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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
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674.お持ち帰り~ミハイルside

「ラビアンジェ」

「公女」

「あらあら、2人して突然のご訪問ね?

今日は初めてで珍しいタイプの来客があって、離れを改装して初めて、門戸を完全シャットアウトにしてましたの。

もう1人の(かた)も、初めましてね。

もしかして、中のお客様の関係者かしら?」


 麗らかな陽気の中、妹が柵越しに挨拶する。


 妹の言った通りだ。

レジルスの転移魔法で、俺、レジルス、カイン氏の3人は、妹の住む離れに設置した門の前に移動した。


 しかし、いつもと違って俺を認証せず、門が開かなかった。


 妹が住む離れの奥――妹渾身の畑がある、小屋の向こう側に回れば、すぐさま何かが焼ける香ばしい香りがしている事に気づいた。

香りには、微かに磯の香りも混じっている。


「ギャッギャッ」

「キュイ~」


 柵の向こうでは、少し太めの声をした赤いドラゴンと、可愛らしい声の白いドラゴンが、楽しそうに鳴いている。


 馬車を大破したドラゴンと聞いて、大きなタイプを想像したが、随分と小さい。


 いや、我が国の聖獣達の例がある。

体の大きさを変幻自在に変えられるのかもしれない。


「どうしてこうなった……」

「お花ちゃん、モゴモゴ、クロちゃん、モゴモゴ、美味しいわね」


 片手で顔を覆うカイン氏の呟きなど、鮮血の魔女――ミルティア氏に聞こえるはずもない。

ミルティア氏はミニドラゴン達に劣らず、楽しそうな声を出している。

口をモゴモゴさせているから、言葉は少し聞き取りづらい。


 ミルティア氏が手にしているのは串。

そして四大公爵家が内の1つ、ロブール家の本邸がある敷地には全くそぐわない、周囲に漂う香ばしい香り。


 柵の向こうでは、間違いなく串焼きが振る舞われている。


 ミルティア氏の膝にいるのは、白いミニドラゴンだが……やはり聖獣か?

陽に当たると、金の煌めきが薄く体に反射しているドラゴンは、体内に聖獣と同じ類いの、聖属性の魔力が秘められているのが視える。


 ロベニア国では聖獣と敬われるが、元は魔獣だった。


 かなり昔、妹は言った事がある。

災害級と呼ばれる魔獣が人と契約し、昇華転身したなら、聖獣。

そうではなく人に害をなすなら、災害級の魔獣だと。


 今にして思えば、ざっくりした手軽な識別だったが、その通りではある。


 だとするなら、災害級の魔獣は他国にもいる。

昇華転身した魔獣を、我が国とは違う呼び方であっても不思議ではない。


 しかしどちらのミニドラゴンも、人語を話している様子がないな。

瞳の色も、魔獣特有の赤色だ。


 ミルティア氏と契約をしていないからか?

聖獣の素養はあれど、1度も昇華転身していないのだろうか?


「ギャッギャッ」


 その時、ミルティア氏の近くにいた赤いミニドラゴンが、翼を使い、妹の肩へと飛んで着地する。


 やはり赤いドラゴンは、聖獣とは違う。

しかし、とてつもない魔力を保有している。


 近くで見ると赤い躯体には、薄く斑模様が入っている。

花の模様にも見えるが……確か先ほどミルティア氏はお花ちゃんと……まさか……だからお花ちゃん?


 何となく白いドラゴンを見れば、両翼の付け根あたりに、色が抜けたような痣がある事に気づく。


 痣の形が四つ葉のクローバー……ああ、だからクロちゃんと呼ばれたのか?

クローバーのクロちゃん……いや、さすがに安直すぎか。


 まさか俺の妹的安直ネーミングセンスではないはず。

仮にもS級冒険者だ。

まさかな……いや、本当にまさかだよな?


「ふふふ、お花ちゃんたら。

待ちきれなかったのね。

残念だけれど、飛び魚の串焼きは今ので最後なの。

けれどほら、もう西京漬けにしていた飛び魚の葉っぱ包み焼きが出来上がったわ。

次はそれを食べましょうね」


 肩に止まったドラゴンの頭を撫でる妹の言葉に、色々察した。


「ラビアンジェ……まさかとは思うが……」

「ええ、お客様をオモテナシ中ですの。

王城から帰ろうと馬車に乗っていたら、急に大きなドラゴンが現れましたの。

そのまま巨体にものを言わせて馬車を鷲掴みにされたので、ちょうど腰に巻きついて寝ていたピケルアーラが、寝起き不機嫌に尻尾ではたいて、ドラゴン達をまとめて締め上げて、危うく丸飲みに……。

そうしたらドラゴン達が小さくなって、それがとっても可愛いくて。

うっかり、お持ち帰りしましたのよ」


 妹よ、急に現れたドラゴンを可愛いからと持ち帰るな。

生き物は簡単に拾っちゃいけませんと教えられて……いなかったな。


 妹は逃走猛者だ。

あらゆる教養から逃げられ続けたのを、うっかり忘れていた。

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