If影虎~2人だけの物語⑨(後日談)~トゲツ
「「「「生まれたのか?!」」」」
4人で声を揃えつつ、全員が焦って部屋へと入る。
言わずもがな、俺と妻となったラビの男家族達だ。
「もう。
お父様も、お祖父様と伯父様達も、静かにして。
お母様、起きちゃう」
既に部屋にいた幼女は、そう言うと小さな人差し指を口元に当てて「しーっ」とやる。
黒髪に菫色の瞳をしたこの子は、5歳にしてしっかり者の、俺とラビの長子。
名前はルシアンナ。
ラビが名づけた。
ルシアンナはリーリ伯父さんが手作りした、眉毛の太い山羊のぬいぐるみを脇に抱えている。
ぬいぐるみは大のお気に入りで、常に持ち歩いている。
自立型の丈夫なぬいぐるみで、いつの間にかハイヨと命名していた。
ルシアンナが跨がった時、「ハイヨ、ハイヨ」とかけ声をかけているから、多分、成り行きなんだろう。
リーリ伯父さんがルシアンナの成長に合わせ、跨がりやすいようこまめに縫い直している。
「そうだな。
S級魔獣を倒した妻も、この2人を生んだ直後は、ぐったりしていた」
「「そ、そうだな。
今回の出産は、双子だったんだもんな」」
俺の言葉に、双子の父親である義父がそう言い、双子の義兄達が頷く。
義母とは数えるほどしか会っていない。
結婚式とルシアンナが生まれて少しした頃の2回だ。
いつの間にS級魔獣を狩っていたんだ?
さすが、このラビにして、あの母親ありだな。
「おめでとうございます。
双子の男の子ですよ」
双子を抱いた産婆が、今にも俺に抱かせようとするが……。
「ラビは、妻は無事なのか」
息子達には申し訳ないが、俺が1番気にかかるのは、妻のラビアベルだ。
ルシアンナの話では、眠っているらしいが……。
ベッド脇に進んで、ラビの顔を覗きこむ。
いつもは眠りが浅く、人の気配があればすぐに起きる。
なのに今は疲れ切った顔で眠っていた。
一瞬、ラビのように疲れ切った顔で眠る、黒髪の女性が思い浮かんで、懐かしさが胸をかすめた気がした。
女性は異国の人種だったように思う。
その女性の両脇には、赤ん坊らしき黒い影が見えたような?
「もちろんです。
早産になりかけたせいで、ベッド生活を強いられていましたから。
体力が落ちてはいましたが、頑張られましたよ」
産婆の言葉に我に返り、話の内容にほっとして、初めて息子達を両腕に抱いた。
「ああ、あったかいな……生まれてきてくれて、ありがとうな」
小さな2つの命の重みを感じながら、優しく抱き締めて感謝する。
「「「次はじいじ(伯父様)の番だ」」」
「ずるい!
ルシーも抱っこする!」
感動もそこそこに、息子達は娘共々部屋の隅へ移動してしまったが……。
まあ、あの3人もルシアンナで慣れたのか、手つきは優しくもしっかりしている。
ルシアンナが抱こうとすれば、あの3人とすぐ近くで張りついて見張る産婆が必ず安全を考慮して動くはずだ。
この部屋は魔法具で人も空気も清浄され続ける。
だから生まれたばかりの赤ん坊でも、外部の人間が短時間触れるくらいなら問題ない。
俺は父親権限で初めに抱けたから、良しとしよう。
「……ん……トゲツ?」
その時、少し掠れて疲れが窺える声が小さく聞こえた。
「目が覚めちゃったか?
大変だったよな。
元気な双子の息子達で、安心した。
もう少し眠ってな」
そっと頭を撫でる。
「……ええ」
ラビは小さく頷くと、またすぐに眠り始めた。
よっぽど疲れたんだろう。
出産中はラビと契約する聖獣達が、ラビに力を与えてくれていたとはいえ。
特に竜の親子聖獣は、その魔力属性もあって、早産になりかけたラビと胎児の命を繋ぎ続けてくれていた。
とはいえ1番大変な妊娠と出産を乗り切ったのは、他ならぬラビだ。
そんなラビに対し、何も力になれなかった申し訳なさと感謝の気持ち、そして無事に乗り切ってくれた安堵感と愛情が入り交じってこみ上げる。
感情の振り幅が、数年前にラビがルシアンナの為に考案して作り、俺が実験台となって体験したジェットコースターに乗った時のように、凄いアップダウンだ。
意図せず涙が溢れてきた。
「ラビ……俺の奥さん。
死んでも、生まれ変わっても、ずっとずっと……愛してる」
眠る俺の奥さんに、ただただ愛を囁いた。
俺は奥さんのお陰で、きっとこの先も子供や孫、それにひ孫に囲まれて、幸せに過ごすのだろう。
あのハリセン特殊空間で、誰にも言えないような、いわゆる攻め的なコトを経験させられた。
その後、予定より早く結婚してからというもの、まるで自分が過去に体験したかのような、そんなビジョンが度々、頭に浮かぶのだ。
何より、俺は確信している。
死ぬまで奥さんに寄り添い、死んでもきっと奥さんの奥さんらしい魂への愛だけは、絶対に忘れられないのだと。
―完―
ずっとずっと応援し続けていただいた読者の皆様!
本当にありがとうございました!
これにて堂々完結ですヾ(≧∇≦)
作者は思いました。
結局、ラビの魂がこんなんである以上、何回転生してもこの話の結果は変わらない……シリアス……君は最後までつれないやつ……そこが魅力的だけれども……。
しかーし!
最後をラビ以外の視点にして、ラビを昏倒させれば、シリアスで終われるんじゃないのかと!
思惑通り、シリアス捕まえたりー!
※多分、完結ハイです……。
番外編という変則技でしたが、ラストは大団円。
登場人物達はあらかたハッピーエンドになったんじゃないかなと思います!
※最後は月和が長女と双子の息子を生んだ設定と被らせました。
本作を応援し続けていただいた皆様、本当に感謝しておりますm(_ _)m
3年以上書き続けるには、皆様の応援がないと心底、難しかった。
本当に本当に、心から感謝をm(_ _)m
ありがとうございました!
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