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644.新たな記憶の追憶

「ロブール公子がお帰りになりました」


 日が傾いた頃。

ミハイルを見送らせた上位司祭の1人、ナックスが報告に来た。


「そうですか」

「ロブール公子は何故、教会に?

それに公子が手にしていた包み。

まさかとは思いますが、ロブール公子もとうとう、我が教会が布教する百合朗読本の信者に……」

「違います」


 ナックスの言葉を食い気味に遮る。


 ナックスよ。

何でも朗読会に結びつけて考えるのヤメロ。

ついでにミハイルの入信を確信したかのような、したり顔もヤメロ。

ミハイルが手にしていた包みは、普通にラビ様への貢ぎ物だ。


 そもそも我が教会の信者になるならまだしも、朗読本の信者と発言するのは、語弊がありまくりだろう。

しかも何で百合に限定した。


 ナックスの言う朗読本とは、百合の他にも2パターンある。

表紙で語る内容のパターンを変えており、百合の他なら薔薇か、そうでない花を模した表紙となっている。

百合も合わせると3パターンに、ザックリだが種別している。

 

 ちなみに教会の朗読会は少人数制だが、参加希望者が増えに増えてしまった。

何なら参加チケットの争奪戦も起きているし、ラビ様いわく【転売ヤー】なる者達が、参加券を不当な金額に釣り上げて売りつける事案も発生している。


 本来の布教とは明らかに形態が変わってしまい、朗読会そのものを中止しようかと思った事もある。


 しかし……寄付金の金額がかなり増えたのだった。

正直、教会の運営には金もかか……いや、何でもない。


 今は寄付金を元に、教会内で大人数を収容できる建物を造り、そこで朗読会を行う案が浮上している。


「ナックス。

次の朗読会用の表紙を彩る切り絵を仕上げたいので、退室して……」

「次は百合の表紙でしたね!

失礼致しました!」


 皆まで言う前に、ナックスは意気揚々と退室した。


 軽やかな足音が遠ざかり、ため息を1つこぼして椅子に深く腰掛け直す。


 来週には、ラビ様がリドゥール国から帰国する。

その時ミハイルを介してではあるが、ラビ様が所望したアレを手にしたラビ様が、私を思い出していただけるだろうか。


 そんな風に考えると、自然に顔が綻んでいく。


 同時にふと、変わってしまった記憶を思い出してしまった。


 姫様が白灰となった日。

塔で花火を打ち上げた後、ミハイルが塔から去って暫くした時だ。


『リリ』


 私の目の前に、姫様が現れた。

幻影魔法であって、実体はなかったが。


 変わった記憶の中(幻影)の姫様もまた、左側の髪が肩の辺りからバッサリと切れていた。

その上、服も裂けたり切れたり、焦げた箇所もあった。


『姫様……姫様、怪我を?!』

『ううん、もうしてない』

『もう?!

怪我をしてたんじゃないですか!

一体、どうして?!

スリアーダですか?!

あの女ぁ!』


 こんな風に姫様を傷つける人物も、あえて姫様が傷を受けてやる人物も限られている。


 目の前が怒りで、真っ赤に染まったかのような感覚がした。


『リリ、落ち着いて。

ここに来たのは、リリに伝えたい事が……ううん、伝えないといけない事があったからなんだ』

『伝えたい、事?』

『うん。

伝えないと、私は後から後悔する気がした。

でも今は転移でそっちに行く時間も、割ける魔力もないから、幻覚魔法を遠隔で操作してる』

『時間がないから、ちゃんと聞いて』


 私は魔力量が多い。

そのせいか勘が良かったりする。


 この時の私は、淡々と話す姫様に、何かを覚悟したかのような口調の姫様に、次第に嫌な予感を覚えていった。


『姫様……変ですよ?

まるで……もう、いなくなるみたいに……』

『リリ、待っていて。

必ず、また会えるから』

『姫……』

『またね、リリ』


 言うだけ言って、姫様(幻影)がフッと消えた。


 焦燥感に駆られるまま、慌てて駆け出した。


 古い記憶にはなかった、塔から会場までを駆ける記憶。

王族が参加する後夜祭の警備の関係で、決められたルートと各所にある鍵の解錠に時間を取られて……。


 会場に辿り着いた後は、元の記憶と同じ。

姫様は白灰となり、亡くなった。


 けれど新たな記憶では、幻覚だったとしても、姫様に別れの言葉と未来への希望を貰えた。


 なにより、新旧の記憶を併せ持つ私は、確かに姫様の心に(リリ)が居たのだと思えた。

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

新しい記憶ができる前までのリリが、ベルジャンヌに対して何を感じていたのか、そして転生したラビアンジェが、リリをどう思っていたのか。

気になられた方は、No.395、No.396をご覧下さい。

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