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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
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668.トビウオと飛来魚~国王side

「少し前、ロベニア国とリドゥール国の境界付近の海域で、集団魔獣暴走(スタンピード)が起きました」


 そう言ったカインの言葉を受け、宰相が頷く。


「我が国も、もちろん知っています。

ただ、あの時起きたスタンピードは両国の境界付近とはいえ、リドゥール国の領海。

ロベニア国としては、自国の領海内、かつリドゥール国との境界付近の海上に、魔法師を待機させた上で、リドゥール国と共同で冒険者ギルドへ、万が一に備えた対処を求めたはず」


 互いにおいそれと自国の兵を、他国の領海へ派兵するわけにはいかぬ。


 とはいえスタンピードの兆候が現れれば、実際の暴走が始まるまでに、そう時間はかからぬ。


 故に状況に即して互いの兵を送り合う協定を、両国で即時締結させる時間はなかった。


 そしてこのような時、冒険者ギルドへ国から緊急依頼を出す事が、最良の選択となる。

何故なら所属をギルドに置く冒険者だけは、国を跨いで動く事が許される。


 余談だが、それ故、各国は冒険者ギルドと表だった対立はせぬ。

此度のようにギルド本部からの謁見を断らぬのも、それ故。


 それにしても……。


 意図せず眉間が中央に寄りそうになるのを、ぎりぎりで堪える。


 嫌な予感しかせぬ。

結局、あの日のスタンピードは兆候を見せながらも、結果的には収まったと報告を受けた。


 そしてその前後で、海を行き来した商船が存在する事も、報告書に記されておる。


 リュンヌォンブル商会の商船とな。


 更にこの……青紫色の網……。


 つい手に力が入ってしまう。

遠い目もしそうになるが、留める。


 いかんな。

あの商船に乗っていた、有名デザイナーの正体を思い浮かべただけで、普段せぬ努力が兎角、必要になってしまう……。


「しかし、とある商船が海洋生物型魔獣で荒れ狂う海上を横断しかかると、スタンピードの形成初期と思しき魔獣達の進行方向が逸れ、後に自然な形で収まった、とギルド本部から聞いています」

「……それも……報告は受けています」


 宰相よ。

そなた、もっと努力せよ。

感情が目に出ておるぞ。


 そしてライェビストよ。

余の手から、無言で青紫色の(ブツ)を取り上げるな。


 そなたは一応、我が国の魔法師団長ぞ。

相変わらず無表情だが、目は興味津々ではないか。


 この魔法馬鹿めが。

国王と宰相が、あらゆる感情を押し隠しておるというのに、団長職のそなたがソレなのは、どうかと思うぞ。


「確かスタンピードの原因究明は、ギルド本部が行うとしておったはず」


 心の中でライェビストを罵る事で、何とか平静をたもちつつ、言を紡ぐ。


「場所が海という、人間にとっては不利な場所。

更にスタンピード後の調査は、どのような危険に見舞われるかわかりません。

その為ギルド本部は、S級冒険者に調査を命じました。

そして此度のスタンピードは、新種の魚型魔獣が引き金だったと判明した」

「新種の……」

「はい。

空を飛ぶ魚です」

「空を……飛ぶ……」


 いつだったろう。

確かライェビストが離縁し、そう経っておらぬ頃だ。


 レジルスが公女から贈られたと、とある魚型魔獣の生肉を薄くスライスした、カルパッチョを食しておった。


 更に最近も、同じ魚のカルパッチョを食しておったな。


 余は朝食を、可能な限り子供達と共にする。

レジルスが朝からカルパッチョを食したのは、この2回だ。


 1度目。

同席していた弟妹が、試食したそうな目をレジルスに向けておった。

レジルスは見事に無視して、完食しおった。


 そして2度目。

1度目と同じように弟妹達は、物欲しげな目をレジルスに向けた。


 しかし1度目と違い此度のレジルスは、とてつもなく不本意そうな顔をしながらも、幼い2人に分けておった。


『……大物すぎて、切り身が大量に手に入ったらしいからな……チッ。

分けるようにと……渡されたからな……チッ』


 レジルスは絞り出すような声に舌打ちを載せつつ、己を納得させるような口調でぼやいておった。


 余もそれとなく、物欲しげな視線を向けてみた。

華麗なる無視を食らった。


 いや、それより思い返せば、レジルスは何と申して追った?

大物すぎて?

大量に?


 今だからこそ、誰がレジルスにそう告げたのかが、とてつもなく気になる。


 もちろん察しはつく。

故にわざわざ聞きはせなんだ。

ロブール公女で間違いないか、万が一にも違うかもしれないと、希望をこめて確認しておれば良かった。


 2度目ではレジルスが、魚の名も口にしておったな。

初めて聞く名で、確か……。


「トビウオ」


 そう、ソレだ。

ライェビストよ、知っておるのか?

知っておるという事象が、そもそも不穏に思えてならぬ。


 なぜならライェビストの離婚後、新種の魚型魔獣が見つかっておる。

飛来魚(ひらいぎょ)という名が命名された。


 しかし以降、新種の魚型魔獣が見つかったなどという話は、聞いておらぬのだ……。

ご覧いただき、ありがとうございます。

トビウオは4章にて、レジルス&ミハイルVS.リリのバトルシーンで登場してます。

お刺身と書こうと思ったのですが、国王の日常的にはカルパッチョかなと思って、カルパッチョにしました(・∀・)

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