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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
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673.大破した馬車~ミハイルside

「止めろ!」


 ある光景が目に入り、御者に指示する。

馬車に乗ってから、さほど時間が経っていない、城門が見え始めた時の事だ。


 馬車内の狂った空気感のせいで、未だに心中は荒ぶっているが、異常事態だ。


 馬車が止まりきる前に、慌ててドアを開けて飛び降りる。


「何故、妹が乗って帰ったはずの馬車が壊れている?!」


 そう、窓から見えたのは、ロブール家の馬車だった。小一時間ほど前に別れた妹が、この馬車に乗って帰宅していたはずの……。


 馬車は大破していて、城の兵士数名で、魔法を使って撤去している。


 その時、俺のすぐ後ろに、レジルスが音もなく立った気配を感じた。


 しかし今は、妹の安否が気になって、レジルスになどかまえない。


「それが……赤と白のドラゴンが突如現れて……」

「ああ、それならうちの可愛いドラゴン達よ。

ん?

クロちゃんとよく似た魔力残滓ね?」


 いつの間に?!

鮮血の魔女が隣にいた。


 いや、それよりも……鮮血の魔女は、何を言った?

ドラゴン達?


「どういう意味だ?

まさか子飼いのドラゴンをけしかけて、ロブール公女が乗っていたはずの馬車を、襲わせたのか?

それにクロちゃんとは何だ?」


 不穏な気配を纏ったレジルスが、鮮血の魔女に問う。


 レジルスの言う通りだ。

大破した馬車に、ドラゴン。

すぐに想像するのは、ドラゴンが馬車を襲った可能性だ。


 だとしても、どうしてS級冒険者が、よりによってドラゴンを妹のいたであろう馬車に?


「別に襲わせてないわ。

ロベニア国王と謁見中、海中で見つけた魔法具に残った魔力と同じ魔力を、城内で感じたの。索敵しようとしたら、魔法師団長に邪魔されてしまったわ。

だから私の影に亜空間を繋げるドラゴン達に、魔法具の魔力と同じ魔力の持ち主を足止めしておいてって頼んだのよ。

それがどうして、馬車が大破したのかは、私にもわからないけど。

クロちゃんは、白くて可愛いドラゴンよ。

私達の国ではその昔、聖竜と呼ばれていた、とっても白くて可愛いドラゴンなの」

「2回言ったな……」


 鮮血の魔女が言い終わった途端、今度はカイン氏が鮮血の魔女の真後ろに、ヌッと現れる。


 どうでもいいが、カイン氏は何でそんなにレジルスと同等のドス黒い何かを振り撒いているんだ。


「大事な事は、何度でも……」

「俺には言ってくれないのか?」


 ……人間の目って、瞬時に翳ったように見えるんだな。


 鮮血の魔女の言葉を、ほの暗い、ドロリとしたような粘性を感じさせる目をしたカイン氏が、小さな体をバックハグしながら遮る。


「ふふふ。

隙あらば、私を閉じこめたくて仕方ないあなたも、とっても可愛いわ」

「はあ……早く製作者に会わないとな」


 馬車内の雰囲気で察してはいたが、やはり鮮血の魔女とカイン氏は、予想通りの仲らしい。


「それで?

襲わせていないのに、どうしてドラゴンが現れたら、馬車が大破する事態になる?」

「さあ?」


 薔薇色の空気を放ちそうな2人など、レジルスは意に介さない。


 徹頭徹尾、雰囲気を読まない方針のレジルスが尋ねる。


 しかしドラゴンの主人だと告げた鮮血の魔女は、ただ首を捻るだけ。


「あの、王子。

よろしいでしょうか」

「……ああ、許す」


 レジルスが王子らしく、兵士の発言を許可する。


「我々が気づいた時、赤と白の巨大なドラゴンの内、赤いドラゴンがロブール家の馬車を鷲掴みにして、持ち上げていました。

しかし馬車の中にいたロブール公女が……」


 そうして兵士が語る証言に、俺は思わず頭を抱えた。


「ロブール公女は魔力が少なく、生活魔法くらいしか使えないはずでは?」


 対してカイン氏は、相変わらず鮮血の魔女をバックハグしたまま、怪訝そうな顔で、そう漏らす。


「うちの子達の危機ね。

先に行くわ」

「あっ、待て、ミルティア!」


 ミルティアと呼ばれた鮮血の魔女が、瞬時にいなくなる。

転移魔法を使ったようだ。


「チッ、やはりあの網は、そういう使用方法が可能だったか。

ロブール公子、早く妹君の元へ案内してくれ。

ミル、いや、鮮血の魔女はドラゴン達の魔力を追って転移したが、俺にはできない。

鮮血の魔女は恐らく、兵士の証言だけでは正確な用途を掴めていないはずだ。

妹君が鮮血の魔女に知らせる前に……」

「俺が転移魔法を使おう。これ以上、公女に興味を持つ人間を増やされてたまるか」


 カイン氏の言葉に、レジルスがズイッと前に出て、言うが早いか転移魔法を展開する。


 どうでもいいが、レジルスは本音を漏らし過ぎだ。

嫉妬を全方位、広範囲に向けるな。


 心中でつっこみつつ、慌ててレジルスの肩を掴んだところで、景色が変わった。 

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