91.無視して食べちゃいましょう
「もう火は通っているから、触っても大丈夫ですわよね?」
カルティカちゃんの素直さに感化されたのね。
金髪ちゃんもツンデレのツンがどこかに引っこんだみたい。
少女2人が仲良く調理する様……良し!
くっ、これはこれで滾るものがあるわ!
ここにお孫ちゃんが登場なんてしたら、間違いなく皆引き連れて転移で帰ってしまうわね!
誰か、紙とペンをここにもてー!!
はっ、ついうっかり。
はしたなく騒いでしまったわ。
心の中でだけれど。
「はい、大丈夫です!
それに死んで毒が体に回る前に体から切り離していました。
内臓も全て取り除いているので手がかぶれたりもしません。
ここをこうやって刺します」
「こ、こうかしら?」
「そうです。
初めてされたんですよね?」
「ええ、そうなの」
「とってもお上手です。
そうしたら、火で炙るのでここらへんにこうやって突き刺して……そうです、そうです」
まあまあ、仲良きことは美しきかなというやつね。
カルティカちゃんたら、教えるのが上手よ。
金髪ちゃんも素直に伝授されているわ。
それにカルティカちゃんたら空腹が過ぎたのかしらね。
早く食べたくていつもより積極的に感じるわ。
「出来上がると脂が滴ってきますから、そうしたら土に刺した部分の土を払って、こちらの葉っぱのお皿に。
この殻に保温魔法をかけましたから、この上に置けば温かいままです。
それでは、何かわからなければいつでもおっしゃってくださいね」
「ええ、そうするわ」
あらあら、いつもの少し引っ込み思案な所も可愛らしいけれど、今みたいに目をギラギラさせてバババッとお肉に串を突き刺し始めたあなたも素敵よ。
何だか眼鏡の奥の瞳が猛禽類のように見えてしまうのは気のせいかしら。
お陰で妄想の暴走が落ち着いてきたわね。
グッジョブ、眼鏡女子。
「は、早いわ……」
そうね、金髪ちゃんが感嘆の声を呟くくらいには、あれよあれよという間にもう串に刺さったお肉が火を囲むように一周したものね。
遠慮がちに自分が打った串を地面に刺す金髪ちゃんが可愛らしく見えちゃう。
「公女のお肉もいつの間にかお皿にこんもり……」
そうなの。
私もずっと手を動かしているのよ。
それからは皆黙々とそれぞれが自分のお仕事に打ち込んだわ。
けれど何だか一体感のある空気があって、心地良いの。
気づけばいつの間にか4つの殻に付いていたお肉は今火にかけている物で終わっていたわ。
カルティカちゃんが保温魔法をかけてくれた殻に所狭しと並んだお肉盛り盛りの葉っぱ皿が圧巻ね。
3人で作業するとやっぱり早くていいわ。
「それじゃあ、呼んで……」
「何様だ!」
あらあら?
家格君の怒鳴り声がこだましたわ。
カルティカちゃんが驚いて口を噤んでしまったじゃないの。
これは……。
「よし、食べちゃいましょう」
「えっ、いいんですか」
まあまあ、何故だか少し沈んだ眼鏡の奥の瞳が再びギラリと光ったわ。
「それは……止めに入ったほうが……」
あらあら、わかっていないわね、金髪ちゃん。
申し訳無さそうなお顔で期待をしても、止めに行かないわよ?
「あらあら、出来上がり次第手が空いた人から食べるのがうちのグループのルールよ。
それに止めに入って人が増えれば、公子の性格上いつまででもヒートアップするのではなくて?」
「あ……そ、れは……」
彼はプライドだけはとっても高いのだもの。
大方うちのリーダー達が自分達のテントの張り方に文句をつけたとでも思ったんじゃないかしら?
お孫ちゃんもずっと一緒にいたのなら、うちのやり方に賛同したでしょうね。
とはいえサブリーダーのローレン君以外は、家格君のプライドをあまり考慮しない物言いよね、きっと。
かといってローレン君は平民。
自分から進んで高位貴族達に自分の意見を伝えないわ。
当然、彼が貴族達の間に入って上手く宥める事も、王族に次いで最高位に位置する身分の公子からそれ以外の貴族を守る盾になる事もしないし、そもそもできないのは誰よりも理解してるはずなの。
こういう時に貴族と平民とでは、悲しいかな明確な身分の質が違う事が浮き彫りになってしまうのよね。
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昨日からしばらく午前中投稿から昼頃投稿に変わっています。
お休み中だった下の作品を昨日から投稿再開しています。
本日までの2日間は午前と午後の1日2話投稿する予定です。
ご覧いただいている方がいるようなのでこちらの作品からもお知らせします。
【秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ】
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