90.乙女心にクリティカルヒットとツンデレのツン
「ロブール様、早く焼いて食べましょう!」
「きゃあ!」
「ロブール様お手製ハーブソルトもガンガンふりかけましょう!
もうお腹ペコペコです!」
あらあら、空腹に耐えかねたのかしら?
可愛らしい眼鏡女子のカルティカちゃんがとっても無邪気にひょっこりさんね。
私に近寄ろうとしていた金髪ちゃんが驚いてキャアをお見舞いしているけれど、これがきっと不発というやつだわ。
全く意に介さずに私の左腕に絡んで、流れるように自然に隣に座ったのだもの。
男性陣も少し後ずさっているわ。
うちの眼鏡女子、なかなかやるわね。
そんな腹ペコ要望に応える為に、私ももう片方の手でお肉を炭火の上の網に乗せていくわ。
けれど金髪ちゃんのキャアは実のところ、私の少ない乙女心にクリティカルヒットよ。
思い返せば前々世も前世も今世も合わせて約1世紀生きたけれど……1度もキャアと言った覚えがないなんて!
私、ずっと女子だったはずなのに何て事なの!
いつか私も素敵なキャアをお見舞いしてやるわ!
誰かに!
「テント張りはもう終わったの?」
なんて密かな闘志を燃やしていても、ちゃんとお顔はデフォルトの微笑みよ。
「ミナ様が1から教えて欲しいとおっしゃったので、あの2人が教えながら張っています」
「まあまあ、そうなのね」
ふふふ。
何だかんだ言って、うちのリーダーもサブリーダーも面倒見が良いのだもの。
素敵男子はお婆ちゃんの大好物だわ。
やっぱり彼らの今日のお昼はお肉多めに大奮発ね!
それにお孫ちゃんの危機感も正しく持てているようで良かったわ。
少し安堵しながらお肉をひっくり返す。
ああ、ジュワ~ッという音はもちろんだけれど、何て美味しそうな網の焼き目!
「たかがテントの設営に……」
なんて思っていたら、何だか耳汚しな声が聞こえてきたから、すかさず遮ってしまいましょう。
「あらあら、それなら公子達には是非アドバイスしていただきたいわ?
私達の合同訓練はあなた達4年生と違って2度目でしてよ?
不慣れな事もあるでしょう?
それともここで魔獣肉を一緒に焼く方がよろしいかしら?」
そろそろ家格君の相手はできないし、ちょうどいいわ。
炭火でどんどん焼いていかなくちゃいけないもの。
きっぱり遮ってみたけれど、話し方はいくらか持ち上げてみたわ。
これで自主的に去ってくれないかしら?
「ちっ、公子であり上級生の俺がするはずがないだろう。
マイティ以外にも手伝わせて楽をする魂胆だろうが、誰が乗るか。
行くぞ、リム」
「は、はいっ」
ふふふ、貴族男性って高位になるほど調理を嫌がるのは何故かしらね。
料理男子って素敵だと思うのだけれど、これはあちらの世界の感覚なの?
目論見通りそそくさと去る2人の背中を微笑んで見送ってから、今焼いていたお肉を葉っぱ皿に取って次を乗せたわ。
さあさあ、今度はこちらの女子2人にも働いてもらいましょうね。
「下処理は終わっているから、後は焼くだけなのだけれど、マイティカーナ嬢、カルティカちゃんと串打ちをお願いするわ。
カルティカちゃん、そこの葉っぱの蓋に出来上がったのがあるの。
その通りに串打ちして炙っていてちょうだい。
火加減はそのままで大丈夫よ」
「公女、私は公女とご一緒したいと……」
あらあら、何故かお顔が赤くなって途中で照れたように言葉が途切れたのだけれど、どうしたのかしら?
少しモジモジしているわ。
けれど残念ね。
一緒にするには炭火焼きの網は小さいの。
私1人で十分なのよ。
「まあまあ、途中から完全に1人で焼く事になりましてよ?
火加減や裏返すタイミングはおわかりかしら?」
「……わかりましたわ」
何だか少し頬が膨らんだわ。
これはツンデレのツン?
「ふふふ、カルティカちゃんの串打ちは天下一品の腕前なの。
マイティカーナ嬢はご自分のペースで進めてらして。
カルティカちゃん、初めての串打ちを思い出しながらお手本をご覧にいれて差し上げて」
「は、はい!
マイティ様、よろしくお願い致します!」
「え、ええ。
こちらこそ」
カルティカちゃんの素直な反応に面食らっているわね。
うちの子はとっても素直なの。
だから金髪ちゃん、あまりうちの子にツンを出さないであげてちょうだいね。
いつもご覧いただきありがとうございます。
ブックマークや評価には日々感謝しています。
本日からしばらく午前中投稿から昼頃投稿に変わります。
活動報告でもお知らせしましたが、お休み中だった下の作品を本日から投稿再開しています。
明日までの2日間は午前と午後の1日2話投稿する予定です。
ご覧いただいている方がいるようなのでこちらの作品からもお知らせします。
【秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ】
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