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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
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688.凧あげ、ヨーヨー~国王side

「ここが……」

「ほう」


 余が政務資料を処理していると、公女が()()()()ライェビストと共に現れた。


 公女に言われた通り、公女が差し出したブローチに、余とライェビストが触れた途端、景色が変わる。


 見渡すだけの唯々、明るいだけの空間に立っていた。

両隣に公女とライェビストもいる。


 そしてこの空間の中心。

かなり離れた場所に、角を生やした老いた男がいた。


 恐らくあの男が、ジャビ。

そして初代ロベニア国王。

王家の始祖。


「ジルガリム。あなたは、これからここで起こる事を、予定通り見届けてちょうだい。

お父様、今は魔法を禁じてましてよ。

2人の姿は、私以外に見えなくしてあるわ」


 余の名前を呼び捨てにする公女。

ならば公女は今、ベルジャンヌ王女として余に接しておるのであろう。


 これから何をするのか、具体的には聞いておらぬ。

ただ王家の歪みを正すとだけ、聞いている。


 チラッと【お仕置き先祖供養】と聞こえた気がしなくもないが、気のせいだ。

そう、絶対、気のせいだ。


 ちなみにライェビストは、娘を見守る父親や、国王たる余の護衛でも何でもない。


 娘にたかる魔法馬鹿として、この場にいる。


 もちろん娘に金をたかるのではない。

娘が貴重な魔法を使う場面をたかる、魔法馬鹿だ。


「チッ」


 ライェビストよ、舌打ちしたところを見ると、そなた既に、何かしようとしたな?

だから公女に魔法を禁じられたのであろう?


 余は大人しくしておこう。

そんな思いをこめて公女に無言で頷くと、公女がジャビの方へと歩を進める。


 ややあって、金色に光る粒子が公女の背後から現れた。


 同時に、ジャビと公女の間に、脈絡なく真っ白な大虎も現れた。


 次いで余の目に映ったのは、虎の背に乗る大亀。

そして亀の甲羅に糸を巻きつけた状態で、甲羅の上に乗る大蜘蛛だ。


 3体共、輪郭がどこか揺らぎ、顔つきはぼんやりとおぼろげで、どんな感情を持っているか全くわからない。


「お前、達……」


 3体の姿に気づいたジャビが、驚いたように口を開いた。


 すると虎の耳がピクリと震え、虎達の周りに風が起きる。

風が蜘蛛を巻き上げたように、蜘蛛の体がすうっと宙に浮く。


「あらあら、凧あげみたい」


 公女よ、凧あげとは何だ?


 と思っていると、宙の蜘蛛が尻をクイクイと動かす。


 直後、一瞬で蜘蛛がデカイ亀を蜘蛛の糸で宙へと引き寄せた。


 蜘蛛が宙で、体を器用に捻る。

その間に、亀はその身を甲羅に引っ込めた。

ちなみに甲羅は、成人男性をすっぽり覆える大きさだ。


 途端、甲羅に巻きついていたキラキラの糸が解れて伸びながら、突風を纏ってジャビへと飛ばす。


「おぐっ」


 逃げるでもなく、まともに正面から甲羅に当たったジャビ。

床にバウンドしながら何度か転がり、倒れ伏した。


 甲羅はジャビに当たった後、再び糸を巻きつけながら、ジャビから離れていく。


「まあまあ、まるで空飛ぶヨーヨーね」


 公女よ、ヨーヨーとは何だ?


 と考える暇もなく、亀が虎の背に乗り、同時に蜘蛛も亀の甲羅の上に着地した。


「ぐう……お前達……恨みを晴らしに……消えた?」


 ジャビが驚いたように、3体揃って掻き消えたのだ。


「やっぱり、もたなかったわね」


 すると公女が誰に言うでもなく、わかりきった事のように呟いた。


「どういう意味だ?」

「あなたと共に名前が残っていない虎型、亀型、蜘蛛型の聖獣達。彼らはね、あなたがヒュシスに贈ったブローチに残っていた魔力を依り代にして、具現化していたの」

「具現化?

どうやって?」

「お兄様の瞳の力を使ったわ。

まずは瞳の力でブローチから3体の魔力を抽出した」

「なるほど。

3体の魔力を使い、お前が魔法として発現……」

「違うわ。

あの3体は、限りなくオリジナルに近いと言えるべき意志を持っていた。

3体の聖獣達は、契約者であるあなたに殺された事で魂が砕け、消滅したわ。

聖獣契約をするとそうなるって、あなたは知っていたのでしょう?」

「……ああ……ああ、そうだ」


 公女の問いに、どこか視線を逸らしつつ答えるジャビ。


 ジャビの様子から、もしやジャビは己が契約した聖獣達に後ろめたさを感じておるのか?


 悪魔であるジャビの非情さを、余は知っておる。


 実際、学園祭で対峙した時のジャビは、存在そのものに禍々しさを感じさせた。


 だと言うのに、今のジャビからはそれらを感じられない。

むしろ、どこか頼りなさすら感じるほど、小さな存在に見えてしまう。

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