うな」

「それは良かったわ」


 ふふふ、反抗心溢れる言葉ばかりが出ていた家格君のお口から素直な言葉が飛び出したわ。


 美味しいご飯の力は偉大ね。


「公女は料理の才能があるんだな」

「喜んでもらえて嬉しくてよ」


 お孫ちゃんの言葉にデフォルトが崩れた普通の笑みが浮かんでしまったわ。


「「「「……」」」」


 え、どうしたのかしら?

4人共手が止まって私のお顔をぼうっと無言で見つめ始めたのだけれど?

まさかまた静止画の呪いが発動したの?


「公女、出汁はまだ残っているか?」


 あらあら、ナイスタイミングよ、ラルフ君。


「ふふふ、食べていてちょうだいね」


 何だか怖いから撤退しておきましょう。


 殻の近くに置いていた鞄の中から天つゆの入った新たな水筒を取り出して、空になった水筒と交換するわ。

ちゃんと2本持ってきていた私、えらいでしょう。


 ラルフ君の手元をちらりと見て、新しい葉っぱ皿にお肉を軽く盛るわ。

ところ狭しとお肉を乗せていた殻も随分寂しくなったわね。


「どうぞ」

「ありがとう」


 空のお椀に天つゆも注ぐ。

礼儀正しくお礼を伝えるうちのリーダーは素敵ね。


 他の2人はそろそろお腹いっぱいみたい。

腹ペコを訴えるお顔が満足そうな笑みに変わっているわ。


 網の傍に置いていたトングを持ってきて、焚き火の中から火のついた木のいくつかを取る。


 食べ終えたらしいカルティカちゃんが新しい木を焚べてくれたわ。

阿吽の呼吸ね。

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